大型連休終わって

 愛媛県松山市が募集した俳句の中に、かつて秀作に選ばれた一句がある。〈黄金週間光まみれに過ごしけり〉香山のりこ。「光」とは陽光だろうか、輝くような笑顔だろうか▲大型連休が終わった。国内ではホテル代が高く、円安で海外旅行には手が出ない。このため、価格は安くて近場で、日程は短い-の「安・近・短」の過ごし方が主流と聞いたが、近場であっても〈光まみれ〉の時間を過ごした人もいただろう▲長崎、佐世保の港にはクルーズ船が入り、街は活気づいた。今年の大型連休がことの外、まばゆく見えたのは、「巣ごもり」で連休を終えた4年前をふと思い出したためかもしれない▲コロナ禍での大型連休は、全国で緊急事態宣言が出され、外出自粛を求められた。連休最後の日、近所の公園を散歩したという、それだけのことをよく覚えている▲社会全体、まるで闇に包まれたようだった。その日々を顧みると、光にあふれた休日のまぶしさ、ありがたさが身に染みる▲〈人皆(ひとみな)の箱根伊香保(いかほ)と遊ぶ日を庵(いお)にこもりて蠅(はえ)殺すわれは〉正岡子規。別に外出自粛というわけではないが、この連休を自宅で過ごした人もいるだろう。庵にこもった“子規派”も、光にまみれた人も、多くがまた忙しい日々に戻る。日常再開の合図に、深呼吸をどうぞお一つ。(徹)

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