奥村組ら/長周期地震動対策を強化、免震層の水平変位抑えるダンパー開発

奥村組と東北大学、油圧機器関連製品の製作などを手掛けるシズメテック(相模原市中央区、鎭目武治代表取締役)は7日、免震建物の長周期地震動対策を強化する「性能可変オイルダンパー(VOD)」を共同開発したと発表した。長周期地震動の作用時に免震層に生じる過大な水平変位をオイルダンパーに取り付けた小型装置で抑制し、建物が周囲の擁壁に衝突することを防ぐ。免震層で建物と擁壁の隙間部分に当たる「水平クリアランス」が十分確保できない狭い敷地に建てられたストックも含め、既存の免震建物を対象に同技術の適用を促す。
VODは伸縮時に筒内でオイルの流れる方向が変化しないユニフロー式のオイルダンパーに、棒状で可動部品のピストンロッドが変位することで作動する調整装置の小型シリンダーを取り付けた構造。小型シリンダーは免震層に生じた水平変位に応じ、地震エネルギーを吸収し揺れを小さくする減衰性能の力を自動で無段階に切り替える。
最大の特徴は免震性能を損ねず免震層に過大な水平変位が生じないようにできること。従来型のダンパーを増設して減衰性能を高める場合、免震性能が低下し上部構造に作用する地震の力が大きくなってしまう課題があった。
奥村組によると、長周期地震動の影響で石油タンクの火災や震源から遠い場所にある高層ビルの内部被害などを引き起こした2003年の十勝沖地震や11年の東日本大震災を経て知見を深めてきた。
同社は8月に名古屋支店(名古屋市中村区)のビルに設置されているダンパーをVODに取り換える予定。1月には同支店に用いるVODとして日本建築センターの評定も取得した。現在は特許を出願している。

© 日刊建設工業新聞社