史上最少僅差0.001秒決着! カイル・ラーソンが「ワイルドなフィニッシュ」で2勝目/NASCAR第12戦

 カンザス・スピードウェイで開催された2024年NASCARカップシリーズ第12戦『アドベントヘルス400』は、ハイスピードカメラによる史上最小僅差の“フォトフィニッシュ”決着となり、クリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)を0.001秒差で撃破したカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が今季2勝目、キャリア通算25勝目を手にしている。

 カンザス州に位置するミドルバンクの1.5マイル(約2.4km)オーバルは、過去4戦をいずれもトヨタ陣営が制するなど、先代カムリが得意中の得意とするトラックとなってきた。それを反映するかのように、新型カムリXSEでの勝負となった今回も、フリープラクティス(FP)は昨年秋の勝者タイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が、続く予選ではクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が今季初、同地3回目のポールウイナーを射止めてみせる。

「このNext-Gen規定の導入以来、インターミディエイトでの予選はチーム全体にとって本当に本当に良い結果をもたらしてきた」と、これがキャリア通算11回目のポールポジションとなったベル。

「今言えるのは、僕はスロットルを床まで踏みつけて決して離さない、この瞬間のために生きている……ということ。予選前にはライバルのオフスロットル期間の長さについて、僕がどれほど当惑しているかについて話していたんだ。結果は確信していたし、僕が期待していたもの以上の成果があったね」

 明けた決勝はステージ1、ステージ2ともにノーコーションで進む静寂の展開となり、序盤こそ43周のリードラップを刻んだロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)がレースを掻き回したが、カムリXSEのレースペースを活かした前戦勝者デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が14番手スタートから浮上し、最初のステージウインを獲得していく。

予選ではクリストファー・ベル(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリXSE)が今季初、同地3回目のポールウイナーを射止めてみせる
前戦勝者デニー・ハムリン(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリXSE)が14番手スタートから浮上し、最初のステージウインを獲得していく

 さらにマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)を加えたトヨタ艦隊に対し、終始対抗したラーソンやチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)、アレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を含めたHMS艦隊が喰い下がり、フォード陣営からはブッシャーが奮闘を見せステージ2を制覇していく。

 迎えた最終ステージではこれまでと様相が一変し、ジミー・ジョンソン(レガシー・モーター・クラブ/トヨタ・カムリXSE)のアクシデントを皮切りにいくつかのコーションが発生。オースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)らもダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)に撃墜され戦列を離れることに。

 都合5回発生したイエローの最後となったのは、終盤にはリードラップも記録していた前戦ポールシッターのカイル・ブッシュ(Richard Childress Racing/シボレー・カマロ)を起因とするもので、5番手を走行中のターン2で姿勢を乱しドリフト状態に陥ると、これが延長戦突入の合図となる。

 この時点でトラック上では首位ハムリンが僚友トゥルーエクスJr.とラーソンをリードしており、ブッシャーを含む6名がピットロードで“2タイヤ”を選択。しかしトゥルーエクスJr.だけが“4タイヤ”とし、10番手でピットレーンを後にする。

 援軍がいなくなったハムリンはブッシャーと、その背後ではラーソンとエリオットが並んで最後のリスタートを迎える。ここで蹴り出しに勝ったブッシャーがリードを奪い、ボトムへ飛び込んで3ワイドを制したラーソンの背後には、新品のグリップで脅威の挽回を見せたトゥルーエクスJr.が急浮上してくる。

 ホワイトフラッグ突入のターン3~4でブッシャーのアウトサイド、ハイラインに振ったラーソンに対し、フォードの17号車はラインを狭めて牽制。エプロンへ降りながらゴールラインへ逃げようとするブッシャーに対し、報復とばかりに追い掛けたシボレーの5号車が、ドアをぶつけるアクションで横並びのままフィニッシュへ……。

 勝利を確信して歓喜に沸くブッシャーのピットとクルーだったが、写真判定の結果ビクトリーレーンにマシンを進めたのは、肉弾戦を制したラーソンの方だった。

前戦ポールシッターのカイル・ブッシュ(Richard Childress Racing/シボレー・カマロ)が延長戦の起因に
ブッシャーを含む6名がピットロードで”2タイヤ”を選択。しかしトゥルーエクスJr.だけが”4タイヤ”とし、10番手でピットレーンを後にする

■「今はただ胸が痛い」と最小僅差の敗者側に立ったブッシャー

「分からなかったが、それはワイルドだったね」と誰がレースに勝ったのかが最後まで不明の状態の0.001秒差決着を勝ち獲ったラーソン。

「最後のコーションに対して僕らは全員、明らかに感謝していた。タイヤはひどい状態だったからね。ピットを3番手で出られてうれしかったし、リスタート後のベストショットはボトムを選択して3ワイドでインサイドに飛び込むことだと考えた」と続けるラーソン。

「それもうまくいったね。僕のクルマは良く曲がり、バックストレッチを本当にうまく抜けてクリス(・ブッシャー)を大きく牽引し、トップに立って全開のまま彼を斜めに進入させることができた」

「逃げ切れるかどうかはよくわからなかったがミドルで非常にルーズになり、彼がサイドドラフトできる位置まで彼の前に行きすぎないよう注意しつつ、僕はただ彼のランを殺そうとしていた。まさにクレイジーだ。燃料戦略とタイヤのロングランなど、最後のステージ全体がワイルドだったし、このショーに参加できたことを誇りに思うよ」

 一方、カップ歴代新記録となる最小僅差の敗者側に立ったブッシャーは「今は何を言えばいいのか分からない。こんな近くで負けるのは最悪だ」と肩を落とした。

「写真以外のリプレイは見たことがないし、確かに写真以外で確認のしようがない差だ。この日は僕らにとって素晴らしい仕上がりで、マスタングは本当に速くて力強かった。勝利が必要だったし、勝てたかもしれないと思ったんだ」と54周をリードしたブッシャー。

「良い戦略を持っていて、できる限りのことをカバーしようとしたが、彼(ラーソン)にハーフレーンを与え過ぎたんだと思う。ああ、ラインまでの厳しいレースだ。うん、今はただ胸が痛いよ……」

 併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第8戦『ハート・オブ・アメリカ200』は、終盤を支配したコーリー・ハイム(トライコン・ガレージ/トヨタ・タンドラTRD-Pro)が、134周中70周目にニック・サンチェス(レブ・レーシング/シボレー・シルバラードRST)からリードを奪い今季2勝目。これが2戦目となった豪州大陸RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップのスター、キャメロン・ウォーターズ(ソースポーツ・レーシング/フォードF-150)は19位で完走を果たしている。

「最後のステージ全体がワイルドだったし、このショーに参加できたことを誇りに思うよ」と勝者カイル・ラーソン
NASCAR CRAFTSMAN Truck Series第8戦『Heart of America 200』は、終盤を支配したコーリー・ハイム(Tricon Garage/トヨタ・タンドラTRD-Pro)が今季2勝目を飾った

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