近視矯正のレーシック手術は老眼治療にも使える…2つの方法【一生見える目をつくる】

手術によって老眼を治すことが当たり前に(C)日刊ゲンダイ

【一生見える目をつくる】#12

視力矯正が専門の眼科医の間では「手術によって老眼を治す」ことが当たり前となってきていると、前回お話ししました。

手術には2通りあり、「レーシック」の技術を使って老眼を治療するものと、遠近両用の人工水晶体である「多焦点眼内レンズ」を目の中に入れて老眼を矯正するという方法になります。

レーシックは近視を矯正するための手術。おそらくそう認識している人がほとんどかと思います。が、実は老眼でもこの治療方法を用いることがあるのです。

老眼治療としてのレーシックは「老眼矯正レーシック」と「モノビジョンレーシック」という2つの方法から始まりました。「老眼矯正レーシック」はレーザーのプログラムを遠近両用の角膜になるように設定するものです。わかりやすく言えば、遠近両用コンタクトレンズのような角膜を作るのです。当初は画期的かと思われましたが、手術の結果が思わしくなく、特に近くが見えない患者さんが多かったため、この老眼矯正レーシックは行わない方針にしました。おそらくはプログラムが繊細すぎて、生きている角膜ではそこまで細かい変化をつけられないためかと思います。それに対して「モノビジョンレーシック」はとても効果的であることがわかってきました。

ではそのモノビジョンレーシックについてですが、この矯正治療が適しているのは「まだ白内障になっていない」40歳代後半から50歳代の人です。レーシックで遠くが見えるようにすると、今度は老眼鏡を使わないと近くが見えなくなってしまう世代の人に提案することが多いです。もちろん、レーシックが可能な目であることが条件となります。

モノビジョンの「モノ」は「ひとつの」という意味。この言葉が示すように、レーザー照射で左右の目のピントを変え、片目は遠くを、もう片方の目は近くを見やすいように視力を調整します。すると両目で見た時には、遠くも近くも見えるようになります。

術後は眼鏡なしで生活できるようになりますが、「片目で遠くを、片目で近くを」という見え方に慣れるまで1~3カ月かかります。現在、私自身はこのモノビジョンにしていて、眼鏡なしで生活や仕事ができています。

麻酔薬を点眼して行う点眼手術で、手術時間は片目で15分ほど。保険適用ではなく自由診療となります。当クリニックの場合は両目で54万円となります。なお、目の状態によっては利き目ではない片方の目だけの手術となることもあり、その場合の費用は27万円です。

モノビジョンの見え方に慣れるかどうか、検査だけでは不安という人もいます。その場合には、手術前に左右の度数が違う使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズを使って、数日間、モノビジョンの見え方を体験することを推奨しています。コンタクトレンズでシミュレーションをするのですね。この体験で「どうしても慣れそうもない」という場合、モノビジョンには適さないと判断しています。

(荒井宏幸/クイーンズ・アイ・クリニック院長)

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