ビエラがFire TVに。第二世代マイクロレンズ有機ELで輝度マックス「Z95A」

by 阿部邦弘

パナソニックは、最新世代の高輝度パネル「マイクロレンズ有機EL」(MLA-OLED)を搭載した4Kビエラ「Z95A」シリーズを、6月21日より発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は、65型「TV-65Z95A」が52万円前後、55型「TV-55Z95A」が37万円前後。

パナソニックとAmazonがビエラ用にカスタムチューンしたFire TV OSを採用する、4K有機ELビエラ。輝度性能を高めた最新世代のパネルと発光性能を引き出す制御技術により、ピーク輝度とコントラストを最大化。さらに、高性能なプロセッサーを駆使したデュアル超解像技術や、ネット動画向けのノイズリダクション技術を導入。フラッグシップモデルに相応しい、トップクラスの画質性能を目指した。

65型4K有機ELビエラ「TV-65Z95A」

なお、同日発表のハイクラス有機ELビエラ「Z90A」、および48・42型サイズのスタンダード有機ELビエラ「Z85A」シリーズ、液晶ビエラ「W95A」シリーズなどは別記事で紹介している。

ビエラ仕様のFire TVに。OS変わっても独自機能そのまま

2024年ビエラ最大の変更点が、テレビOSの刷新。

これまでビエラは、他社がGoogle TVなどのOSを採用するなか、テレビ機能とネット動画サービスを融合させた独自OSを継承してきた。しかし、NetflixやPrime Video、Disney+、Apple TV+などの主要な動画配信サービスをサポートする一方、Leminoなどの新しいアプリや音楽サブスクサービスに対してはサポートできていなかった。

そこで今回、ビエラは新しいアプリやサービスへの対応をより柔軟に行なうべく、スティック型ストリーミングメディアプレーヤー等で高いシェアを持つAmazon「Fire TV OS」へ変更。従来30種類程度だった対応アプリ数を大幅に増加させると共に、ネット動画やサービスを横断して選べるホーム画面と、サクサクと快適に操作できるレスポンス性を実現した。

実際のホーム画面

さらに、Amazonとの全面協力により、ビエラ専用にメニューをカスタムチューン。ネット動画が混在するメイン画面に、現在放送中のテレビ番組(地上・BS・CS)を表示することで、番組とネット動画を“チャンネルを切り替える感覚”で変更できるようになった。

従来ビエラで実現していた独自機能の継承もポイント。例えば、テレビ番組表に配信番組を表示する機能や別部屋のビエラ/ディーガ内の録画番組を視聴・転送する「お部屋ジャンプリンク」(4K含む)、録画番組を外出先からスマホ視聴する「Media Access」、全自動ディーガと連携した「過去未来番組表」、「2画面表示」なども、新しいモデルで楽しめる。

実は、OS変更直後のモデルは“従来できていた独自機能ができなくなる”というパターンが少なくない。パナソニックの関係者は、独自機能の継承について「Amazonとの全面協力の成果の1つ」と強調。「なぜOSにFire TVなのか? 対応するアプリや使いやすいUIなどFire TVそのものの魅力はもちろんだが、ビエラの独自機能もしっかり組み込めるよう、OS層までカスタマイズできる協力関係を築けたことも大きい」と話す。

EPG画面も従来とほぼ変わらない

Fire TVになったことで、ネットワークを使った機器連携も拡張された。エアコンや見守りカメラなどのAlexa対応機器をビエラから音声で操作したり、AndroidスマホやWindows PCの画面をビエラにミラーリングしたり、ビエラにUSBカメラを接続してビデオ通話する等のネットワーク連携が可能になった。

最新のMLA-OLEDパネル。パネル制御もアップデート

Z95Aは、'23年発売のフラッグシップ「MZ2500」で初採用した“マイクロレンズ有機ELパネル(MLA-OLED)”と、バックカバー一体型放熱プレートおよび放熱シートを組み合わせた放熱構造の独自ディスプレイを搭載。

55型4K有機ELビエラ「TV-55Z95A」

MLA-OLEDは、1画素あたり数千個のレンズが並ぶマイクロレンズアレイと発光層を一体成型することで光の取り出し効率を劇的に向上させた新パネルだが、Z95Aでは、更に効率を高めた最新世代のものを採用しているという。

前モデルから進化したのが、パネルの発光性能をコントロールする技術「Bright Booster」。

これまでは3次元映像信号解析と温度センサーでパネルの発光状態を画素ごとに管理してきたが、新たに、パネルの発光性能をリアルタイムに解析する仕組みを追加。その解析結果も制御に反映し、独自の電流制御アルゴリズムでパネルを駆動することで、パネルの発光性能を一段と高めることができるようになった。なお、このパネル制御技術は、下位モデルの「Z90A」シリーズにも搭載している。

MZ2500(右)とA95Zの比較。新モデルは、ピーク輝度が更に伸び、コントラストもやや強くなった

処理性能を高めた「新世代AI高画質エンジン」を新搭載。従来の高画質処理を継承しながら、新開発の技術が追加された。

その一つが「デュアル超解像」。これは、従来行なってきた“数理モデル3次元超解像”と、今回から新たに加わる“AI超解像”をミックスさせたもの。自然なアップコン処理と、AIによる強力かつ高精細なアップコン処理の割合を、素材に応じてコントロールすることで、従来の超解像を上回る解像感とリアルさを実現。地デジ放送やネット動画などが、よりキレイに楽しめるという。

