世界「浮気率」4位のドイツが“禁断の三角関係”を描くとどうなる?『裸の女王』は父親×新恋人×息子の泥沼愛憎劇と衝撃ラストに絶句

『裸の女王』© German Film and Television Academy Berlin, Das Kind mit der goldenen Jacke, Reka Pictures, Wild Grass Films

「匠の国」が作る官能映画

職業の多様化や少子高齢化により、“職人技”の継承に欠かせない若手人材の確保が困難になっている日本。近年では、職人個人への依存度が高い伝統工芸やマニュアル化が進んでいない中小製造業などを中心に、職人の国・ドイツに倣って「マイスター制度」も導入されている。

ということで(?)今回紹介したいのが、そんなドイツ発の映画『裸の女王』。父子家庭で暮らすことになった魅力的な女性を巡って、父とその新恋人と19歳の息子の絶妙な三角関係を描くエロティックドラマ……なのだが、そこは“匠の国”にして「世界浮気率ランキング4位」(※複数調査サイト調べ)のドイツ。あらすじだけ聞いて期待するキャラ設定や描写をことごとく裏切る、一筋縄ではいかない珍・官能映画に仕上がっている。

19歳の青年マーティンは、父親のフィリップとその恋人アンドレアと同居することに。最初は冷たくあしらっていたマーティンだったが、明るく魅力的なアンドレアに徐々に惹かれていく。やがて父親の出張中に体の関係を持ってしまった2人。しかし良くも悪くもマイペースに振る舞うアンドレアに、マーティンは不満を持ち始め……。

ヨコシマな期待を打ち砕くキャスティングの妙

本作を観始めて最初に驚くのがキャスティングだろう。よくある官能ドラマならば、父親の恋人役には“分かりやすく”エロさを強調するところだろうだが、本作でアンドレアを演じるニナ・シュワーベは良くも悪くもややクセ強め。セレブ親父の後妻といえば若くてグラマーなギャルでしょ! という日本的な歪んだ先入観を打ち砕かれ、いきなりテンションが下がる人もいるかもしれない。

なお男どものキャラ描写だが、パパのフィリップは袴姿で庭に出て日本刀を振ったりする(居合道?)、いかにも文化意識の高い感じの渋メン。かたやマーティンは身体こそがっしりしているが、ベソをかきながら「パパ~!」とか叫んでしまうなどい、まだ母を亡くした傷が癒えていないようだ(※演じるテオ・トレブスはミヒャエル・ハネケ作品でも知られる若手実力派)。

濡れ場にオシャレは不要? 言葉を失うラスト15分の衝撃

そんなキャラ設定だけに、さらにアンドレアがワガママ放題なウザ妻だったら目も当てられないが、日中は障がい児施設でイキイキと働いていたり、一般的な家事以上のことを難なくこなしてしまう生活スキルを持っていたりと、その人となりを見ているうちに、とても魅力的に見えてくる。マーティンでなくても一緒に生活していたら惹かれてしまうだろうなぁ、と思わせてくるあたりが非常にリアルだし、一瞬でも「家政婦のほうがかわいいじゃん」なんて思った自分を殴りたくなること請け合いだ。

ところが官能ドラマの重要なファクターである“濡れ場”が過剰にアーティーで、シズル感はほぼゼロ。そんなところにまで匠の意匠はいらないよ! と思わずツッコみたくなるほど淡白で、住居セットの小綺麗さと相まって、うっかりすると「なんだIK◯Aの展示家具か」と素通りしてしまいかねない。

ラスト15分は画面に釘付けになる衝撃度で、アンドレアのキャラ造形の「?」にも察しがつく。ちなみにCS映画専門チャンネル ムービープラス「プライベート・シアター」での放送がテレビ初ということで、興味本位で観ておいても損はない作品だ。

© ディスカバリー・ジャパン株式会社