シーホース三河 三遠との接戦を制し3年ぶりのCS出場へ 柏木真介が語る「勝ち切れた要因」と「未来の課題」

命運を分けたライアン・リッチマンHCの判断

5月4日、5日にスカイホール豊田で行われた三遠ネオフェニックスとのシーズン最終節。シーホース三河はGAME1を91-74で、GAME2を79-72で勝利し、中地区2位を死守。3年ぶりのCS出場を決めた。

5月5日のGAME2は、シーズン最終戦を飾るにふさわしい白熱した展開に。試合後、ライアン・リッチマンHCの「ずっと試合をしているようなゲーム。本当に、本当にハードな試合でした」の言葉が激闘を物語る。

ハイライトは残り3分からの攻防だ。73-64とリードして迎えるが、中地区王者・三遠を相手にセーフティーリードは存在しない。三遠・大浦颯太に2本連続で3Pシュートを決められ、さらにターンオーバーから得点を許し、残り1分34秒で73-72と1点差に詰め寄られる。0-8のランを決められる最悪の展開で、ここでタイムアウトかと思ったが、リッチマンHCは動かなかった。リッチマンHCは説明する。

「クロスゲームでタイムアウトを要求するシチュエーションは多々あります。あの場面、まだ1点勝っている状況だったこと、三遠さんの選手のプレーイングタイムが長くなっていたので、休ませたくなかったこと。そして、ディフェンスのトーンをセットさせたくなかったことが理由です。タイムアウトを取ることで、自分たちにとって不利な状況を招いてしまうのではないかと思いました。正しい答えは存在しないですし、結果でしか測れません。こうした部分がコーチングの美しさであり難しさにも思います。ただ、あの場面はそうした理由で、タイムアウトを取らないのが正解だと考えました」

ここがターニングポイントだったように思う。リッチマンHCの判断は功を奏し、その後のオフェンスでダバンテ・ガードナーが値千金の得点。75-72になったところで、三遠・大野篤史HCが最後のタイムアウトを要求した。

77-72で迎えた残り1分1秒は、息が詰まるような時間だった。ポゼッションは三遠で、三河はディフェンスを成功させれば勝利が限りなく近づく局面。オフェンスリバウンドを何度も拾われるが、アリーナの声を味方につけ、粘り強く全員でゴールを守り抜く。ブザーが鳴った瞬間、アリーナは大きな拍手と歓喜に包まれ、感極まって涙を流すファンの姿もあった。あの“大青援”がなければCS出場は叶わなかったかもしれない。

柏木真介「ゲームの駆け引きはまだまだ」

レギュラーシーズンを36勝24敗の中地区2位でフィニッシュした三河。シーズン中盤には8連勝を記録し、強さを誇示した時期もあった。最終戦までCS争いがもつれたのは、ライバルチームの奮闘はもちろんだが、勝つべきゲームを落としてきた自分たちの責任もある。

レギュラーシーズンを終えて、長らく三河を牽引してきた柏木真介に、俯瞰して今季の戦いを振り返ってもらった。CS出場については、チーム全体の成長と共に「シーズンを通して外国籍選手が安定してプレーできたこと」と「新体制になってプレーの強度が上がったこと」を挙げてくれた。

ここ数年はシーズン中に外国籍選手が入れ替わるなど、メンバーが落ち着かないことがあった。コミュニケーションと共通理解が大切なバスケットボールにおいて、この影響は非常に大きい。今シーズンは3人の外国籍選手がコンディションを維持し、致命的な怪我もなく乗り切ることができた。

プレーの強度については数字から見て取れる。平均失点は79.3点(昨シーズン)から75.8点(今シーズン)に改善。平均リバウンド数や平均スティール数、平均ブロック数もわずかながら向上し、理想には遠いかもしれないが、リッチマンHCが掲げる「ディフェンスから入るチーム」を体現できた。

一方、チームの成熟度、特にゲームの駆け引きについては「正直まだまだ」と課題に挙げた。柏木は言う。

「プレーの強度や遂行力、システム化という面では、今シーズンはすごく変わりました。勢いがあるときは本当に強いチームです。でも、大量リードをしていて逆転される試合は、僕からすれば『なぜ?』となりますし、ビハインドから追いついて接戦の末に落とすのは経験不足。どうやって流れを持ってくるのか、悪い流れをどう断ち切るのか、こうしたゲームの駆け引きは正直まだまだです。特に強豪とクロスゲームになったとき」

柏木自身、なかなかプレータイムが得られない中、逆転を許すチームを見ていて歯痒さがあったはず。ただ、シーズン中にポイントガードの長野誠史や久保田義章から、ガードとしてのプレーについて「柏木さんに相談した」という話を何度も聞いた。スタッツに残るものではないが、おそらく柏木の貢献度は計り知れない。

「僕は、チームの顔はポイントガードだと思っていますし、試合に勝つのも負けるのもポイントガード次第。2人に関しては気にかけてきましたし、求められることに対してはしっかりと答え、押し付けるのではなく『こういう選択肢もあるよね』とアドバイスしてきました。数ある選択肢の中から自分で選び、自分のカラーを出していくこと。そういう点では、2人とも自分のカラーが出せていたと思いますし、側から見ていて成長を感じました。(後輩の成長に)やりがいを感じて僕も楽しくやれましたね」と柏木は振り返る。

来週からいよいよCSが始まる。リッチマン体制になって1年目で、柏木はチームの若さを認めた上で「構えずに思い切ってやること」と話す。気負う必要はない。三河らしいバスケを続けることが、1日でも長くこのメンバーで試合をやれることにつながるはず。

「初めてCSでプレーする選手がほとんどですし、僕たちに関しては開き直ってやるべきだと思っています。CSに限っては、勢いで勝ち上がっていける部分もあります。守るものもないので、今シーズンにやってきたことを出し切るだけ。そこに尽きると思います」

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