【県立高入試制度】抜本的な改善の議論を(5月9日)

 県立高入試は今春、現在の制度で5年目の試験が終わり、県教委は6月から今後の選抜方法などを協議する。自己推薦の特色選抜は全学科・コースのほぼ4分の3で、依然として定員割れが続き、各校が求める生徒を十分に確保できているとは言い難い。5年の節目を機に、日程や学力検査の在り方など抜本的な見直しを検討すべきだ。

 旧制度では自己推薦のⅠ期選抜を2月、一般入試に当たるⅡ期選抜を3月に実施していた。Ⅰ期選抜は学力検査がない上に合格内定が早く、不合格でも同じ学校か別の学校のⅡ期選抜を受験できた。現行制度の特色選抜は、3月の一般選抜と同じ日に学力検査が行われる。両選抜の併願は可能だが、県立の志望校は1校に絞らなければならない。

 今春の全日制特色選抜の平均志願倍率は0.79倍で、1倍を超えた学科・コースは全145のうち37にとどまる。初年度から5年間の平均倍率は0.78倍で、Ⅰ期選抜の最後5年間の1.51倍と比べて明らかに低い。各校は、スポーツや文化活動など力を入れたい分野を示して生徒を募っているにもかかわらず、定員割れが続く現状は特色ある教育の広がりを妨げかねない。

 特色選抜は、各校の判断で学力検査に加え面接や実技が課される。進路指導者らによると、負担の大きさから出願をためらう生徒は多い。日程を早めたり、試験の負担を軽減したり、一般選抜との違いをより明確にしなければ志願者は増えないとの声も聞く。

 旧制度では、Ⅰ期で合格が内定した生徒の学習意欲が入学までに低下すると指摘され、現行方式に改められた。しかし、特色選抜に出願した受験生が2月に発表される志願状況で定員割れを知り、学習時間を減らしてスポーツの練習に注力するような例もあるという。現制度が学習意欲の維持につながっているのか、5年を経て具体的に検証する必要もあるのではないか。

 県教委は小中学校や高校、PTAなどの関係者で構成する県立中学校・高校入学者選抜事務調整会議で改善の必要性を話し合う。少子化などで県立高の統合が進む中、従来に増して魅力ある学校づくりが求められる。入試制度は地域の将来に関わる課題と捉え、幅広い視点で議論を尽くしてほしい。(渡部育夫)

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