コンビニ大手3社 店舗・宅配でデジタル強化 機会ロスや人時削減で利益最大化

コンビニ大手3社の24年度(2月期)業績は別表の通り。人流回復や円安を背景としたインバウンド需要、好天候や行楽需要で飲料・FF(ファストフード)などの売上が伸長したことなどが追い風となり、いずれも過去最高益を達成した。

24年度は各社、デジタル施策を強化することで利益の最大化を図る。

具体的な取り組みとして、店舗とアプリ在庫連携によるデリバリー強化、AI自動発注システムによる従業員の負担軽減、生産性向上・機会ロス削減などを行う。

ローソンはこの4月から、デリバリー商品の店舗在庫を「Uber Eats」などのアプリと自動連携するシステムを開始した。これにより「2~3割あった」欠品が基本的になくなるため、5月からデリバリー対象商品を700品目から3千品目に拡大し、積極的な販促活動も行う。人流や天候に左右されないローソンの日常利用を促す。「雨が降る日も風が吹く日も食事を取り、洗濯をし、化粧もして衣服を身に着ける。こうした日常から出てくる需要をローソンに取り込む」(竹増貞信社長)。

セブン-イレブン・ジャパンの宅配サービス「7NOW」は、約1万2千店に拡大した。同社も店舗と自社アプリの在庫連携で「注文した商品が欠品して届かないということが基本的に起こらない。日本でこうしたシステムをこの規模で活用している企業は、私が知っている限りはない」(永松文彦社長)と自信をみせる。

今後は、北米CVS事業を担うセブン-イレブン・インク(SEI)と連携し「7NOWアプリ」の機能向上を図るとともに、袋詰めなどの店舗オペレーションや配送面も強化する。

デリバリー事業に参入せず、リアル店舗で独自のデジタル施策に力を入れているのがファミリーマートだ。約1万店舗に設置が拡大したデジタルサイネージでは、情報番組や店頭に並ぶ商品のPRなど24時間配信している。「今後は地方のテレビ局やラジオ局など他社メディアと連携し、より特徴を持ったリテールメディアを展開したい」(細見研介社長)と意欲を示す。

新たなAIシステムの運用も開始する。

ローソンは5月から次世代発注システム「AICO(アイコ)」を全国に本格導入する。店舗ごとに天候や販売実績データをもとにした商品別の需要予測を行い、より精度の高い「発注数の推奨」「値引きの推奨」が可能となる。「AICOをアルゴリズムの中心に置くことで店利益を最大化する」(竹増社長)。

ファミリーマートは、店舗業務支援システム(ストアコントローラー)を刷新し、全店に導入完了した。発注や在庫に関する参照機能を強化したほか、手順の簡略化・自動化で業務時間の削減につなげる。店長業務を支援する人型AIアシスタントの導入も5千店舗を超えた。「物流コスト低減や発注コンサルティング、掃除や商品陳列までの幅広い領域でデジタル活用が実用フェーズに入った」(細見社長)。

セブン-イレブンもIT・DXの活用で加盟店の売上・利益に貢献する。この4年間で加盟店の最低時給は11%程度上昇したが、会計セルフレジ、新検品システム、AI発注などで人時の削減を行った結果、人件費は5%強の上昇にとどまっている。

新たに導入した次世代発注システムでは、店頭商品を選択するとYouTubeやX、Instagramなどで今話題になっている「タグ情報」とこれを踏まえた発注数量が示される。

「DXは同じ作業でも短時間で済む施策を進めている。AI発注は仮説を立て発注しやすい仕組みを取り入れており、今後は発注精度を一層向上させて機会ロス削減につなげる」(永松社長)。

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