お墓の〝マンション〟ガラガラ「個別安置室」年間申請1割足らず 市は制度改善へ

遺骨を個別に納めるために設けた個別安置室(京都府宇治市提供)

 京都府宇治市が2021年に宇治市天ケ瀬墓地公園(宇治)内に造った合葬式墓地のうち、「個別安置室」の利用が伸び悩んでいる。最初から遺骨を合葬することに抵抗がある人向けに一定期間は個別に埋蔵(安置)しておくための施設で、1500体分を整備したが、これまでの申請数は12件にとどまる。市民らの意見を踏まえ、市は利用しやすいよう一部制度を見直す方針だ。

 合葬式墓地は、核家族化や少子化などが進む中、墓の維持管理や経済面の負担低減を求めるニーズに応えようと、約1億5千万円をかけて整備した。

 施設は延べ床面積約122平方メートルのコンクリート製平屋で、遺骨9千体を埋蔵できる。利用できるのは遺骨を所有している親族か、将来的に埋蔵を希望する65歳以上の本人。居住地は問わないが、使用料は市民の方が割安に設定している。

 9千体のうち7500体が、複数の遺骨を合同で埋蔵する合葬室だ。申請数は21年度163件、22年度99件、23年度(1月末まで)96件で、「当初の見込み通りの好反応」(市環境企画課)という。

 一方、個別安置室の申請数は年間50件弱を見積もったが、3年間で計12件と遠く及んでいない。なぜこれほど低調なのか―。

 個別安置室は、一定期間(10年間か20年間の選択制)は遺骨を個別に埋蔵した後、合葬室へ移動させる仕組みだ。「家族としてはいきなり合葬するのはしのびない」「しばらくは夫婦2人だけで安置してほしい」といった声を想定し、他市の先行実績も踏まえ設けたという。

 だが、合葬室と比べ使用料が倍以上かかる。同課は「費用負担に対する考え方など、この数年でお墓に対するニーズが変化してきているのが低調の原因ではないか」とみる。

 制度上の問題もある。現在、個別安置室の利用期間は申請手続きを終えた「許可日」から開始し、選択した期間(10年間か20年間)で終了する。これだと本人が生前に予約した場合、亡くなる前に利用期間が終わってしまう可能性がある。

 利用者などから「仕組みを改善してほしい」といった声があったという。このため、開始日を「安置した日」に変更し、確実に遺骨を納められるよう改める。関連する条例改正案を市議会3月定例会に提出し、可決した。

 宇治市は「魅力ある施設に感じてもらえるよう、今後は個別安置室のメリットなどをアピールしていきたい」としている。

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