2024年のメットガラMVPは? ゼンデイヤ、エル・ファニングらが豪華ドレスで登場

アメリカ現地時間5月6日、今年もファッションの祭典メットガラ(MET GALA)が開催された。メットガラとは、毎年5月の第1月曜日にメトロポリタン美術館で開催される、ファッションにまつわる展示会のオープニングとチャリティを兼ねたイベントだ。毎年セレブや有名デザイナーらが、展示会にまつわるドレスコードの豪華衣装でレッドカーペットに姿を見せることから、ファッションのアカデミー賞とも言われている。

今年は5月10日から開催される特別展「Sleeping Beauties: Reawakening Fashion(眠れる美:再び目覚めるファッション)」に合わせ、展示会の着想元となったJ・G・バラードの小説『The Garden of Time(時間の庭)』がドレスコードとなった。特別展では、クリスチャン・ディオールやエルザ・スキャパレリ、イヴ・サン・ローランなどが手掛けた、2度と着ることができないほど繊細な、そして歴史的価値のある衣装250点が展示される。メットガラの衣装はいかにテーマに添った、そしてセンスのある装いができるか、セレブたちのファッションの力量が試される場でもある。

今回はそのテーマから、花をはじめとする植物のモチーフを取り入れたセレブが多かった。また、昨今セレブの間で流行中のシースルードレスも依然として人気だ。米VOGUE編集長のアナ・ウィンターとともに共同ホストを務めたジェニファー・ロペスや、『パスト・ライブス/再会』(2023年)で注目を集めたグレタ・リー、エミリー・ラタコウスキーらが、その美しいボディラインを繊細なドレスで飾ってみせた。

セレブたちが渾身のファッションで着飾るなか、特に話題を集めたのは、こちらも共同ホストを務めたゼンデイヤだ。ファッションアイコンとしても知られる彼女が着用したのは、ジョン・ガリアーノが特別に制作したクチュール。濃いブルーとグリーンの光沢感のあるコルセットと、バイアスカットのドレスの組み合わせが印象的だ。孔雀のようでもあり、肩や腰に飾られた花やぶどうのような果実から、植物のようでもある不思議な妖艶さを放っていた。

しかも彼女は衣装チェンジをし、2着目のドレスを披露。こちらは約30年前にジバンシィ(GIVENCHY)のデザイナーを務めていたガリアーノによる黒のボールガウン。1着目とは打って変わってシックな雰囲気ながら、巨大な花束のようなヘッドピースが華やかさを添えている。

植物以外の自然をモチーフにした装いでは、アーティストのタイラの砂のドレスも注目を集めた。こちらはバルマン(BALMAIN)のドレスで、ブランド独自のアップリケ技法で彼女自身の身体を石膏で型取り、生地をプレスして砂やクリスタルのスタッズをあしらったものだという。砂時計をイメージしたこのドレスは、上品な佇まいがひときわ目を引いた。

マザーオブパールの虹色にインスピレーションを得たロエベ(LOEWE)のカスタムドレスで来場したのは、アリアナ・グランデ。貝殻の模様をハンドペイントしたビスチェに、シルクシフォンのプリーツスカートをあわせ、イノセントなコーディネートに仕上げている。

女性の装いはなにもフェミニンなドレスだけではない。アリアナ・グランデとミュージカル映画『Wicked(原題)』(第1部が11月27日に全米公開予定)で共演するシンシア・エリヴォは、トム・ブラウン(THOM BROWNE)のビーズ刺繍が施されたクロップド丈のタキシードジャケットに、ロングの巻きスカートをコーディネート。どちらもピンクの花びらが散りばめられ、凛としたなかにも華やかな存在感を際立たせていた。

一方、カップルで来場するセレブも多く、その場合、2人のコーディネートのリンクにも注目が集まる。エディ・レッドメインと妻のハンナ・バグショーは、スティーブ オー スミス(STEVE O SMITH)のシースルー地に黒のパターンが印象的なドレスとタキシードをあわせ、2人で1つのようなスタイリングが素晴らしい。

これら数々の華やかな装いの中でもMVPといえるのは、やはりエル・ファニングではないだろうか。彼女が着用した水のようなだまし絵のドレスはバルマンによるもので、適度なシアー感がありながら下品にならず、むしろ彼女の妖精のような可憐さを引き出していた。両肩のドレスを引き上げるような鳥のデザインや、あえて手元だけにとどめたジュエリー、肌の濡れたようなツヤまで完璧なスタイリングだった。

このようにセレブがひときわ気合を入れた装いで来場するメットガラでは、ほかのアワードなどのイベント以上に彼らのセンスが試される。映画ファンだけではなく、ファッション通も注目するメットガラ。ここで紹介した以外のセレブの装いを探してみるのも楽しいだろう。

余談ではあるが、筆者が個人的に注目したのはマイケル・シャノンだ。アンティーク調のタキシードに、手にはポテトチップス? かと思いきや、こちらはれっきとしたバレンシアガ(Balenciaga)による「Chips バッグ」。セレブのこうした遊び心が垣間見えるのも、メットガラの楽しみのひとつだ。
(文=瀧川かおり)

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