「余命3カ月」の歌手、最後の舞台 大西麻由さん(青森・弘前市出身)「最高に幸せ」

子どもたちや友人、知人らに囲まれ笑顔でステージを締めくくる大西さん(右から3人目)=6日午後、東京・銀座

 歌い、踊って、笑って、泣いて-。最後の舞台はどこまでもにぎやかだった。肺がんのため3月末、「余命3カ月」と診断された歌手大西麻由さん(62)=青森県弘前市出身、東京都在住=が6日、東京・銀座のライブハウスで「ラストパーティー」を開いた。北海道から九州まで、集まった家族や友人・知人、関係者約170人に好きな歌で感謝と別れを告げる表情は満ち足りて晴れやかだった。「最高に幸せ。ありがとう」

 地元で結婚。39歳で離婚後、上京し3人の子どもを育てた。紆余(うよ)曲折を経て50歳を過ぎて歌に人生を見いだした。昨年CDを出したばかりの「遅咲きのシンガー」。さあこれからという矢先に人生が暗転した。体力は次第に落ち、できないことが増えてきたという。

 だが大西さんは腹をくくって前を向く。最後の舞台、今出せる力を振り絞り、笑顔で人生を閉じようと体調と相談し、家族の後押しを受けこの日を迎えた。

 「最高の夜にしたい」。客席に呼びかけた大西さんの歌声は、病気を感じさせずつやがある。以前から知り合いだった往年のアイドルグループ「フィンガー5」のメンバー3人も駆け付けステージに花を添えた。大西さんの誘いに応じ、観客が前に出て楽しそうに踊った。

 「私の人生の宝石は、ここに来てくれた皆との巡り合いであり、つながり。人に支えられ、助けられ、ここまで来た。感謝の思いでいっぱい」

 約2時間、時に涙で声を詰まらせながら12曲を歌い上げた大西さんの表情は達成感にあふれていた。

 終了後、名残惜しそうに一人一人に「ありがとう」と声をかける母の姿に、長男の会社員対馬世人さん(34)=東京都在住=は誇らしげに語った。「こんなに集まってくれるなんて母の生きざまが死にざまに表れたと感じた。尊敬しかない。背中を追っても一生追いつかない、そんな大きな存在です」

© 株式会社東奥日報社