訪日客狙い“奥日光2泊3日400万円ツアー”のアテが外れた理由

紅葉色づくいろは坂(C)共同通信社

今年3月の訪日外国人客数は前年同月比69.5%増の308万1600人と、単月として初めて300万人を突破した。

その後も34年ぶりの円安水準の影響などにより、海外から観光客がどっと押し寄せた。このGW期間中も国内各地の観光地は多くの訪日客で賑わい、都市部ではブランド品を「爆買い」する姿も見られた。

そんな中、インバウンド需要の拡大を目指す栃木県が、満を持して企画した「超豪華ツアー」が企画倒れに終わった。

奥日光を巡る2泊3日で1人当たり400万円という贅の限りを尽くしたプランで、昨年10月に販売を開始した。日本到着後、いろは坂の渋滞を避けるため、都内からそのままヘリコプターで奥日光まで移動し、上空から紅葉を満喫。夕食は中禅寺湖にある国の登録有形文化財「イタリア大使館別荘記念公園」の建物を貸し切りにして楽しむ。コース料理を提供するのは海外富裕層の利用が多い「ザ・リッツ・カールトン日光」で、宿泊先も同ホテルだ。露天風呂付きの大浴場から中禅寺湖や男体山を望む。滞在中は専属のガイドがつき、奥日光の美しい景観を案内するなど至れり尽くせりの内容だった。

■50人程度を見込むも申し込みゼロ

県はのべ50人程度の利用を見込み、サウジアラビアからなど60件ほど問い合わせがあったそうだが、申し込みはゼロ。プランを見直しツアー料金を400万円から290万円まで下げ、販売期間を昨年12月末から今年1月末まで延長したものの成約には至らなかった。

県はコロナ禍で落ち込んだ訪日客の回復を図るため、観光庁が地方自治体や事業者向けに実施した「観光再始動事業」に応募し、採択された。事業費は全額国庫負担で県は1500万円を計上し、JTBを通じて販売。栃木県がこれほど高額のツアーを企画したのははじめてのこと。全国でも珍しいという。

「高すぎるといった批判はありませんでした。国内の一般層に向けて企画したものではなく、ヘリコプターの使用料など単純に積算したら400万円になった。販売延長にあたり、紅葉の時期ではなくなったのでヘリコプターのランクを落としたり、ディナーをランチに変更したら290万円に値下がりしました。金額的には間違っていなかったと思っていますし、県がツアーで利益を上げるわけではありません。県としては訪日客に紅葉を見てもらいたかったのですが……」(県観光交流課担当者)

ではなぜアテが外れたのか。

「プロモーション期間が短かったのと、ターゲットとなる富裕者層に届かなかった。ガチガチのスケジュールではなく、もっと柔軟性をもたせるべきでした。『日本的な宿がいい』といった意見もありました。富裕層は自由に動きたいでしょうから、固まったパッケージを押し付けてしまったのかもしれません。国の事業ということで新しいコンテンツをつくるのが条件だったためで、こうなってしまった。ヘリコプターや登録有形文化財を活用するノウハウができたので、今後は旅行会社にアドバイスするなどして、オーダーメード式のオプショナルツアーを展開できるようサポートしていきたい」(前出の担当者)

国内の高級外資系ホテルなら、1泊300万円以上のスイートルームなんてザラにある。思い入れが強すぎた分、目玉をてんこ盛りにし過ぎ、かえって敬遠されてしまったようだ。

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