賀集さん作品展、地元の千葉で開催 「巨大生命樹」バティックなど約100点を展示

2024年3月16〜17日、千葉県佐倉市の佐倉市立美術館で、「賀集由美子の見たインドネシア〜チレボンのバティック」展(賀集さん作品展実行委員会主催)が開催された。賀集さんの制作したバティックなど約100点が展示され、約450人が訪れた。

賀集さんは東京造形大を卒業後、インドネシアの染織への興味から、頻繁にインドネシアを訪れるようになった。1994年からチレボンに住み始め、2000年にバティック工房「スタジオ・パチェ」を創設した。コロナ禍中の2021年にチレボンで急逝するまで、バティックを中心にした多彩な創作活動を続けた。佐倉市は賀集さんの日本の自宅があった場所で、ゆかりの地として選ばれた。

展示会は、賀集さんの初期から後期までの創作の跡をたどり、賀集さんの全体像の一端を示そうという試み。工房を立ち上げてから、バティック制作のピーク時に作られた作品の素晴らしさは言うまでもないが、職人不足やコロナ禍という困難な状況下にあっても、工夫をこらして創作活動を続けた賀集さんの姿が浮かび上がる。

奥の壁が「生命樹」柄バティックのコーナー。「巨大生命樹」を中心に、さまざまなバリエーションの生命樹柄タペストリーや風呂敷などが展示された

賀集さんの知人や佐倉市民ら大勢が訪れ、作品や資料に見入っていた

展示されたバティックはチレボン伝統文様に始まり、さまざまな生命樹柄、人気を博したオリジナル・キャラクター「ペン子ちゃん」柄、バティック小物に至るまで、多岐にわたる。バティック作りの過程を示す、バティック職人の練習描きの布やバティックの下絵、バティック制作で使われる道具も展示された。

あまり制作数は多くなかった賀集さんのバティック布「カインパンジャン」は、日本のコレクターらの所蔵する約15点が展示された。展示のメインとして、賀集さんが友人に「飾ってほしい」と託した、長さ約4メートルに及ぶ「生命樹」柄バティックが展示された。来場者からは「美術館に所蔵されてもおかしくない品」という声が上がっていた。

「賀集さんを通じてインドネシアやバティックを知ってほしい」との思いから、展示の最初を飾ったのは、バティックで作られたインドネシア地図とバティック制作風景を描いたバティック。作品展の両日ともに、バティックの作り方を解説する「バティックお話会」が開催された。賀集さんの知人、インドネシア元在留者、佐倉市民らが訪れ、展示に見入っていた。

バティックの染色工程を説明するバティック(下)とバティック制作風景を描いたバティック布(上)

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