2人とも作っている曲がたまたま「許さねえぞ!」みたいな曲で
──現在2人で活動されていますが、最初は4人だったんですよね?
フクダ:そうですね。2020年の10月結成で、軽音サークルで出会って組むことになったんですけど、ちょうどコロナ禍でやることがなかった時に、てざわりさんがインスタで自分で作った曲を上げてて。それがめちゃくちゃ良かったんですよ。それで私も曲作ってみようって思って、曲作って友達に聴いてもらったりしていて。コロナ明けてきたぐらいに久々に会った時に「バンドやってみようか」みたいな話になったんです。そこからドラムとリードギターの子を捕まえてきて、最初4人でやっていたんですけど、徐々に1人ずつ抜けていって(笑)、今この2人でやっています。
──「クソ男を撲滅しよう!」をコンセプトに活動されているそうですが(笑)、なにかキッカケがあったんですか?
吉田:2人とも作っている曲がたまたま「許さねえぞ!」みたいな曲で、それを好んで聴いてくれる女子たちが多くて、合わせました(笑)。
──なにか酷い目に遭ったというわけではないんですね。
フクダ:そうですね。友達が結構酷い目に遭うことが多くて。「拝啓、クソ男様」っていう曲は私が書いたんですけど、その曲は友達が浮気されたときに作って、みたいな。そういう感じですね。
──実体験が元になっていることが多いんですか?
フクダ:そうですね。
吉田:私は友達とか知り合いが言っていたのを思い出して作るパターンが多いです。
──お二人が影響を受けてきたアーティストを教えてください。
吉田:私は3markets[ ]と、神聖かまってちゃんがずっと好きです。スリマになりたくてバンドを始めました。
フクダ:私は一番最初に好きになったのはSHISHAMOです。地元が栃木なんですけど、Zeppに初めて電車で行ってライブ観に行ったのがSHISHAMOで。軽音サークルに入ってからクリープハイプとか好きになって、今でもずっと好きです。
──ミスiDに応募したとプロフィールに掲載されていますが、大森靖子さんに影響を受けているんですか?
吉田:特にそういうわけではないんですけど、あれは私が勝手に応募して。なんでも出してみればいいやって思って出したら審査に通りました。
──そうなんですね。曲の感じもあって結構影響を受けているのかと思いました。
フクダ:確かに(笑)。
「拝啓、クソ男様」って俺の曲かな?
──『お前のために聴いてない』というタイトルにはどういう意味が込められているんですか?
吉田:3月8日にFlowers Loftでやった自主企画のタイトルが『お前のために歌ってない』だったんですけど、私の元カレが、私の共通の友達に会った時に「‟拝啓、クソ男様”って俺の曲かな?」って言ったらしくて。それチナツちゃんが書いた曲だし、それお前の曲じゃねぇしって(笑)。いまだにお前のこと書くと思ってんのか? っていう意味で『お前のために歌ってない』って付けたんです。それで、その逆で、恋愛ソングとか別れた後に聴いてると、別れた男たちは「あいつ、まだ俺のこと好きなのかな」っていう感じになってると思うんで、そのままの意味で「お前のために聴いてねぇよ、その曲」っていう感じで付けました。
──2021年から配信リリースはされていた中で、どういうEPにしようと思ってこの6曲を選んだんですか?
フクダ:「今のウマシカてはこうです」って名刺代わりになるようなEPを出せたらいいなっていう感じで、リードギターがいた頃から長い間ライブで演っていて盛り上がる「拝啓、クソ男様」、「猫」、「『酔った。』」と、新曲の「ワンコイン」、「悪役」、「覚悟」を入れた6曲を選びました。
──悪い男と、それに合わせてしまう女子のちょっとダメ部分や、傷ついている姿がすごく生々しく描かれていますよね。ストレートなロック、パンクなサウンドとリアルな歌詞が10代、20代の女の子は共感するし、30代以降の世代にも苦い思い出として響くなと思います。特に思い入れのある曲はありますか?
