がん治療と仕事の両立~自分が、同僚が診断されたら~

皆さんにとって「がん」はどのようなイメージでしょうか。
多くの人が怖い病気であると考える一方で、がんは大変身近な病気となってきており、この記事を読んでくださっている方の中にも、実際にご自身が患われた経験をお持ちの方もおられるかもしれません。
今は2人に1人が生涯でがんにかかるとも言われる時代です。
また、そのうち3人に1人は20~64歳までの勤労世代と言われ、がん治療を行いながら働く人が増加しており、会社や従業員に向けた支援充実の必要性が高まっています。

がんの動向

まずは、がんの統計からみてみましょう。
皆さんもご存知かもしれませんが、がんの発症数は年々増加しています。
これは高齢化に伴い必然の流れとも言えます。

また、働く世代も時代とともに高齢化しており、在職中にがん診断を受ける人が増えています。
20~64歳のがん罹患数を見ると、2000年の約18万5千人から、2012年は約25万7千人まで大きく増加しています。

一方、がんに対する医療も進歩しており、早期発見によって助かるがんが増えています。
がんと診断されてから5年後に生存している割合を1993~1996年と2006~2008年で比較すると、53.2%から62.1%にアップしています。
以前に比べると、入院日数が減り、退院後通院しながら長期にわたって治療を続けるケースも増えているとも言えるでしょう。

両立支援の重要性~がんと診断されてもすぐには辞めないで~

そんな中、がん治療と仕事の両立を必要とする方も年々増加しており、支援の必要性が増しています。
皆さんは、がん治療と仕事を両立するに当たって、当事者の方々がどんなことに困難を感じているかご存知でしょうか。
2003年の厚生労働省の調査によると、がん体験者の悩みは「不安などの心の問題(48.6%)」、「症状・副作用・後遺症(15.1%)」、「家族・周囲の人との関係(11.3%)」、「就労・経済的負担(7.9%)」、「診断・治療(6.7%)」などと続いており、心の問題から、症状、関係性、仕事・お金の悩みと、当事者はさまざまな困難を感じていることがわかります。
19.8%の人が、がん診断されたときに、退職や廃業をしたという調査もあるように、病名告知時の心理的負担は計り知れません。
しかし、告知によるショックが強い時期だからこそ、退職という重要な判断を自分だけで行うのではなく、ぜひ周囲や会社に相談していただきたいです。

がんと診断された方が働き続けるために必要なこと

今度は、がんと診断された方が仕事を続けるために必要な支援について紹介します。
2013年に静岡がんセンターが、がん体験者4,054名に行った調査によると、1位に「短時間勤務」が、2位に「休職・休暇制度」、4位に「配置転換ができる制度」と、柔軟な働き方を可能にする制度の導入が必要な支援として挙がっています。
また、3位には「がん・後遺症等についての周囲の理解」、5位に「職場の人々の精神的な支え」が挙がっています。

つまり、まずは安心して治療を受けられるような会社としての体制整備が求められるでしょう。
加えて、復帰した同僚を暖かく迎え、必要な配慮を提供していくような職場環境も大変重要であることがわかります。
がん治療は年単位で続く場合もあるため、皆さん一人ひとりが他人事ではなく、病気の基本的な理解をもち、暖かな対応をしていくことが働きやすい職場をつくっていくと言えるでしょう。

同じ「がん」という疾患であっても、部位や、病期によって症状や治療方法は個人差が大きいものです。
大変センシティブな内容のため、すべての情報を同僚に伝える必要はありませんが、本人は必要な配慮について周りに伝えていくことが重要です。
また、ぜひ周囲はこのようながん治療者のことを知り、思いやりの気持ちをもって接していただきたいです。

<参考>
・ 厚生労働省e-ヘルスネット「がんとこころ」
・ 静岡県立静岡がんセンター「2013年 がんと向き合った4,054人の声(がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査 報告書)」
・ 厚生労働省「治療と職業生活の両立支援」

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