石川県・今年はクマの出没増える? 木の実が「凶作」傾向 すでに目撃情報も

市川 栞キャスター:

「北國新聞論説委員の野口強さんとお伝えします。よろしくお願いします。きょうはどんな話題でしょうか。」

北国新聞論説委員・野口 強さん:

「長い連休が明けました。皆さんは、さまざまな過ごし方をされたと思いますが、ちょうど山菜採りのシーズンで、山に出かけた方も多いでしょうね。」

「ただ今年は暖冬でクマの冬眠明けが早まり、各地で遭遇するケースが増えたようです。」

市川:

「県内ではクマの餌になる木の実の不作が予想され、早くも出没警戒準備情報が発表されましたね。」

野口さん:

「きょうのテーマは、こちら。」

「今年は木の実不作?クマ出没増えるか」

「石川県では、年に3回、ツキノワグマの出没の目安として、クマの餌となるブナの実の出来を 予測する調査をしていますが、先月の調査で、金沢、白山、小松、加賀の4つの市の調査地点10カ所すべてで「凶作」の傾向がみられた。」

市川:

「これを受けて先月26日、被害が増える恐れがあるとして、秋になるのを待たず「今から気を付けましょう」という警戒準備情報を発令したんですね。」

野口さん:

「その矢先、先月28日に白山市白山町の登山道で、50代の女性が、出合い頭に顔を引っかかれ、けがをしました。春には親から離れたばかりの、警戒心の薄い子グマが里山近くに降りてくることがあり、民家の周辺で目撃されることもある。」

「繁殖期となる6月から7月は、雄の行動範囲が広がるため、出没が増える傾向にあります。」

市川:

「クマの出没は、秋の冬眠前が多いんですが、春から夏にかけても油断はできませんね。」

野口さん:

「1つ目の、目からウロコです。」

「森の忍者が大変身都会へ続々移住?」

「環境省のまとめによると、2023年度のクマによる人的被害は全国で219人、亡くなった人は6人で過去最多となった。」

「本来、クマは森に住み、人の気配がすると、音もなくその場を離れる「森の忍者」とも言われていますが、近年では、集落の近くに定着し警戒心が薄く、住宅街などで餌を探す「アーバンベア」といわれる新しいタイプの一群が増えています。」

「これまで先祖代々、手入れしてきた山林に、人が入らなくなり、雑草が生い茂って、人の生活圏とクマの生息圏の境目があいまいになったことも、その原因ではないかと言われます。」

市川:

「石川県では、去年の12月、普通なら冬眠しているはずなのに、白山市の平野部の住宅街にクマが出て3人がけがをした。」

野口さん:

「暖冬で冬眠が遅れ、食料を探しているうちに、平地までたどりついたのではないかと専門家は推測しています。」

「こうした状況から、県は、市街地にクマが出没したという想定で、この3月に初めて、白山市で住民参加型の訓練を実施し、通報から捕獲までの連絡や避難体制を確認したそうです。」

「もう1つ、目からウロコです。」

「広がる出没エリア能登は大丈夫か」

「県内で生息するツキノワクマは、2021年時点でおよそ1200頭と推計され、10年前の1・5倍に増えている。令和に入ってから奥能登でも頻々と出没情報が寄せられ、生息するエリアも、ほぼ県内全域に広がっています。」

市川:

「ことしは能登半島地震で被害を受けた七尾市から、早くも2月に目撃情報が寄せられたんですよね。」

野口さん:

「地震で建物や農地が被害を受けて、人が地域から離れてしまうと、土地が荒れ、人と野生動物との境界があいまいになってクマを引き寄せる原因にもなる。」

「被災地でがれきの撤去や住宅再建を続け、人や物資が活発に動く状態を作ることが、クマを阻む効果を生む。」

「こうした観点からも被災地の再生活動は進める必要があると思います。」

市川:

「そして、まずはクマに出会わないための対策をすることが大切ですね。」

野口さん:

「山に入る時は二人以上で行動し、 鈴やラジオで存在を知らせる・明け方、夕暮れ時、雨降りや霧の日の外出は要注意・集落近くで隠れ場所となる草むらややぶをこまめに刈り取る・ペットフードや生ごみは絶対に外に放置しないといった点を守れば、出遭いを避ける効果があります。」

「実は私も、連休中は草刈りに精を出しましたが、こうした対策を徹底したいですね。」

市川:

「ありがとうございました。野口さんの目からウロコでした。」

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