東京神保町のシェア型書店「PASSAGE」を訪ねて

東京神保町のシェア型書店「PASSAGE」を訪ねて

シェア型書店「PASSAGE」の外観。(4月21日撮影、東京=新華社記者/楊光)

 【新華社東京5月7日】東京の古書店街、神保町に「PASSAGE」という名の一風変わった書店がある。店内の書棚一つ一つを異なるオーナーがレンタルし、思い思いのスタイルで好きな本やおすすめの本を並べて販売している。日本ではここ数年、東京を中心にこうした「シェア型書店」が増え、横浜や福岡、山口など各地に広がっている。

 2022年3月に開店したPASSAGEは特に有名な一つ。明治大学の元教授でフランス文学者の鹿島茂さんがプロデュース、設計し、息子の由井緑郎さんが経営を担当する。パリのアーケード商店街(パサージュ)をモチーフにした店構えで、オレンジ色の照明と上品な色調がクラシックな雰囲気を醸し出し、おしゃれな印象を与えている。

東京神保町のシェア型書店「PASSAGE」を訪ねて

シェア型書店「PASSAGE」の内部。(4月21日撮影、東京=新華社記者/楊光)

 書棚にはパリの通りの名と番地が表示され、利用客はパサージュをぶらつくように店内を回りながら、本との出会いを楽しむことができる。客として店を訪れていた60代の女性、藤野さんは「著者が自ら推薦文を寄せている書棚もある。著者が自分で本を売っているようで、本人の思いを直接感じ取ることができ、とても面白い」と話した。

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「PASSAGE」店主の由井緑郎さん。(4月21日撮影、東京=新華社記者/楊光)

 詩人の俵万智さん、作家の林望さん、翻訳家の鴻巣友季子さん、俳優の中江有里さんらも同店の「棚主」に名を連ねる。由井さんは、読んだ痕跡が付加価値になるのも書店の強みだとし、「作家や評論家が残したメモや付箋をあえて残している。どこをポイントに読んだかを知ることが特別な読書体験になる」と語る。

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「PASSAGE」で秋葉さんがレンタルしている書棚。(4月21日撮影、東京=新華社記者/楊光)

 約70平方メートルの店内に362個の書棚が設置され、一つ当たり1カ月5500円で貸し出されている。書店にとってはレンタル料だけで毎月200万円の安定的な収入がもたらされる。棚主にとっては毎月数千円で「自分の書店」を持てるのが魅力だ。書棚一つだけを管理すればいいため、経営リスクは低く、書店を開く楽しみを気軽に味わえる。

 50代の女性、秋葉さんは、学者だった両親が残した本の買い手を探そうと棚主になった。「心から本を愛する人に見つけてほしい」と、書棚に本をきれいに並べて展示している。

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「PASSAGE」をプロデュースした鹿島茂さんの書棚。(4月21日撮影、東京=新華社記者/楊光)

 由井さんによると、同書店は定期的に交流会を開いている。書評家や出版社の編集者、書籍デザイナーなど約100人が参加し、それぞれがおすすめの本を持ち寄る。読書会や講演会などの会場として、店内スペースを低価格で貸し出してもいる。

 中国語教師のグループの書棚もあり、中国の文学や地理などの関連書籍が販売されている。店には中国人従業員がおり、中国語でのサービスを提供している。

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「PASSAGE」の分店として今年3月にオープンした「SOLIDA」。(4月21日撮影、東京=新華社記者/楊光)

 経営は順調で、昨年3月に2号店、今年3月に3号店をオープンした。レンタル書棚専用の電子システムも開発。本に貼ったバーコードを読み取るだけで商品を在庫登録し、コンピューターで統一管理できるようにした。中国の進んだ取引手法も参考にし、キャッシュレス決済を増やし、釣り銭を渡すなどの多くの手間を省いたという。

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「PASSAGE」の分店「SOLIDA」の内部。(4月16日撮影、東京=新華社記者/楊光)

 次のステップとして目指すのは「無人書店」へのモデルチェンジだ。実現に向け、店内の全ての本に二次元バーコードを貼り、携帯電話でスキャンし決済できるようにした。本を買った消費者をユーザー登録し、携帯アプリで店のドアを開けられるようにするシステムも開発している。24時間出入り自由で、購入が終わったらセルフサービスでドアを閉めて帰れるようにするという。(記者/楊光、楊智翔)

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