吉田:「『酔った。』」はライブでずっと演っている曲だったんですけど、サブスクで配信していなくて。そういう意味では思い入れのある曲ですね
──吉田さん作曲ですよね。オルタナティブな雰囲気で、夏目漱石の有名なセリフが出てきたり、掛詞になっていたり、歌詞が文学的ですよね。
フクダ:私は「ワンコイン」ですね。「交通費を払うから会おうよ」って私が言った経験を元に作った曲で。結構メロディーとかも好きで、2分ちょっとの短い曲なんですけど満足感がある曲です。
──ワンコインていう額の小ささが切ない気持ちと一緒に積み重なっていく様子がとてもリアルですよね。
フクダ:ライブでパスステッカーを売っていて、自分たちがサインとかいろいろ書いて渡しているんですけど、「“ワンコイン”のサビの歌詞書いてください!」って言われます。
──お客さんは10代が多いんですか?
吉田:8割ぐらいが10代ですね。
──10代にこれが響くんですね。
フクダ:ちょっと響かないで欲しいけど(笑)。
──「悪役」は疾走感があって、笑い泣きしているような曲ですよね。
フクダ:そうですね。これも友達が浮気されまして。結局別れたんですけど、そばで見てて結構大変そうで…その話を聞いたときに何も言えなくなっちゃって「上手く言えないけど、曲作ったから聞いて」って言って送りました…。最後の方の歌詞で「私は人を信じることができなくなったけど 君は私を失う程度でよかったね」っていうのがあるんですけど、ここは歌詞が浮かんだ時に脳汁が出ました(笑)。
──「猫」の「ずっときみに嫌われない方法 下手に喋らないこと」という歌詞が要だなと思って。男性に合せてしまう女子って多いと思うんですが、そういう切なさをすごく感じます。
フクダ:これは、私が「好きな人の猫になったら幸せだろうな」って思って。猫って生存しているだけで可愛がられるし、羨ましいなって思って(笑)。猫になりたいなって思って作った曲です。
──最後の「覚悟」は曲調がエモーショナルで、この曲だけ恋愛ソングじゃないですよね。
フクダ:これは私が1カ月ぐらい曲が全然書けなくなっちゃったときに、3markets[ ]の「人生詰んだ」っていう曲をずーっと聴いていて。私結構、日常的に鬱なんですよ(笑)。「なんで生まれてきてしまったんだろうか」っていうことばっかり考えてしまう時期が結構あって。その時に、「でも、死ぬのはできんな」って思って。これからバンドとしてやっていく中で生きている理由をみつけようって思って作った曲ですね。ボーカルレコーディングの時に扁桃炎になっちゃって。でも、最後の「ア~♪」ってハモる場所があるんですけど、当初のデモの時と違うハモリを入れたら合唱コンクールのような(笑)、めちゃくちゃいい感じになりました。
「どうせ好きになってくれないから、好きになるのやめよう」って接するようにしてて
──自主企画の時に「バンドと恋愛は似ている。自分は負け続けてきた」というMCをフクダさんがされていたのが印象的だったんですが、お二人は恋愛するとどうなるんですか?
吉田:ヒステリックになりますね。
──男の人に合せるタイプですか?
吉田:合わせないです。「お前が合わせろ」っていう感じです。
──強いですね(笑)。フクダさんは?
フクダ:私は相手の都合に合わせてしまうというか。「会いたい」って言った時に会える人が好きで(笑)。こっちの都合に合わせて頂いてるっていう感じなんですけど。苦手ですね恋愛は(笑)。
──負け続けてきたというのは、恋が多いということなんですか?
フクダ:いや、私、自己肯定感が低くて。「この人はどうせ私が好きになっても好きになってくれないから、好きになるのやめよう」って人と接するようにしているんです。それが私の中では負けだなと思ってて。ちゃんと好きなら好きでいけばいいやんて感じなんですけど、「もとから好きじゃないです」って思い込んで過ごすようにしてて(笑)。それが個人的には負けだなって思う。
──今はいい恋愛されていますか?
