【16歳からの大学論】生成系AIに問う「大学の意味」とは

この原稿を書いている4月上旬は、大学入学の時期でもあります。今年度も多くの新入生が期待に胸を膨らませ、日々、キャンパスに通い、思い思いに学びの場についていることでしょう。本紙の読者とは異なるかもしれませんが、彼・彼女ら新入生に向けて、この場にてお祝いの言葉を述べたいと思います。ただし、普通に書いたのではつまらない。生成系AIに、「大学の意味」というタイトルで入学式の祝辞を書いてもらい、それに対してツッコミをいれるという形で、私のメッセージを伝えられればと思います。以下、どうぞお楽しみください。

『大学の意味』
新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。本日は、皆様にとって待望の大学入学の日であり、新たな人生の門出となる日です。 私は、皆様が今日この日に至るまで、多くの努力を重ねてきたことを知っています。そして、これから始まる大学生活においても、更なる努力と挑戦が必要となることを覚悟していることと思います。 しかし、同時に、皆様は大きな夢と希望に胸を膨らませていることでしょう。大学生活は、専門的な知識を学び、将来のキャリアを築くための貴重な時間です。

違います。専門的な知識を学ぶのは、専門学校でも可能です。大学は「学問」をする場ですので、「学問に通じた専門(知識)」を学ぶのです。そもそも専門的な知識とはなんですか? それらはもうインターネット上に溢れており、今、それを学ぶことにどれほどの意味があるのですか? かといって、それを使いこなすことが大事、と言いたいのではありませんよ。そもそも、知識とは何か、を問うているのです。そして、このような「問い」を持つことこそが、学問の営みであり、単なる知識習得の学習とは大きく異なる点です。

そういう観点からすると、大学は「将来のキャリアを築くため」にあるのではないことに気づくでしょう。言うならば、将来とは?キャリアとは?と考えることこそが大学でやらねばならぬことなのです。

しかし、それ以上に、自分自身を見つめ直し、新たな価値観を創造していくための場でもあります。

そう、そのとおり。「自分自身を見つめ直す」のが大学での時間です。ただ、これは自分の興味関心や生涯かけてやりたいことは何かと考えることではありませんよ。それは学問ではありません。自分自身=この世、という絶対的事実に向き合うということです。少しわかりにくいかもしれませんが、なんのことはない、「この世は、自分が見たいようにしか見れない」という深い自覚を持つということです。これは、普遍たる学問の大切な立ち位置として、ぜひ大学4年間で感じて頂きたいことです。

大学は、様々な分野の専門家が集まり、最先端の研究が行われている場所です。

違います。単なる専門家の集まりが大学ではありません。例えば、最先端の研究がなされていることもさることながら、その「最先端とは何か?」もまた自省的に問い続けることも含んで、大学である、ということです。

ここでは、これまでとは全く異なる視点から世界を見る機会を得ることができます。また、異なる価値観を持つ人々と出会い、議論することで、自分の考えを深めることができます。

そのとおりです。素晴らしい。専門を超えた多様な共同、対話があって初めて「大学」であり、それが社会の実験場としての大学の存在意義です。

大学生活は、決して楽ではありません。時には困難に直面することもあるでしょう。しかし、そのような経験を乗り越えることで、人間として大きく成長することができます。私は、皆様一人ひとりが、大学生活を充実させ、自分自身を成長させていくことを願っています。そして、大学生活を通して、それぞれの「大学の意味」を見つけていってほしいと思っています。

それぞれの「大学の意味」を見つけることも大事ですが、学問の営みを通じて、誰しもが所有する「意味」というもの、人も、時代も、国も超えて、それが確かに在るのだというあの驚き。「あぁ、なんということだ…」 自分が溶けてなくなるような、精神の呼応にこそ出会わんことを心から願っています。

大学生活は、自分自身の人生を切り開くためのチャンスです。この貴重な時間を有効活用し、充実した大学生活を送ってください。皆様のご入学を、心よりお祝い申し上げます。◯◯大学 学長 宮野公樹

以上です。いかがでしたか? 紙面の都合上、極力簡潔にまとめてみましたが、もっと丁寧に説明する必要があったかもしれません。必要であれば拙書「学問からの手紙」(小学館)を手にとって頂ければ幸いです。(続く)

京都大学 学際融合教育研究推進センター

准教授 宮野 公樹先生

1973年石川県生まれ。2010~14年に文部科学省研究振興局学術調査官も兼任。

2011~2014年総長学事補佐。専門は学問論、大学論、政策科学。南部陽一郎研究奨励賞、日本金属学会論文賞他。著書に「研究を深める5つの問い」(講談社)など。

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