おひとりさまの身元保証、亡くなったあとのことはどう考える?井戸美枝さんがアドバイス

ひとり暮らしで入院することになって、身元保証人が必要といわれたらどうしましょう。親族に頼めなくて保証人がみつからなくても、方法はあります。元気なうちに、入院時や亡くなったあとのことを考えておくと安心ですね。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに教えていただきます。

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【63歳Kさんの悩み】
夫が亡くなって、子どものいないおひとりさまです。親もすでに亡く、遠くにいるきょうだいも年老いているので、入院時の保証人や葬儀などを誰に頼めばいいのか心配です。

【井戸さんのアドバイス】
・入院の保証人がいないときは、病院の医療ソーシャルワーカーに相談しましょう。
・どんな終末期を迎えたいか、希望を明確にしてサポートを頼みましょう。
・葬儀や遺品整理などは、「死後事務委任契約」を結んで依頼する方法もあります。
・業者との契約に迷ったら、地域包括支援センターや消費生活センターに相談を。

身元保証に困ったら、病院の医療ソーシャルワーカーに相談を

まず、病気やケガで入院した場合を想定してみましょう。
入院するときは、ほとんどの病院で、「身元保証人」が求められます。

身元保証人の役割は主に3つあって、入院費を本人が支払えない場合に肩代わりすること、想定外のトラブルが起きたときなどに本人以外に医療行為を告知して同意してもらうこと、緊急時の連絡や万一亡くなった場合の引き取り先が必要なため、です。

身元保証人になれるのは、「入院する本人と別に、独立した生計を営む人」です。夫や子どもがいても、同居している場合は身元保証人にはなれません。

別に暮らす子どもやきょうだい、甥・姪などの親族に頼むことになりますが、ご相談者のように、親族が遠くに住んでいたり、親族に頼めなかったりする場合は、友人や知人に頼むこともできます。

友人や知人に依頼する場合は、信頼できる相手に日ごろから事情を説明して頼んでおくといいでしょう。金銭面で迷惑をかけないように入院や手術の費用などを準備し、加入している保険の内容や親族の連絡先を伝えておくと、頼まれる側も負担が軽くなります。

一方で、医師法では、「保証人がいないという理由だけで入院を拒否することはできない」とされています。ですから、保証人が見つからないからと、入院が拒否されるケースは基本的にありません。

病院によっては、「入院保証金を支払う」「入院費用をクレジットカードで支払い、カード番号を登録する」などの方法で、保証人が不要になることもあります。また、病院が提携する身元保証会社を紹介してくれることもあるので、保証人がいないときは病院の医療ソーシャルワーカーに相談してみるといいでしょう。

「死後事務委任契約」を検討する

では、亡くなったあとのことはどうすればいいのでしょうか。

おひとりさまが亡くなって、遺族や相続人が見つからない場合、地方自治体が火葬や埋葬など、最低限のことは行ってくれます。ただし、通夜や告別式はない直葬で、埋葬も無縁仏として合祀されます。

通夜や告別式を実施したい、自分が選んだお墓に入りたいなどの希望があるなら、葬儀を行う人、火葬から埋葬まで立ち会う人を頼んでおく必要があります。

また、住んでいた住居や家具の整理・処分、死亡届の提出や年金受給の停止など、亡くなったあとには「死後事務」と呼ばれるたくさんの手続きがあり、誰かにそれを委任しておかなければなりません。

通常は家族や親族が行いますが、頼める親族がいない場合は、元気なうちに自分の希望を伝え、その希望を確実に実行してもらうために、「死後事務委任契約」を結んでおくのも一つの方法。

死後事務委任契約は、死後事務委任を専門に取り扱う弁護士や司法書士、また、入院や施設入居の際の身元保証を行う身元保証会社、関連するNPO法人などと結ぶことができます。

死後事務委任契約で依頼できるのは、次のようなことです。

亡くなったあとの病院などからの遺体搬送
葬儀、火葬や納骨の手配
死亡届の提出
水道・光熱費の停止
年金受給の停止
保険証などの返還などの手続き
自宅の遺品整理。不要品の処分、自宅の売却
ペットの処遇
デジタル記録の消去 など