吉田:まったくないですね。お客さんがXで「元カレが~」ってDMで恋愛相談くれたりするんですけど、「いいね」を押すことぐらいしか(笑)。
フクダ:恋愛相談に乗ったりとか。
──お客さんから「この話を曲にしてください」と言われたりするそうですが、自分や友達の体験談を曲にして実際にライブで演奏して、そういう想いが昇華されていってる感覚はありますか?
吉田:想像以上に自分の手元を離れていってる感じがあります。「私はこの曲を作っていません」みたいな気持ちになりますね。
──曲がみんなのものになっていくのを俯瞰している感覚なんですか?
吉田:はい。「あ、好きなんだ。へー」みたいな(笑)。
──そうなんですね。MCでも女の子を肯定して「最強の女子の味方」だとおっしゃっていましたが、ウマシカてのライブでつらい気持ちをみんなと共有して思いっきり泣いて、元気になって帰っていくっていう、そういう場なんだなと思いました。
吉田:一時期、最前の女の子たちがとんでもない形相で泣きながらこっち見つめてくるみたいな、嗚咽するほど泣いてる子とかいましたね。前までは男性の方が多かったんですけど、今は9割女子とかで。ビックリしています。
──EPを出して今ツアー中ですが、お客さんに曲が届いている実感や手応えはありますか?
吉田:めっちゃありますね。大阪も静岡も、現地の子と、東京や大阪からそれぞれの場所に遠征してきてくれたりして。嬉しいです。
──女性はすごく共感すると思うんですけど、男性はウマシカての曲をどういう気持ちで聴いているんでしょうね?
吉田:予防ですね。悪い男にならないための。教室なんで。通ってもらって。
フクダ:反面教師として。
──どうやったらクソ男を撲滅できるんでしょうか?
フクダ:でも、人間は過ちを犯して成長していくしかないので(笑)、自分で気づくしかないというか。
吉田:皆が学び、近づかない。
フクダ:そう(笑)。この人はそういう人だって自分から線を引けるようになったら…
吉田:クソ男っていう概念がなくなって、最終的にはいなくなる。
フクダ:ただの人であればいいなって思ってます(笑)。平和な世界に。
──このEPを聴いてしっかり学べってことですね。
フクダ:そうですね(笑)。
恋愛ソングでしか救えない何かがあると思う
──サウンド面など、今後やりたいことはありますか?
吉田:シューゲイザーですね。The Novembersが好きで。うちのサークルが結構ART-SCHOOLとかダウナーチックのやつが好きなんですよ。サポートで入ってくれてるドラムの人もずっとコピバンやってて。あと、最近は超能力戦士ドリアンみたいなコミックバンドをどうしても組みたいんです。
フクダ:観たいですね(笑)。客として行きたい。
──恋愛コンセプトは継続していくんですか?
吉田:恋愛ソングでしか救えない何かがあると思うんで、恋愛ソングをいっぱい作ろうと思います。
フクダ:てざわりさんの昔作った曲もすごい良くて、恋愛じゃない「人生」って感じのまだ世に出てないやつがあるので、それも出したいです。
──今後の目標や対バンしたいバンドなどいますか?
吉田:ムロフェスに出たいです。対バンしたいバンドはわりと出来るようになってきてるんですよ。あとは、神聖かまってちゃんですかね。曲に出てくるのでyonigeとか。1回やりたいのは、元恋人を連れて来たら1人無料みたいな、修羅場のようなライブをやりたいな~(笑)。
フクダ:私は最終的にクリープハイプ。あとback numberと、My Hair is Badと対バンしたいです。
──ツアーラストへ向けての意気込みと、全国のクソ男さん&傷ついている女子たちへ向けてメッセージをお願いします。
吉田:反省しに来い!
フクダ:(笑)クソ男に対しては、過去を顧みて生きて行ってほしいなって思います。今回初めてのツアーで、東京から遥か彼方離れた地方へ行っても、自分たちを求めてくれている人がいるっていうことが分かっただけでもう収穫があったなって思っていて。これからもバンドを続けていけるように頑張りたいなという所存でおります。あと、ツアーの後も決まっている企画があるので、楽しみにしていてください!