秋山幸二氏が見たソフトバンクの1カ月「勝って当然」だった 山川穂高は新たな信頼関係の中心 「いけいけどんどん」ではない小久保采配

4月30日の楽天戦で先制の6号ソロを放つ山川

プロ野球が開幕して1カ月が過ぎました。今季から小久保監督が率いるソフトバンクは4月に勝ち星を量産し、パ・リーグの首位を快走しています。今回の「もっとホークス」は、ソフトバンク元監督で西日本スポーツ評論家の秋山幸二氏に、好スタートの要因や新監督の采配などについて語ってもらいました。

ソフトバンクは4月終了時の成績が18勝6敗2分けで、12球団最多のチーム総得点(114得点)と同最少の総失点(61失点)の差も大きかった。要するに得点力があり、投手も点を与えない。「勝って当然」の強さだった。5月に入って3連敗はあったが、まずは最高のスタートを切れた。

打線は柳田と近藤の二枚看板に加え、山川という新たな信頼関係の中心ができた。私も現役時代に西武で清原、デストラーデと中軸を組んだ時は刺激を受ける一方、落ち着いて打席に立てた。山川の加入による相乗効果で、打線がどっしりしたことが一番大きい。

山川は数少ない本当のホームラン打者。苦労や重圧もあっただろうが、本塁打が欲しかったチームの期待に応えている。技術もあるし、4番という打順で打点もどんどん増えるはずだ。リチャードら若い右打者の格好のお手本だし、その意味での存在も大きい。

昨季はなかなか固定できなかった1番には、周東がしっかり収まってきた。出塁率、打率ともに高く、盗塁数も既に2桁に達した。技術面では反対方向へ打球を運ぶ感覚をつかんできたようだ。シーズン本番で結果を残して自信をつけて、自分の形ができてきた。

打線の充実は、課題だった先発陣にも好影響を与えている。得点力が低いと「0点に抑えなきゃ」と空回りしがちだが、今は「1、2点取られても大丈夫」と落ち着いている。軸の有原は安定感があるし、救援から転向したモイネロや大津も試合をつくっている。

救援陣では松本裕、津森が素晴らしい働きを見せている。登板数が増え、多少のへばりを感じる試合もあったが、彼らの活躍が今の成績につながっている。打者の左右に関係なく投げられるし、あとはコンディションだけ。今まで以上の自信がついてきたはずだ。

抑えのオスナはまだ完璧ではない。フォーシームに本来の強さが感じられないし、器用なタイプだけに「かわして楽に抑えよう」という部分も見える。配球面を考えながらやっていく必要もあるだろう。ただ、経験は豊富なだけに、アジャストはしてくるはずだ。

チーム全体は順調に滑り出したものの、先が長いシーズンで油断は禁物。雑にならないように戦う必要がある。その点、小久保監督も確実性を求めた戦い方をしている印象だ。川村ら若手の起用法などは思い切りがいい一方、「いけいけどんどん」の感じはない。

大きく勝ち越している余裕がある中、特別に変わったことはしていないが、確実に点を取る野球ができている。試合の流れがイメージと違ってきても「石橋をたたく」ように戦っている。6連戦が少ない日程で、形を探りながらの先発のやりくりもはまっている。

開幕から1カ月、ソフトバンクほど投打がかみ合ったチームはなかった。2位の日本ハムはまだ打線の形が見えないし、3連覇中のオリックスも森ら実績のある打者が力を発揮できていない。ソフトバンクも波はあるだろうが、足元を見据えて結果を積み重ねたい。

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