「生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―」が福島県の諸橋近代美術館で開催中

­こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。躍動するアートの世界を展覧会やニュースに注目したコラムでお届けする「今どきのアート」。今回、気になったのがこの展覧会です。

シュルレアリスムを代表する巨匠ダリの作品が目の前に!「生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―」が福島県の磐梯会津高原にある諸橋近代美術館で開催中


サルバドール・ダリ《ダンス:セブン・ライブリー・アーツより》1957年頃

©Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR Tokyo, 2023 B0695

シュルレアリスムは、20世紀前半に息吹をあげた表現主義。後の現代アートに影響をもたらしたシュルレアリスムの特徴は無意識の世界の顕在化であり、現実世界では想像できないような理性の縛りを受けない解き放たれた表現にあるといえます。

ジョルジョ・デ・キリコ、マン・レイ、ジョアン・ミロ、ルネ・マグリットなど多くの世界的なアーティストがその活動に参加していました。

中でも、卓抜した世界観と圧倒する精密な画力で観る人を惹きつけるのが、サルバドール・ダリ。本年はサルバドール・ダリの生誕120周年の年であり、さらにアンドレ・ブルトンのシュルレアリスム宣言から100周年を迎える節目の年であり、来るべきして来たといえる展覧会なのです。

世界屈指のダリ・コレクション

今回の展覧会は、世界屈指のダリ・コレクションを誇る諸橋近代美術館の所蔵品を中心にダリの生涯と渡米以降の活動に注目した展示概要となっています。

世界的なシュルレアリストとして知られるダリと、ひとりの人間としてのダリの複雑で繊細な内面を探りながら、世界中で愛されているダリが果たしてどんな芸術家であったのかを、油彩作品、素描作品、版画作品、彫刻作品のほか、ジョアン・ミロやルネ・マグリットなどシュルレアリスムの作家の作品などを通じて知られざるダリの多様な側面を垣間見ることができるのです。

ダリの作品は大変貴重であり著作権の観点から作品をメディアで紹介することもなかなか難しく「実際に展覧会に行って作品を観る」ことでしかダリの作品を知ることはできません。

その意味で、この展覧会の開催はとても希少性の高い機会だといえるでしょう。

フィリップ・ハルスマン《サルバドール・ダリ》1954年 Photo by Philippe Halsman © The Philippe Halsman Archive

3つの章で紡がれた流麗な展示構成

展示は3つの章で構成されていますが、「第1章 若き天才のペルソナ 」では、スペイン・カタルーニャ州の小村フィゲラスに誕生したサルバドー ル・ダリの生い立ちについて触れています。

公証人の子息として裕福な家庭に育ったダリは、出生前に早逝した兄と同じ「サルバドール」の名をつけられたことで、幼少期から死の概念に囚われ続けたといいます。

それに加えて家庭の内外で威厳を振るう父への愛憎やダリ自身の性的なコンプレックスなど、その生い立ちは蟻や奇妙な軟体などのモティーフに転換され作品の中に登場することになるのです。

1章では初期の作風や作中に現れる生い立ちを起因としたモティーフの文脈に言及し、ダリのもつ外面と内面のペルソナ(仮面)について紹介しています。

続く「第2章 シュルレアリスムの新星」では、シュルレアリスムの代表的な芸術家として知られるダリがシュルレアリストのグループに加入した経緯や最終的にグループの政治的思想から逸脱し、やがてグループと決別することになる中で、ジョアン・ミロやルネ・マグリットなどシュルレアリストたちの表現とダリがグループにもたらした新たな視点からのシュルレアリスムの視覚表現が紹介されています。

さらに「第3章 進化と拡張の芸術家、ダリ」では、ダリの芸術表現について解説するとともに、絵画、オブジェ、文筆、映像、写真、舞台空間演出、服飾、イラストレーションと表現媒体の境界線を超越してその領域を拡大し続けた様子が展示されています。

また、とてもエキセントリックでインパクトの強い自身の芸術家としてのアイコニックな自画像を演出することで、多くのメディアに露出したその効果から、20世紀で多くの人々に最も受け入れられた芸術家の一人となったことを知ることができます。

第3章では、ダリが特定のスタイルや表現媒体に限定されず、常に成長し進化する芸術家であったことが紹介されています。

美術館でゆったりした時間を過ごすのも素敵な気分転換

美術館からのメッセージ

「ダリとはいかなる芸術家であったのか。ダリのミューズとなった女性たちやダリ以外のシュルレアリストたちの作品も紹介しながら、『シュルレアリスト・ダリ』とその背景にある『人間・ダリ』の複雑で繊細な内面から天才の秘密を探ります。

諸橋近代美術館ではクラウドファンディング(2023年9月1日〜10月30日実施) にてダリ初期作品の修復におけるご支援を募ったところ、皆さまのお力で目標を達成し、ご支援によって修復されたダリ作品を本展にて公開していますので、それらも合わせてお楽しみください。当館で開催後、秋田・大分・神奈川・広島と巡回します。多くの方に当館のダリの世界を楽しんでいただけると幸いです」

有名な観光名所である五色沼

海の幸・山の幸の恵みが豊かで温泉もある観光にことかかない福島県。広々とした太平洋の景観や山々の木々の緑がふくよかな自然が心と身体の癒しになること間違いなし!

観光シーズンの夏に向かう東北旅行に行くきっかけにしてみては。

諸橋近代美術館

会期は 2024年9月1日(日)まで。展覧会の詳細は下記のURLからご確認ください。

https://dali.jp/

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