【100年フード認定】地域の宝を売り込んで(5月7日)

 文化庁の「100年フード」に2023(令和5)年度、喜多方市塩川町の「塩川鳥モツ」が認定された。制度が始まった2021年度の「喜多方ラーメン」、翌年度の「山都そば」に続き市内から3年連続の選出となった。豊かな食文化の証左であり、県内外への売り込みに力を入れてほしい。

 「100年フード」は地域に根付く食文化を掘り起こし、後世に伝えるのが目的の一つ。江戸時代以前から続く郷土料理などの「伝統」、明治・大正から伝わる「近代」、昭和以降に誕生して今後100年の継承を目指す「未来」の3部門を設けている。市町村などの自治体をはじめ各種団体から応募を受け、有識者委員会が審査する。文化庁によると、2023年度は60件の応募があり、塩川鳥モツを含め50件が選ばれた。

 認定された食文化は特徴とともに紡いできた歴史や保護、継承の取り組み、関連行事を含めた「ストーリー」が文化庁のサイトで紹介される。各団体が展開するホームページやイベントなどで「100」を模したロゴマークを使用できる。海外では日本食への注目が高まっており、工夫次第で観光商品の目玉にもなり得る。

 「塩川鳥モツ」は鳥の皮を煮込んで作る塩川町の郷土料理で、養鶏業が盛んだった昭和初期が起源とされる。当時、売り物にできなかった部位を家庭で消費していたルーツを持つ。現在、主に市内の飲食店6店が独自の味付けで提供している。ごはんのおかずや酒のつまみとして人気があり、各店でそれぞれ作る缶詰は土産物としても重宝されている。

 喜多方市は4月、産業部内に「喜多方ラーメン課・そば課」を新設した。観光交流課の職員が兼務し、自慢の食と伝統を県内外に広く伝える。塩川鳥モツで3件目となった100年フードのPRを強化する狙いがある。今後は市をはじめ、関係団体が連携を深めて、観光誘客イベントや首都圏での売り込み、SNSを活用した海外への発信に努める必要がある。新型コロナ禍を乗り越え、インバウンド需要が急速に高まっている。官民一体での取り組みを展開し、独自の食文化を通じた地域経済のさらなる振興を目指すべきだ。(石井賢二)

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