【前期高齢者医療制度】とは?後期高齢との違いや「給付内容」をわかりやすく解説

後期高齢者医療制度の保険料一覧つき

65歳になると「前期高齢者医療制度」に該当します。初めて聞く方は、「保険証が変わるの?」「保険料が発生するの?」「後期高齢とはまた違うの?」など疑問が湧くことでしょう。

この5月に年齢到達で「前期高齢者医療制度」に該当する方に向け、制度の概要や後期高齢者医療制度との違いを解説します。

現役世代の方も、シニアの医療制度について正しく理解しておきましょう。

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前期高齢者医療制度とは?65歳から該当

65歳~74歳の方は、前期高齢者医療制度に該当します。といっても、これは独立した医療保険制度ではありません。

高齢者の医療費が年々増加している現状を受け、前期高齢者加入率の低い健康保険組合等が「前期高齢者納付金」を納めることで、負担を平準化するというしくみになります。

そのため、個人が「65歳に到達した」からといって、新たに保険料が発生したり、保険証が変わったりするようなことはありません。

受けられる給付についても、基本的には75歳まで同じです。ただし、70歳になると「高齢受給者証」が発行されることがあります。

これにより給付に影響するので、しっかり押さえておきましょう。次章にて詳しく確認します。

高齢受給者証とは?70歳から該当

各保険者において、70歳から74歳の方を対象に「高齢受給者証」が発行されます。

これは、医療機関などで診療を受けるときの自己負担割合を表すものです。

そもそも医療費の自己負担割合は、

  • 6歳までは2割負担
  • 69歳までは3割負担
  • 70歳から74歳までは原則2割負担
  • 75歳以上は原則1割負担

と決まっています。しかし「原則」とあるように、実際には所得によって異なるのです。

そのため、70歳から74歳までの方に対しては「高齢受給者証」を発行することにより、自己負担割合が「2割」か「3割」かを区別しています。

所得は毎年変わるので、その都度計算しなおされ、新しい高齢受給者証が届くという流れになるでしょう。

ここまで65歳~74歳の前期高齢者医療制度、70歳~74歳の高齢受給者証を解説しました。

こちらは加入する健康保険に変更はなく、そこまで個人に影響はありません。

しかし、75歳になって該当する「後期高齢者医療制度」では大きな変化があるため、しっかり予習しておきましょう。

後期高齢者医療制度とは?75歳から該当

ここまで解説した制度と違い、後期高齢者医療制度は「独立した公的な健康保険制度」となります。

つまり、これまで国民健康保険や協会けんぽなどの保険に加入していた方も、75歳に到達した時点で脱退し、後期高齢者医療制度という制度に加入することになるのです。

これにより、保険証は新しくなりますし、保険料も変わります。

また、65歳以上で一定の障害がある方も、任意で後期高齢者医療制度に加入することができます。

筆者も自治体職員をしているときは、相談に来られる方が少なくありませんでした。保険料などは試算してもらえるので、一度お近くの自治体窓口に相談してみましょう。

【対象となる障害】

  • 身体障害者手帳1級から3級までと4級の一部
  • 愛の手帳1,2度
  • 障害年金1,2級
  • 精神障害者保健福祉手帳1,2級

後期高齢者医療制度の運営は、各都道府県に設置された「後期高齢者医療広域連合」が行っており、すべての市町村が加入しています。

後期高齢者医療制度の保険料は2024年度に引上げへ

厚生労働省の発表によると、2024年度における被保険者一人当たり平均保険料額は、全国平均で下記のとおりです。

  • 被保険者均等割額の年額:5万389円
  • 被保険者均等割額の月額:4199円
  • 所得割率:10.21%
  • 平均保険料額の年額:8万4988円
  • 平均保険料額の月額:7082円

ここ最近は引き上げの動きが続いています。

後期高齢者医療制度の保険料は都道府県ごとに違う

基本的に、後期高齢者医療制度の保険料は一人あたり一律の「均等割」と、前年の所得を基準に算出される「所得割」の合計額で決まります。

しかし、それぞれの金額や料率は都道府県によって異なるため、同じ収入でも住む場所によって保険料が異なります。

例えば厚生労働省は、年金収入195万円の人の保険料(月額)を次のとおり試算しました。

2024年度・2025年度の後期高齢者医療制度の保険料率や保険料例
  • 全国:5411円
  • 北海道:6025円
  • 青森県:5170円
  • 岩手県:4583円
  • 宮城県:5025円
  • 秋田県:4808円
  • 山形県:5017円
  • 福島県:4937円
  • 茨城県:5125円
  • 栃木県:4883円
  • 群馬県:5317円
  • 埼玉県:4858円
  • 千葉県:4775円
  • 東京都:5044円
  • 神奈川県:5213円
  • 新潟県:4633円
  • 富山県:5033円
  • 石川県:5409円
  • 福井県:5458円
  • 山梨県:5685円
  • 長野県:4845円
  • 岐阜県:5167円
  • 静岡県:5033円
  • 愛知県:5858円
  • 三重県:5212円
  • 滋賀県:5119円
  • 京都府:5886円
  • 大阪府:6211円
  • 兵庫県:5812円
  • 奈良県:5667円
  • 和歌山県:5808円
  • 鳥取県:5608円
  • 島根県:5345円
  • 岡山県:5500円
  • 広島県:5211円
  • 山口県:6124円
  • 徳島県:5792円
  • 香川県:5617円
  • 愛媛県:5460円
  • 高知県:5833円
  • 福岡県:6357円
  • 佐賀県:5967円
  • 長崎県:5508円
  • 熊本県:6196円
  • 大分県:6184円
  • 宮崎県:5458円
  • 鹿児島県:6275円
  • 沖縄県:5913円

もっとも高いのは福岡県で6357円。もっとも低いのは岩手県で4583円のようです。

また子育てを社会全体で支援する観点から、後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を支援する仕組みが4月より導入されています。

後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を支援

まとめにかえて

初めて「前期高齢者医療制度」という言葉を聞いた方は、新たな保険証や保険料に変わるのかと不安になるかもしれません。

しかし、個人において何か変化が起こるわけではありません。ただし、70歳になると高齢受給者証が届くので、病院にて提示が求められるでしょう。

一方、75歳になって「後期高齢者医療制度」に該当すると、これまでよりも大きな変化となります。

こうした公的制度はしっかり把握しておきましょう。

参考資料

  • 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」
  • 大阪市「高齢受給者証について」
  • SGホールディングスグループ健康保険組合「前期高齢者医療制度」

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