終末期の希望を明確にする

死後事務委任契約を結ぶ前に、まず、自分がどんな点でサポートを受けたいのか、よく考えてみましょう。

おすすめは、自分がどんな終末期を送りたいのかを整理すること。
具体的にどう考えていいかわからないという場合は、市販のエンディングノートを利用するといいでしょう。

エンディングノートとは、自分が何かあったとき、延命治療を望むかどうか、葬儀はどうするか、財産はどうしたいかなど、自分の希望を書いておくもの。おひとりさまにとっては、自分の最後の希望を離れて暮らす家族や親族に伝える唯一の手段でもあります。亡くなったあと、自分の希望を親族などに伝えたい場合は、エンディングノートの所在や保管場所を伝えておくと安心です。

エンディングノートの内容

●延命治療や臓器移植について
要介護や認知症になったとき、どこでどんな介護を受けたいか。急な病気で自分の意思が伝えられなくなったとき、延命治療を希望するか。脳死状態になったら、臓器移植を希望するか、など。

●葬儀やお墓について
亡くなったとき、葬儀を行ってほしいか、行ってほしい場合はどこで行うか。葬儀の連絡をしてほしい人はだれか、入りたいお墓はどこか、など。

●財産や相続について
取引先の金融機関や預貯金、株式、加入している生命保険、所有する不動産、貴金属、クレジットカードやローンなどの全財産をリスト化。遺産を誰にどう相続させたいか、など。

葬儀や死後事務を誰に頼むか検討する

エンディングノートで自分の希望を明確にしたら、友人や親族などに頼めること、業者に依頼することを整理してみましょう。
たとえば、葬儀は、葬儀を取り扱ってほしい葬儀社を選んで、生前から内容などを決め、依頼しておくこともできます。希望通りに執り行ってくれているかだけ、親戚に確認してもらってもいいですね。

葬儀を甥や姪など親族に頼みたい場合は、元気なうちから話しておいて、必要な費用を準備しておきましょう。お礼の意味もかねて、遺産の一部を遺す配慮も心がけたいものです。

「死後の事務処理まで頼むのは気がひける」「お金を払って依頼した方が気がラク」などの理由で、業者に頼みたい場合は、内容を絞り込んだうえで、依頼先を探しましょう。

死後事務をサポートする業者は数が多く、内容も、契約内容が決まったセットプランを扱うところ、必要に応じて委任内容が選べるところなど、さまざま。また、業者以外にも、地域によっては、自治体や社会福祉協議会が死後事務の支援を提供している場合もあります。

どんなところがあるかネットなどで調べてみて、気になるところに足を運んで納得できるまで説明を受けてください。

また、死後事務委任契約にかかる費用は、入会金や契約書類作成の手数料などを支払い、依頼する内容に応じて費用を上乗せするのが一般的です。
自分の資産状況と照らし合わせて、支払えるかどうか検討しましょう。

死後事務委任の費用例

基本料金(入会金・初年度事務手数料など) 51万6000円
弁護士法人基本料金(本契約手数料、推定相続人調査など)12万6000円

(依頼内容に応じて)
身元保証支援 19万8000円
葬送支援 73万円 など

※認定NPO法人「きずなの会」ホームページより
ご契約と費用について – 認定NPO法人 きずなの会 (kizuna.gr.jp)
https://kizuna.gr.jp/agreement/

契約内容や手続きの方法、費用などに不安を感じたら、公的な相談機関「消費者生活センター」などに相談しましょう。

日常生活のサポートも依頼できる

身元保証会社やNPO法人などによっては、死後事務委任のほかに、日々の暮らしのなかでちょっとした手伝いをしてほしいときのサポートを頼めるところもあります。

サービス内容は業者によって異なりますが、主に次のようなものです。

●日常生活をサポートする
通院や買い物、旅行の付き添い
見守りサービス
介護保険や介護認定の手続き代行
施設見学への同行、契約時の立ち会い
健康上の不安相談 など

●入院や施設入居をサポートする
急な病気やケガなどの緊急連絡先
入院や施設入居の際の身元保証人
入退院時の付き添い、手続き代行
症状説明に同席 など

ただし、充実したサービスを受けようとすれば、当然、それだけ費用もかかります。すぐに契約するのではなく、生活に不安を感じたらまずは地域包括支援センターなどに相談して、本当にサポートが必要かどうか検討するといいでしょう。

プロフィール
井戸美枝
いど・みえ●ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、社会保険労務士、国民年金基金連合会理事。生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題が専門。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『フリーランス大全』(エクスナレッジ)。『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)など著書多数。
ホームページ:http://mie-ido.com
Twitter:@mieido


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