就任1年、丸谷聡子・明石市長「競争じゃなく“共創”元年」市民と対話、すればするほど…課題クリアに

就任から1年を振り返る丸谷聡子・明石市長<2024年5月7日 明石市役所>

就任から1年を迎えた兵庫県明石市の丸谷聡子市長が7日の会見で、「共創元年」をテーマに掲げた。

泉房穂・前市長の後継として指名され、昨年(2023年)4月の市長選で初当選した丸谷市長は、「子どもを核にした街づくり」「SDGs未来都市」など、泉房穂前市長の打ち出した路線を継承している。

泉氏と比較されることもあったが、「是々非々の立場を貫く」という姿勢を崩さなかった。

【画像】丸谷聡子・明石市長の1年

泉氏は現在、各メディアを通じてさまざまな意見を発信しているが、退任時に「私は今後の明石市政に口出しはしない」と述べており、丸谷市長も「泉前市長が作った土台に乗るだけでなく、今まで足りなかった部分を補うために、この1年取り組んできた。(泉氏と)連絡を取り、意見交換や相談することはない」と述べ、丸谷市政としてのスタンスを強調した。

そのうえで「明石市民30万6千人の幸せとは何かを考え、市長が誰であっても市政を先送りせず、最善の方向を見出している。この1年の点数は市民の皆さんが決めること。私自身、毎日毎日全力でやってきたのは間違いない」と振り返った。

職員に対しては、トップダウンから”ボトムアップ”方式の組織づくりや、「上からの目線ではなく、市民の目線を“ものさし”にした街づくり」という判断基準の徹底などに努めた。さらに「社会課題の解決には、インクルーシブに、ともに学びながら知恵を寄せ合う新しいリーダーシップのあり方が大切だ」とした。

就任直後には「市民とつながる課」を立ち上げ、毎月1回のタウンミーティングを通して市民と対話し、情報を共有する体制を作った。13回開催し、のべ703人が参加した(2023年5月~2024年4月 ※ただし2023年8月は2回開催)。

高齢者、障がい者、子育て世代といった幅広いジャンルで募り、子ども会議・若者会議など年代別のミーティングを経て現在は地域別で行っている。地域ごとに抱える課題は千差万別。「どう解決するかに(自身の)真価が問われる」と決意を新たにした。

このほか、「ごみ減量化」をテーマとした回については、市役所内の担当課からの要望が叶って実現。紙回収専用のリサイクルボックス設置につながり、ボトムアップの一端を示した。

そして、市民から幅広く困りごとや改善点などを募るため、市内12か所に設置した「市長へのおてがみ まるちゃんポスト」には1776件(2023年5月1日~2024年5月2日)の投函があった。

このうち約2割の376件が教育や子育てに関することだったという。市長へのメッセージや、市職員への感謝の言葉が添えられたものもあった。

これらの取り組みを通じて、「市民の皆さんと対話をすればするほど、課題やニーズをよりクリアに把握することができた」と手ごたえを感じたという。こうしたことから、「(産官学、そして民との)共創元年として長期総合政策『SDGs未来安全都市明石』を作り上げる。それぞれの立場で居場所を大切にして、誰ひとり取り残さない」と新たな抱負を語った。

さらに近隣市町や兵庫県との関係についても、「競争ではなく共創」と述べ、重要課題に挙げた。泉氏は現役市長時代、SNSを通じて神戸市の子育て支援政策について批判するなどしていた。丸谷市長に代わり、その神戸市とは、2023年9月、生物多様性を守り育てる連携協定を結んだ。

そして神戸マラソンの西の折り返し地点を、明石市の大蔵海岸まで延伸することになったのも、久元喜造神戸市長が丸谷市長に呼び掛けたことで実現しようとしている。

このほか、県立明石公園内の旧図書館跡地が廃墟となっている問題では、再整備をめぐり、2024年4月に斎藤元彦兵庫県知事とともに現地視察を行い、意見交換したばかり。5月19日には市民と直接意見を交換するワークショップも予定、市民に向けてウェブでのアンケートも実施している。

さらに「子ども真ん中社会の実現」に向け、子どもの医療費無料化(所得制限なし)のみならず、不登校対策として“居場所”となるフリースペースの拡充など、丁寧な取り組みを進めたいとした。

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