浜松市/新清掃工場「天竜エコテラス」稼働、溶融スラグ用途拡大へ

浜松市でごみ処理施設から産出される溶融スラグを、地域内に循環させて活用する新たな取り組みがスタートした。4月に稼働を始めた浜松市天竜清掃工場(通称・天竜エコテラス)の整備・運営に当たるSPC(特定目的会社)の浜松クリーンシステム(山下芳浩社長)と、地元の建設関連会社や農業事業者などで構成する「浜松市エコサンド協同組合」(松浦真人理事長)らが協働し、副産物である溶融スラグの広範な分野での利活用を促進する。既に米づくりの肥料などに使う取り組みも始めており、「浜松市と地域の企業らが連携した循環型社会づくりを進め、浜松モデルとして広く発信もしていきたい」(同組合)としている。
天竜エコテラス(浜松市天竜区青谷)は、浜松市が老朽化した南部清掃工場・平和破砕処理センターの代替施設としてPFI事業で新設した。事業会社の浜松クリーンシステムは日鉄エンジニアリング、日鉄環境エネルギーソリューション、西松建設、中村建設、中村組、フジヤマ、広築、矢橋工業の8社が出資し、2017年12月に設立された。
天竜エコテラスの整備・運営に当たっては、ごみの溶融処理に伴い発生するスラグを地域内で利活用する循環システムの構築に着目。ごみ処理施設の整備だけでなく溶融スラグの適用拡大に取り組んでいる日鉄エンジニアリングが、浜松クリーンシステム、地元関連業種の企業らと協働し、具体的なスキームづくりを進めてきた。
昨年発足した浜松市エコサンド協同組合は、地元の建設関連業や廃棄物処理業、採石業、農業の事業者らで構成する。浜松クリーンシステムと日鉄エンジニアリングのグループ会社であるエヌジェイ・エコサービス(田中理樹社長)を通じ、天竜エコテラスから産出される年間9600トンの溶融スラグのストックや配送も含めた利活用について検討し、地域の企業が連携する強みを生かしてユーザー側に提案していく。
主な用途には建設、農水産、ゴルフ場などを挙げている。建設分野ではコンクリートやアスファルト混合物の骨材、路盤材、埋め戻し材、グラウンド施設での排水改善工事などに活用。農業分野では米やイモ、タマネギ、ワサビなどの生産に使え、水産分野でも漁礁や藻場ブロック、干潟造成などの材料に利用できる。ゴルフ場では芝生の生育と管理に必要な目土としての用途が見込めるという。
天竜エコテラスは1日当たり可燃ごみ399トンの処理能力を持つ清掃工場(シャフト炉式ガス化溶融方式)と、不燃ごみや粗大ごみなど1日当たり64トンを破砕・選別する破砕処理施設も備える。ごみ処理で発生する余熱エネルギーや工場更新用地を活用し、民間企業がチョウザメの陸上養殖や熱帯果樹のハウス栽培なども行っていく。

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