ネット動画で目立ちがちな、バンディングノイズも新エンジンで処理。等高線のような、縞模様上のノイズが目立ちにくくなり、精細感もキープできるようにした。

新世代AI高画質エンジン
デュアル超解像
ネット動画ノイズリダクション

映像モードは、フィルムシネマが「FILMMAKER MODE」へと変更。“映画監督をはじめとした映像制作者の意図した映像を忠実に再現すること”を目的に、UHDアライアンスが開発したモードとなっており、同モードを選択すると、色温度がD65に固定され、フレーム補間やNRなどの映像処理が行なえなくなる。

また、室内環境に応じて自動的にドルビービジョンの画質を最適化する「Dolby Vision IQ」の新機能“Precision Derail”もサポートした。

ビエラ初搭載の「FILMMAKER MODE」

100万を超える映像のシーンから構成される学習用データベースを基に、ディープラーニングを活用してAIが学習し、生成したシーン認識アルゴリズムからシーンに最適な画質・音質処理を施す「オートAI」機能も引き続き搭載する。

4K144Hzをサポート。DVゲームも最大144Hzに

HDMIのスペックもアップデート。従来の4K/120pから、最大4K/144pまでの高リフレッシュレート信号の入力に対応した。4K/144Hz対応の最新PCゲーム・グラフィックボードを接続すれば、滑らかでチラつきのない高精細映像が楽しめる。Dolby Visionゲームに関しても、従来の60Hz対応から、144Hzまでの対応に拡張されている。なお、4K/144Hz入力は、HDMI 4ポートのうち2ポートのみ対応となる。

ゲーム画面を表示しながら、画質などの設定を呼び出せる専用メニュー「ゲームコントロールボード」は、UIをリニューアル。倍速モード等の全項目が1画面内に収まるようにサイズ調整され、一覧性が向上。AMDなど、認証グラフィックボードのアイコンも表示できるようになった。

また、暗部をより沈める暗部視認性調整を追加。これまではFPSなどで敵が発見しやすいように“暗部を持ち上げる”調整しかできなかったが、グラフィックが作り込まれたRPGなどは、暗部を沈めてダークに演出することでゲームへの没入感を高める効果があるという。

ゲームコントロールボード

サウンドシステムは、MZ2500と同様の「360立体音響サウンドシステム+」を搭載。

“解像感の高いクリアな音”と“大口径のスピーカーユニットを搭載したオーディオ機器のような厚みのある音”を目指した独自のラインアレイスピーカーと、高さ方向の音を再現するイネーブルドスピーカー、水平方向の音の広がりを強化するワイドスピーカーで臨場感あるサウンドを再現した。出力は65型で160W、55型で150W。

立体音響のDolby Atmosも対応しており、最新の音声処理システムを搭載により、テレビ本体のスピーカーのみで立体音響を再生可能。新たにアプリ対応するSpotifyなどのサブスクはもちろん、Amazon MusicであればAtmosコンテンツも楽しめる。

360立体音響サウンドシステム+
リモコン

チューナーは、BS4K・110度CS4Kチューナー×2、地上/BS・110度CSチューナー×3を搭載。別売のHDDを接続する事で裏番組録画ができるほか、2K+2K放送や4K+2K放送、4K+4K放送の2番組同時録画も行なえる。

ビエラの強みを磨き上げつつ、Fire TVでテレビの新しい体験価値を提供する

発表会には、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 ビジュアル・サウンドビジネスユニット商品企画部 部長の末永誠氏が登壇し、市場背景や新製品の狙い、Amazonとの協業等について説明が行なわれた。

パナソニックによれば、テレビのネット接続・ネット動画利用はコロナで急激に伸長。2023年時点で、ネット接続率は82%、動画配信サービスの利用率は50%を超えており、新規アプリへの迅速が対応が重要になってきているという。

そして、「ビエラは2008年の世界初YouTube対応テレビ発売を皮切りに、テレビ放送とネット動画の融合・シームレス化に取り組んできたが、テレビの使い方の多様化が急速に進む現状を踏まえ、コンテンツを単に視聴するというデバイスを超え、変化に備えるための先駆けた革新が必要だ」と判断。「ビエラの進化を加速させるべく、Amazonと全面協力し、Fire TVを6シリーズ13機種に導入。ビエラの強みを磨き上げつつ、Fire TVを活用することでテレビの新しい体験価値を提供していきたい」と、Fire TV導入の狙いを語った。

写真左から、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 ビジュアル・サウンドビジネスユニット商品企画部 部長の末永誠氏、アマゾンジャパン合同会社 Amazonデバイス Fire TV事業部 事業部長の西端明彦氏

アマゾンジャパン合同会社 Amazonデバイス Fire TV事業部 事業部長の西端明彦氏は、ビエラとのコラボについて、「Amazonは“世界において真に革新的なテレビを提供していく”というビジョンを持っており、パナソニックとは“最高のハードウェア、そしてソフトウェアを使い、高品質で革新的なスマートテレビを届ける”というミッションのもと協業してきた」とコメント。

そして、「すでにヨーロッパではFire TV搭載のパナソニックテレビを導入しており、お客様から好評をいただいている。この度、日本においてもFire TV搭載モデルを提供できることになり、我々としても非常に嬉しく思っている」と言葉を寄せた。

© 株式会社インプレス