ゴキブリよりも嫌われ者の『カメムシ』 この春も大発生 専門家も初めて見るレベル 照明はLEDにするなど対策を

2023年の秋、日本中を「恐怖」に包み込んだカメムシが、この春に再び大量発生している。多く潜む場所は?防御策は?視聴者にも協力をしてもらい総力取材。専門家たちも初めて見るレベルという「春の大発生」の理由とは?

■再びカメムシ大量発生

去年、全国各地で大量発生したたカメムシ。 その数は冬に入るとともに減り、すっかり見なくなったと思ったのも、つかの間。この春、約半年の時を経て、再びカメムシが大発生している。

徳島県鳴門市の住宅。裏に林があるこの家には、信じられない数のカメムシが出たという。

住民:壁一面と玄関に密集。足の踏み場もない状態でした。例年にないほどたくさん。臭いがすごくて対処しきれないくらい大変でした。洗濯物も干せない。

■古着屋の店員さん「業務的には服4、掃除6」 カメムシ吸う業務?に追われる

さらにカメムシは建物が立ち並ぶ街中でも大発生している。去年の秋にもカメムシに悩まされた大阪府池田市の古着店。この春も、カメムシが再来した。

カメムシは店舗の入口付近に集まっているため、お客さんにも被害が出ているそうだ。防犯カメラには、カメムシに遭遇してしまったお客さんの姿。

様々な対策を講じているそうだが、なかなか効果が出ず、従業員も服の整理ではなく、カメムシの処理に追われている。

従業員:業務的には服4、掃除6です。(Q.服屋さんの仕事ではないですね…)ちょっと許せないですね。聞いてなかったんで、業務内容でカメムシ吸うって。え、変なにおいがする!

■殺虫剤は売れ行き好調

この状況を受けホームセンターでは、関連商品の売れ行きが伸びているという。

殺虫剤コーナー担当者:去年と比べて70倍、80倍の売り上げ数量。(売れるのは)カメムシに関しては、1番は9月あたりの秋ごろです。ただ今は、4月もすごく好調に推移している。

商品の確保に苦労するほどの売れ行きだということで、この会社では店舗間で在庫の調整をしているという。

■農作物への被害も 「10年以上調査して一番多い」と研究者

さらに生活に関わるような被害も出ている。これから桃の収穫シーズンを迎える和歌山県の農家を訪ねると…

木多浦農園 木多浦均さん:ここらも全部、被害出てるんで。カメムシに吸われたんやと思う。商品価値もないので、被害がある実を落としていく。

果実が成長した後にカメムシの被害にあうと出荷できなくなることから、この農園でも早め早めに駆除をしているそうだが、取材中にもカメムシが葉の裏側に潜んでいるのを見つけた。

木多浦農園 木多浦均さん:ことしは例年より多いと思う。カメムシの多い年かなと。桃にも被害あり、梨にもあり、柿にもありって、被害が全般にあります。

こうしたことから和歌山県では、毎日カメムシの発生状況を調べている。

記者リポート:和歌山県のうめ研究所では、カメムシの数を集計する機械を設置しています。

夜、灯りに誘われてカメムシが集まってくるということなのだが…

和歌山県果樹試験場うめ研究所 裏垣翔野研究員:10年間以上調査しているんですけど、いまが多分一番多い。

数えてみると1278匹…

和歌山県果樹試験場うめ研究所 裏垣翔野研究員:昨晩とれたてなので、結構においはしますね。

ことしはカメムシの発生量が多いことから、果実に被害が及ぶ可能性が、非常に高いと考えられていて、農林水産省も和歌山県に”カメムシ注意報”を発表している。

■「冬越ししたカメムシ」夏には産卵を終えて死ぬ

半年の間に2度の大量発生、いったいカメムシの世界では何が起きているのか。 去年の秋にも「newsランナー」で解説してもらった、カメムシのことが大好きな専門家に再び聞いてみた。

伊丹市昆虫館学芸員 長島聖大さん:去年の秋が、もう今まで見たこともないぐらいの量だったので、それがそのまま冬越しをして、今その冬越しから明けたものが、色んな所に飛び交ったりしているので、今まで見たことないぐらいの量の、春のカメムシがいる。

いま、活発に動いているカメムシは、夏ごろまでには産卵を終えて死ぬ。

■今年の秋の発生は「予測不能」

そして、また秋に大発生するかは、専門家でも予測が難しいそうだ。

伊丹市昆虫館学芸員 長島聖大さん:スギとかヒノキの実が、主なエサの資源として重要になってくるんですけど、それがことし多いか少ないか。他にもこれから梅雨の時期が、雨が長ければ、それに流される昆虫も多いでしょうし、条件がすごく複雑に絡み合うので、予測はまずできない。予測は全然ついていないです。

20年研究を続けている専門家でも、初めての予測不能な事態だ。

■対策は「LED」「直接触れない」

大発生しているカメムシと出合いたくない場合はどうするか、専門家によると、カメムシは紫外線の光に寄ってくるので、照明をLEDに切り替えることがおすすめとのこと。 触ったり、つぶしたりしなければ臭いも出さないので、直接触れずにペットボトルを切ったものなどで、そっと捕まえて外に出すのが有効だという。

■ゴキブリよりも「嫌われ者」

また、カメムシにまつわる、衝撃的なデータが…

伊丹市昆虫館学芸員 長島聖大さん:ゴキブリよりもカメムシが嫌いな人が多いんです。アンケート取ったら、ゴキブリは5%好きという人がいます。カメムシは1%以下です。そう簡単にカメムシが好きになれるとか、気にしないでいられるようになることはないと僕は思っているので、できないだろうなと思ってます。

春に再び大発生しているカメムシ。十分な対策をとって、刺激せずに、過ぎ去るのを待つしかないようだ。

■農作物への対策は従来通り駆除を…今後の被害によっては補助の可能性も

農業への影響が心配される。

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:和歌山県に聞いてみると、対処法としては、従来からいる虫で、外来種とかではないので、従来通りの対応でやってもらうしかないということです。農家の方には、早めに殺虫剤などでの駆除を呼びかけているということです。ただこの先、例えば農作物への被害が大量に出て、損害が生じるとなると、もしかしたら補助とか、そういう話になるかもしれないですけれども、今のところは農家の方にも駆除で対応してくださいということだそうです。

農家の方々にとっては本当に死活問題だ。今後、例えば柿、桃、梅などに被害が出てしまうと、価格が上がる恐れもあり、私たちの生活に関わってくることになるかもしれない。

(関西テレビ「newsランナー」2024年5月1日放送)

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