入院患者117人の大移動に密着 仙台厚生病院移転の舞台裏〈仙台市〉

5月7日の外来診療開始に先立って、先週には、入院患者117人を一日がかりで新病院に移す引っ越しが行われていました。ゴールデンウィークを返上して行われた患者の大移動の舞台裏に密着しました。

先週木曜日(5月2日)。引っ越しを翌日に控え、最後の話し合いが行われていました。最大のミッションは入院患者117人全員を何事もなく無事、新病院に移すこと。

スタッフ
「今回重症の患者は午前で約15人を移送する計画です」

中でも、最も神経を使うのが、ICU=集中治療室に入院している重症患者です。

仙台厚生病院 山内淳一郎院長
「心臓を専門にやっている病院なので、重症の患者が多く、いろいろな機械がついている。それをうまく移送していくのが、やはり気を遣うところ」

計画通りに進めれば、安全に引っ越しできることは確認していますが、初めての経験だけに、万が一の事態も考え、医療機器の半分を最新のものに更新して、万全を期したといいます。

仙台厚生病院 山内淳一郎院長
「みんな経験のないことなので、やってみなくちゃわからないというのが正直なところだけど、みんな力を合わせてやれば、なんとかなるのではないのかなと思っています」

迎えた引っ越し当日。午前8時前から旧病院の前に並んでいたのは患者を運ぶための救急車や福祉車両など合わせて15台。重症患者、一般病棟の歩けない患者、自分で歩ける患者、それぞれを同時並行で新病院に運ぶ計画です。

病院側のスタッフは総勢279人。送り出す側と新病院で受ける側、分刻みで計画されたスケジュール通りに患者を運ぶため全員がそれぞれの持ち場で最終確認を行います。

仙台厚生病院 目黒泰一郎理事長
「患者さんの安全第一に急がず、焦らず粛々と作業を進めてください。患者さんも広くて綺麗な新病院に行くと元気がでると思います。それを想像しながら、きょうは頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします」

そして午前9時。

仙台厚生病院 山内淳一郎院長
「移送本部の山内です。移送開始します。よろしくお願いします」

山内院長の号令で、患者117人の大移動が始まりました。

スタッフ
「ベッドに移りますね。はいせーの!」

重症の患者は酸素の吸入や点滴など医療機器をつけたまま、細心の注意を払って移動します。

スタッフ
「良いですね、行きまーす。ゆっくりね、ゆっくり…」

移動は青葉区広瀬町から堤通雨宮町の1.6キロ。車で10分弱の距離ですが、慎重に慎重を重ね、全員の移動には、およそ7時間が見込まれています。

順調に引っ越しが進む中、玄関付近にいた山内院長とスタッフが慌てた様子に。予定時間を過ぎても患者が運ばれてこないのです。院長が様子を見に行こうとエレベーターに乗った、その時でした。

仙台厚生病院 山内淳一郎院長
「あっ、来た来た!」

無線の不調によって連絡が滞ったことが原因と分かりましたが、わずかな情報伝達のミスも大事に繋がりかねないため、緊張が走りました。

歩ける患者はまとまってマイクロバスで移動します。4月から入院している大井富雄さん(75)。内臓の病気で手術をしたといいます。車中で新病院への期待感を話しました。

4月から入院中 大井富雄さん(75)
Q. 新病院はどうですか?
「まるっきり新しいところですよね。ワクワク感が一番かな」

出発から10分弱で到着。

スタッフ
「体調悪くないですか?」

新たな病院に驚いた様子です。

4月から入院中 大井富雄さん(75)
「もうエントランスなんかもホテルだよね。すごいなほんとに…」

早ければあと数日で退院できるという大井さんですが、思わずこんな言葉が。

4月から入院中 大井富雄さん(75)
「とにかく便利だ。もうちょっといたいような(笑)」

午後3時過ぎ、最後の患者が新しい病棟に入り、全員の引っ越しが無事完了しました。開始から6時間余り、予定より1時間ほど早い終了です。

仙台厚生病院 山内淳一郎院長
「とりあえずホッとしました。動いてくれるかどうか心配なので、これから新病院に行きたいと思います。職員がとても一生懸命やってくれて力を発揮してくれたかなと思います。また次のステップに進んでいきたいと思っています」

病院移転の最大のミッションを無事に終え、新たな病院での日々が始まりました。

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