夫を亡くした45歳妻、遺族年金のルールを知らず…月額13万円もらえるつもりが、年金事務所からの請求却下に呆然「なにかの間違いでは?」

(※写真はイメージです/PIXTA)

大黒柱を失った家族を守るため、日本には遺族年金という公的保障がある。しかし、受給には一定の要件があり、それを満たさなければ「遺族年金ゼロ円」になる場合も…。遺族年金がもらえない3つのケースを見ていく。

平均的な会社員が45歳で死去した場合の遺族年金額

人生、なにが起こるかわからない。昨日と同じ平凡な日常が訪れるはずが、まだまだ元気なはずの40代会社員が突然死。小さな子どもを抱えた専業主婦の妻は呆然…。悲しいが、このような事態は起こりうることだ。

そんな万一に備えるために生命保険がある。結婚や子どもが生まれたタイミングで加入を検討する人は多いだろう。しかし、公益財団法人生命保険文化センター『2022年度 生活保障に関する調査』によると、自分や家族の将来のために具体的な生活設計を立てているかどうかとの質問に対し、51.5%が「生活設計なし」と回答している。

将来の生活設計がない理由として「なんとか暮らしていけるから」との回答が22.8%だである一方、「将来の見通しを立て難いから」との回答が25.8%、そして「経済的余裕がないから」との回答が23.1%だった。ざっくり計算すると、およそ10人1人は、経済的理由で生活設計が立てられない状況にあるといえる。

しかし、日本の社会保障制度は手厚い。自身での備えがなくても「遺族年金」というありがたい制度があるのだ。

遺族年金には、国民年金に由来する「遺族基礎年金」と、厚生年金に由来する「遺族厚生年金」があり、亡くなった人が自営業などであれば遺族基礎年金を、亡くなった人が会社員や公務員であれば、それに加えて遺族厚生年金がもらえる可能性がある。

実際の支給額を見てみよう。まず、遺族基礎年金の場合は「81万6,000円+子の加算額」となる。子の加算額は、1~2人目までは各23万4,800円、以降は各7万8,300円。注意してほしいのは、遺族基礎年金がもらえるのは「子のいる配偶者」または「子」である点だ。遺族基礎年金は「子がいること」が前提の社会保障となっている。

遺族厚生年金の支給額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額。計算式は、下記の通りとなっている。

{(平均標準報酬月額×7.125/1,000×2003年3月までの加入月数)+(平均標準報酬月額×5.481/1,000×2003年4月以降の加入月数)}×3/4

受給要件によるが、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300ヵ月(25年)未満の場合は、300ヵ月とみなして計算される。つまり、給与が高い人ほど、その遺族は多くの遺族厚生年金が受け取れる。一方で、子の要件はなく、より多くの会社員・公務員遺族が対象となる社会保障となっている。

平均的な給与を手にするサラリーマンと、同い年の妻の夫婦で、夫が20歳から働き、45歳で急逝した場合、同い年の妻が手にする遺族厚生年金は年50万5,622円、1ヵ月あたり4.2万円程度。夫婦に子どもが1人いたら、遺族基礎年金は年105万0,800円。合計で155.6万円、月12.9万円となる計算だ。

遺族年金が支給されないケースとは?

しかし遺族年金は、誰もが無条件で受け取れるものではない。年金事務所の窓口で受給要件を外れていると指摘されるケースもある。主なパターンは下記の3つだ。

①子の要件を満たしていない

子どもがいないケースはもちろんだが、子どもがいても18歳を迎えた年度を超えるなど年齢要件に合わない場合、「子のある配偶者」の要件を満たさないため、支給されない。

②生計維持が認められない

遺族年金は、死亡した人に生計を維持されていた遺族に支給される。生計維持は「①年収850万円未満または年間所得655万5000円未満」「②死亡した人と住民票上同一世帯、または別居でも家計をひとつにしていた」という2つの要件を満たしている必要がある。

③保険料未納

保険料の納付要件には「①亡くなった日の前々月までの保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること」「②亡くなった日が2026(令和8)年3月末日までのとき、亡くなった方が65歳未満の場合、亡くなった日の前々月までの直近1年間に保険料未納がないこと」の2つがあり、これを満たさないと遺族年金はもらえない(※保険料の免除を受けている期間は、加入期間とみなされる)。また、亡くなった人が老齢基礎年金の受給権者や受給資格を満たしていた場合、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あることが支給要件となる。

遺族厚生年金も、上記の①~③の要件を満たしていることが必要だ。なお、子のない30歳未満の妻の場合は、受給可能なのは5年間のみ。そして、会社員の妻を亡くした夫の場合、妻が死亡した当時に55歳以上でなければ対象とならず、また受給開始は60歳以上となる(※ただし、遺族基礎年金を合わせて受給できる場合は55歳以降から受給できる)。

遺族年金を請求しようと年金事務所に行ったら請求却下…。「まさか、なにかの間違いでは…」とならないよう、万が一の場合、いまの状況で大切な家族に遺族年金が支払われるかどうか、しっかり確認しておいてほしい。

[参考資料]

公益財団法人生命保険文化センター『2022年度 生活保障に関する調査』

日本年金機構『遺族年金』

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