年金月額が「15万円」の祖父が、訪問するたびに「5万円」くれます。年金暮らしなのに無理させていませんか……?

15万円のうち5万円と考えるとその額は非常に高い

単純に「年金月額15万円のうちの5万円」と考えると、その金額は非常に大きいものです。しかし、「訪問の都度5万円を渡している」という点に着目すると、高額であることに変わりなくとも、無理のない範囲で渡せる可能性のある金額でもあります。

例えば年1回から2回、年末年始や夏季休暇中に訪問し、そのときに5万円ずつ、最大で合計10万円を1年間で祖父から受け取る例で考えてみましょう。この場合、祖父がくれたお金は月額換算で8400円ほどです。決して安い金額ではありませんが、渡すことが不可能といえるだけの負担感ではないでしょう。

とはいえ、月額換算15万円の年金から、毎月1万円近い支出があるため、祖父にとってそれなりの負担となっていることは間違いありません。

他に資産や収入があれば状況は異なる

人の収入や資産は、年金以外にも考えられます。このケースにおける祖父は、孫が訪問する度に5万円もくれていますが、可能性としては、年金の外にも収入や資産を有していてもおかしくありません。

例えば、老後資金を孫へのお小遣い込みで数千万円も蓄えていたり、保有している株の配当をお小遣いとして渡していたりするなど、可能性は多岐にわたります。また、祖父が時折心身の健康増進や気分転換を兼ねて働いて、そのときのお金の一部を孫へのお小遣いにしている可能性もあるでしょう。

いずれにせよ、月額換算15万円の年金以外に収入のない方が、訪問の都度5万円も渡すのは容易ではありません。現実的には、「他に資産や収入がある」と考えるべきでしょう。

生前贈与で節税を図っている可能性もある

余談になりますが、孫が月1回など高頻度で訪れているにもかかわらず、祖父が訪問の度に5万円も渡す、というのであれば、それは相続税の節税を図っている可能性があります。

相続税は相続財産のうち、(3000万円+法定相続人の数)×600万円を超えた部分にかかります。そのため生前に孫や子に財産を渡し、相続財産を非課税額の範囲内に収めるため、訪問の度に5万円を渡している可能性があります。

また、受け手の受け取った贈与額が年間総額110万円までの範囲であれば、贈与税はかかりません。祖父としては相続税を節税し、かつ、お金を渡したい孫に非課税で財産を渡すことができる点で、大きなメリットがあります。

また、「死ぬ7年前の生前贈与までは、相続財産に組み入れられる」という改正が直近なされました。それもあり、早めに相続税対策に着手しようとして、訪問の度に5万円を渡している可能性も考えられます。

まとめ

「年金が月額換算で15万円の祖父から、訪問の度に5万円のお小遣いを受け取っている」というと、一見無理をしているようにも見えるかもしれません。しかし頻度などによっては、他に収入や十分な資産をひっそりと有している可能性がありますし、もしかすると相続税対策をしているのかもしれません。

もし気になるのであれば、一度それが負担でないか直接祖父に確認したり、両親や親せきに相談したりしてみてはいかがでしょうか。

執筆者:柘植輝
行政書士

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