3歳で国内にわずか100人の難病と判明。完璧じゃなくてもいい。娘の病気から学んだこと【クリーフストラ症候群・体験談】

「クリーフストラ症候群」家族会立ち上げにほん走した大山徳江さんと長女珠生さん。

日本国内の「『クリーフストラ症候群」』の患者数は推定100人。同じ病気の人を探してつながるにはあまりにも少ない人数です。自らの経験から「だれともつながれないという孤独はとてもつらい」と話す大山徳江さん。7歳になる長女珠生(たまき)さんがこの病気だという大山さんは、同じ病気のお母さんたちと家族会を作りました。珠生さんの生活、そして家族の不安を少しでも軽減したいと家族会を立ち上げるまでの大山さんの思いを聞きました。
全2回シリーズの2回目です。

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いつか娘も。SNSで見た「クリーフストラ症候群」患者のスピーチに勇気づけられた

2024年4月。珠生さんは小学2年生になりました

――「クリーフストラ症候群」の患者数は、現在、国内で推定100人といわれています。

大山さん(以下、敬称略) 娘が最初に染色体検査したのは生後8カ月。リハビリを受けながら再度検査をしたのが2歳になる少し前です。「解析に時間がかかるので結果が出るまで時間がかかる」と医師に聞いてはいましたが、「クリーフストラ症候群」と診断されたのは3歳。本当に長い時間がかかりました。当時は、Googleで検索してもヒットする情報はわずか4件しかなく、医師がまとめてくれた文献を頼るしかありませんでした。

それらを読むと、別の大きな疾患をあわせ持っていない限り短命ということではなさそうでした。そして、「『歩けない』とはどこにも書いていないから大丈夫。頑張ってリハビリしましょう」という医師の言葉に背中を押され、娘の可能性を信じてみようと思いました。

そんなとき病院の先生から「日本でも家族会が立ち上がる」という連絡が入りました。わが家と同じ宮城県在住の方を中心に全国で6人が集まり、スタートしようとした直前、新型コロナウイルスの流行により中止となってしまったんです。

――現在、大山さんは「クリーフストラ症候群」の家族会の運営に携わっています。どのように同じ病気の子どもをもつ家族とつながっていったのでしょうか?

大山 アメリカに「クリーフストラ症候群」家族会があることは知っていたんです。でもどのようにアクセスしたらいいかなどの情報はありませんでした。そんなあるとき、アメリカに住む友人が「Facebookに家族会のグループがある」とURLを送ってくれたんです。

そこにアクセスしてみると、日本で家族会を立ち上げようとされていた方をメンバーに見つけたので、コンタクトを取りました。ほかにもカナダに住む日本人も見つかり少しずつ交流の輪が広がりました。

FBで海外の「クリーフストラ症候群」事例を見ると、学校を卒業して働いているような軽度の方もいれば、いくつかの病気をあわせ持って亡くなってしまう重度の人もいるなど、知的面でも運動面でも人によってさまざまなことがわかりました。動画で同じ病気でスピーチしている人の姿に勇気づけられ、今まだしゃべれないけれどいつか娘もこんな風になれるかもしれないとリハビリを続けました。

きょうだいで仲よく過ごす姿、大家族で本当によかった

いつも一緒の3きょうだい。楽しそうです。

――最近の珠生さんはどんな様子ですか?

大山 娘は今7歳です。とくに大きな病気もなく、最近は階段の上り下りも1人でできるようになりましたし、2、3語ではありますが連想ゲームのように会話をしています。部屋に入ってきた娘に「扉を閉めてね」と言うと、振り返って閉めているので、私の言うことも理解できているのかなと思っています。

兄と妹がいるのですが、よく一緒にいてとても楽しそうです。
3歳違いの兄には、成長段階に合わせてまわりと妹の違いを教えてきたので、基本的にはとてもよく面倒を見てくれます。普段はどうしても娘にかかりきりになってしまうこともあって、ときどきすきを見つけては私に甘えてきます。

妹は生まれたときから「クリーフストラ症候群」のお姉ちゃんが当たり前だったので、とても自然に受け入れているようです。二女は3歳ですが、おそらく知的には一番近しいのか、上手にコミュニケーションをとっていると思います。

おじいちゃんやおばあちゃん、きょうだい。大家族でよかったと思います。

「クリーフストラ症候群」家族会がめざすこと

どんな状況でも「道は必ず開ける」と信じて子育てをしていきたいそう。

――そんななか、家族会として「クリーフストラ症候群」についてさまざまな発信を始めています。

大山 「クリーフストラ症候群」の患者が全国にいることはわかっていても、当事者にたどり着けないばかりか、なかなかつながることができずに来ました。個人的にInstagramでは発信していたので、さかのぼってすべての投稿のハッシュタグに病名を入れました。それが2023年1月のことです。

その結果、何人かのお母さんがダイレクトメッセージを送ってくれ、メンバーが少しずつ増えてきたので、まずはLINEでの情報交換を始めました。

2023年6月ごろには、関西在住のおかあさんと「私たちにもっとできることがあるのではないか」と相談、YouTubeに出たり、メディアに働きかけたりと活動の幅を広げました。その結果、問い合わせや検索のヒット数が増えてきました。

そのタイミングで家族会として活動を開始、Instagram、FB、LINE、Xとホームページを使って、手分けしながら情報を発信しています。

――家族会の活動を始めて間もなく1年ですが、どんな反響がありますか?

大山 当事者と出会えただけでなく、検索で知った病院や福祉関係の方が患者会のことを紹介してくださったり、少しずつ広がっているという実感をもてるようになりました。

ありがたいことにYouTubeを見てくださった方から支援のお申し出をいただくこともあるのですが、1人でも多くの悩んでいるお母さん、家族とつながって不安をなくすこと、情報を得ることで安心していただくことをめざしています。

現在、患者会のメンバーは20人です。オンラインミーティングをするにも、生活の事情や家族の理解など、それぞれの事情で必ずしも全員が参加できるわけではありません。とはいえ、話を聞いてもらったり、声をかけて前を向けた経験から、だれともつながれないという孤独はとてもつらいことが理解できるので、できる範囲ではありますが個別に声をかけるようにしています。

孤独を抱えていると、どうしてもこもりがちになったり、「助けて」と自分からまわりに知らせることができなかったり・・・。親は子どもと一緒に育っていくものだから完璧な親じゃなくてもいいと私は思っています。私も、自分の不安がなんだかわからなくても、それを言葉にしていったことで、たくさんの人とつながり支えてもらってきました。だから暗くならず、道は必ず開けているという気持ちで子育てできたらなと思います。

お話・写真提供/大山徳江さん 取材・文/米谷美恵、たまひよONLINE編集部

病院の先生の紹介やアメリカのSNSを通じて、日本国内で珠生さんと同じ「クリーフストラ症候群」と診断された子どもの家族とつながり始めた大山さん。今では家族会を立ち上げ、同じ病気の子どもをもつ家族や病院、福祉関係者に、SNSを利用して情報を発信しています。いつかその治療法が確立することを信じながら。強くて優しい大山さんと今なお病気と闘い続ける珠生さんに心からのエールを送ります。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

大山徳江さん

PROFILE
宮城県亘理郡山元町出身。団体職員。男、女、女の3児の母。2019年、第2子が「クリーフストラ症候群」と診断。治療法も確立しない難病と闘いながら、2023年家族会を設立。HP、SNSを通じて患児家族や病院関係者にさまざまな情報を発信している。

クリーフストラ症候群日本家族会

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年3月の情報で、現在と異なる場合があります。

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