福島第1原発、全作業の手順や安全性点検 相次ぐトラブル受け

 福島第1原発で汚染水漏れや停電などのトラブルが相次いでいることを受けて東京電力は7日、第1原発で進む全ての作業の安全点検に着手したと発表した。約800ある作業で工事の手順や現場の状況を再確認し、作業の安全性や周辺環境に影響を及ぼすリスクを評価する。点検中は作業を一時中断し、安全を確保できた作業から順次再開する方針。7日現在、点検で中断中の作業は約680に上っており、点検が長引けば廃炉作業の工程に影響が出る可能性もある。

 第1原発では、人為的ミスなどに起因した作業のトラブルが相次ぐ。昨秋には放射性物質を含む薬液を浴びた作業員2人が身体汚染、今年2月には建屋からの汚染水漏えいが相次いで発生した。4月には構内で作業ミスによる停電が発生し、処理水の海洋放出が約6時間半にわたり中断する事態となった。東電は個別の再発防止策を講じてきたが、発生に歯止めがかからないことや4月の停電の原因となった作業の手順書が不十分だったことなどから、全作業を中断した上で安全性の再確認が必要と判断した。

 点検では、各作業について東電と協力企業がトラブル発生が想定される場面などを洗い出し、必要な対策を検討する。検討結果を踏まえ、手順書や工事計画を見直して再発防止を図る考えだ。今後始まる作業や計画変更が出た作業についても同様の点検を実施する。

 約120件の作業については先行して点検を終えて、作業を再開した。東電は今月中には全ての作業で点検を終えたい考えで「廃炉作業や、処理水の海洋放出の計画に影響がないように進める」としている。

 第1原発でのトラブルを巡り原子力規制委員会は、身体汚染と汚染水漏れが「軽微な違反」に当たるとの暫定評価を公表。停電による処理水の海洋放出中断についても、委員から「本当にばからしい事案だ」と苦言を呈された。こうした指摘を受け、東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明廃炉責任者は「作業の停止も含めて、リスクを見直したい」との方針を示していた。

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