クマ肉、脂のうまみを鍋で味わう 疲れや冷え性、美容に良し 県北ニクいいね(8)

「打当温泉マタギの湯」で宿泊客に提供される熊鍋

 クマ肉は体を温め、疲れや冷え性、美容に良いとされる。秋田県北秋田市阿仁地域では、お産が軽くなるという言い伝えから妊産婦に食べさせていたという。最も一般的な食べ方は鍋料理。住民は各家庭で具材や調味料を工夫した「熊(くま)鍋」を味わってきた。

 「クマ肉のおいしさは脂にある。いろんな肉を食べてきた舌の肥えた人が、一口食べて『これは初めて』とうなる」。こう語るのは、マタギ集落の一つでもある比立内で「木村精肉店」を営む木村謙一さん(64)だ。

 木村さんによると、ツキノワグマの体は筋肉質だが、冬眠前の約1カ月間でブナの実などを食いだめし、多くの脂肪を蓄える。このため晩秋―初冬のクマが最も味が良い。脂は融点が低いため口当たりが良く、鍋にした場合、冷めても固まりにくい。木村さんは「脂ばかりと言われることもあるが、うまく煮れば必ずおいしくできる」と太鼓判を押す。

 そんなクマ肉を冷凍で常時販売するのが道の駅あに「マタギの里」。売店の冷凍庫に並ぶのは300グラム(3千円)と500グラム(5千円)の2種類で、熊鍋のレシピも紹介している。店内には他にも、クマの脂やクマ肉のレトルトカレーなどを販売しており、いずれも看板商品だ。

 道の駅から車で10~15分ほどの「打当温泉マタギの湯」では、熊鍋を含む宿泊プランが人気を集める。1人用の鍋で豆腐とネギ、大根入り。食べる直前に温め、濃厚な脂のうまみを味わえる。ほかに阿仁地域周辺の旅館では、鍋料理などで宿泊客にクマ肉を提供している所が多くある。

 今年3月、県教育委員会がまとめた文化財調査報告書「秋田の郷土食」で、熊鍋は阿仁をはじめ仙北市や由利本荘市鳥海町など、マタギ文化のある地域の風土を反映した貴重な食として選ばれた。山に生きるマタギの営みとともに、後世に伝えたい味である。

道の駅あに「マタギの里」の情報

北秋田市阿仁比立内字家ノ後8の1外
TEL0186.69.2575
売店営業時間は午前9時~午後5時

打当温泉マタギの湯の情報

北秋田市阿仁打当字仙北渡道上ミ67
TEL0186.84.2612

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