尾瀬、保全・継承へ再整備 環境省と福島県檜枝岐村 眺望改良、解説表示 「会津沼田街道」沿い

 環境省と福島県檜枝岐村は尾瀬国立公園を保全して次代に継承するために、施設の再整備と自然や歴史の情報発信の強化に乗り出す。会津と現在の群馬県を結ぶ交易路として栄えた「会津沼田街道」ルートを中心に事業を実施する。村側の沼山峠で尾瀬沼周辺を眺望できるよう改良工事を行い、誘客や児童・生徒らの環境教育につなげる。入山者数の減少に伴い、管理・保全の担い手である山小屋などが苦境にある中、尾瀬を守る活力をさらに生み出す一手とする。

 400年の歴史がある「沼田街道」のうち、尾瀬に含まれるルートは【地図】の通り。このうち、福島県側で最も利用が多い沼山口ルートの途中にある沼山峠の休憩スペースを再整備し、展望機能を強化する。

 生い茂った木が眺望を妨げている。現在の休憩所より斜面を登った高い位置にベンチを新設する。さらに階段も設け、貴重な植物の宝庫となっている大江湿原や尾瀬沼の景色を楽しめるようにする。板敷きのデッキにし、休憩できる人数を倍以上の50人程度に拡大させる計画だ。

 沼山峠や森林の価値を伝える表示がないため、尾瀬を代表する森林景観として知られるオオシラビソ林の自然的価値、街道の歴史を解説する看板も取り付ける。校外学習で訪れた子どもたちやツアー客らへの自然ガイドに生かす。外国人向けに英語などの表記も想定している。

 環境への配慮を徹底して工事する。樹木の伐採は一本のみにとどめ、枝打ちや下草刈りを最小限にする。今年度に調査や設計を実施し、来年度から現地の整備に着手する考えだ。

 整備に先行し、檜枝岐村もベンチの設置などに取り組んでいる。ブナやオオシラビソをはじめ巨木を楽しめるルートなどをPRしている。今後は会津沼田街道でつながる群馬県片品村との連携も深める。街道の歴史や魅力を詰め込んだパンフレットやPR動画を活用する。

 尾瀬では新型コロナウイルスの感染拡大により入山者が大きく減少した。2019年は24万7千人だったのに対し、2020(令和2)年は10万6千人にまで落ち込んだ。昨年は16万3千人に回復しているが、ピーク時の64万人の4分の1程度となっている。

 尾瀬では、山小屋の従業員や地元住民が登山道の管理や植生の保護、鳥獣の管理などに貢献している。関係者は、こうした取り組みを持続させるために、入山者の増加によるなりわいの維持や尾瀬の自然に関心を持つ人を増やす必要があると指摘している。

 平野信之村長は「先人が守り続けた貴重な自然環境を後世に伝えるため、整備の早期完了を推進し、利用者の回復に向けた施策を検討したい」としている。

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