母親が認知症で要介護者になりました。このまま今の会社で働くのは難しいのですが、収入がゼロになってしまいます。何か対策はありませんか?

介護や看護を理由に離職する人は多い

家族の介護や看護が必要になり、仕事を辞める選択をする人は決して珍しくありません。厚生労働省が実施した「令和4年 雇用動向調査」の結果によると、令和4年に介護・看護が理由で離職した人は756万6700人中7万2600人いました。これは、全体の約1%に当たります。

男女別に見ると、介護・看護のための離職者は、男性が2万5700人で全体の0.7%、女性は4万6900人で全体の1.1%です。

まずは給付金をもらいながら休業する選択肢を検討しよう

家族の介護中の収入の問題をクリアするためには、はじめから退職を選択するのではなく、休職も視野に入れて検討することをお勧めします。介護が理由で休業する場合、次の条件を満たせば「介護休業給付金」を受給できる場合があります。

__●雇用保険の被保険者期間が介護休業の開始日前2年間に12ヶ月以上ある
●2週間以上にわたり常時介護が必要な家族の介護のための休業である
●対象家族が被保険者の配偶者(事実婚含む)、父母・義理の父母(養父母含む)、子(養子含む)義理の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫のいずれかである
●休業の初日・末日を明確にして事業主に申請し、取得した休業である__

介護休業給付金の支給が認められると、通算93日間(3回まで期間を分割して受給可能)まで、次の式で計算した金額を受け取れます。

介護休業給付金(※上限額34万1298円)=介護休業開始前6ヶ月月間の総支給額÷180日×支給日数×67%

93日の間に、介護休業中に入所できる施設を探す、介護サービスの利用を申し込むなど、長期的な介護の方針を整理し、仕事を継続できる体制を整えましょう。

気を付けなければならないのは、介護休業給付金が支給されるのは介護休業が終了後に申請し、支給決定後1週間で支給される点です。介護休業中はひとまず預貯金または貯蓄を取り崩し、後日受給した給付金で補填するなど、休業中の資金に困らないような計画を立てることが必要です。

介護のための離職は失業給付の受給で優遇措置が受けられる場合がある

雇用保険の失業給付を受け取れる権利の有効期間(受給期間)は、原則として退職の翌日から1年間です。しかし、家族の介護のために離職を余儀なくされた場合は、特定理由離職者として、受給期間の延長が認められる可能性があります。

受給期間の延長は離職日の翌日から4年以内まで可能です。受給期間の延長制度を利用すれば、介護が手を離れたタイミングで、失業給付を受け取りながら再就職を目指しやすくなるでしょう。

また、特定理由離職者は受給資格の要件も緩和されており、通常は介護休業を開始した日前2年間に12ヶ月以上必要なところ、離職日前1年間に6ヶ月以上あれば受給資格を得られます。また、自己都合退職でも給付制限期間なしに失業給付を受給できる優遇措置があるなど、金銭的な不安をおさえて仕事に復帰できる制度が整っています。

介護しながらできる仕事を探すときのポイントは?

介護中も継続的な収入がなければ生活が苦しい場合は、介護と両立できる仕事を探すことが必要です。次のようなポイントをおさえて、働き方や就職先を検討しましょう。

__●介護に理解があり融通が利く職場を探す
●短時間勤務やシフトの調整が可能なパートやアルバイト、派遣社員として働く
●在宅でできる仕事を探す
●開業(フリーランス)して自分のペースで働ける環境を整える__

介護で仕事ができなくなったら介護休業給付受給の検討を

介護で仕事の継続が難しくなった場合は、退職する前に、休業して介護休業給付を受給することを検討しましょう。休業中に介護の方針を決め、体制を整えられれば、介護と仕事をうまく両立する道が開ける可能性があります。

どうしても退職せざるを得ない場合は、失業給付の活用、介護との両立ができる働き方の検討など、自分自身の社会生活も諦めない方法を模索しましょう。

出典

厚生労働省 令和4年 雇用動向調査結果の概要
厚生労働省 Q&A~介護休業給付~について紹介しています。
厚生労働省 よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)
厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~について紹介しています。
厚生労働省 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準
ハローワークインターネットサービス 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

© 株式会社ブレイク・フィールド社