明治安田J1リーグ第12節、浦和レッズ対横浜F・マリノス戦が5月6日、埼玉スタジアム2002で行われた。この試合は、浦和レッズ(以降、浦和)が浮上するきっかけになるようなゲームだった。また、ペア・マティアス・ヘグモ監督の目指すサッカーが何かも、十分に知ることができた。この試合を分析しながら、ヘグモ監督の今後のビジョンに迫ってみよう。
ヘグモ監督が試合後の会見で述べていたように「我々の攻撃的なサッカーを作るには少し時間がかかる」というのは本当のことだろう。
それは「攻守にわたって規律を守らなければならない」サッカーであり、「攻守において1人だけでなく、第一波、第二波と人が駆け上がっていく」フットボールであり、それゆえに「サッカーは関係性のスポーツだ」と、監督は表現するのである。
では、ヘグモ監督が目指すサッカーは何か、また、浦和の浮上のきっかけになる要素は何かを、具体的に解説しよう。
それには得点シーンの分析が必要である。
42分の先制点「中島翔哉には3つの選択肢があった」
42分、浦和の先制点となったのは、右インサイドハーフの伊藤敦樹のシュートだった。
浦和のスローインからゲームがリスタートする。左インサイドハーフの大久保智明にボールがわたり、さらに左ウインガーの中島翔哉がフリーでボールを持つ。
このとき、横浜F・マリノス(以下、横浜FM)の右インサイドハーフで途中出場の山根陸は、中島に寄せにいかなければならなかった。しかし、山根は間に合わない。
ボールを持った中島の選択肢は3つあった。
①自分でドリブルしてミドルシュートを打つ。
②左サイドをランニングする大久保へのパス。
③横浜FMのサイドバックとセンターバックの間に入っていく伊藤へのパス。
監督が述べた「1人だけでなく、第一波、第二波と人が駆け上がっていく」サッカーが実現している。
ポイントは、ボールホルダーの選択肢が2つ以上あることと、そのボールホルダーを追い越していく選手も2人以上いることである。
65分の2点目となった決勝点は、またしても伊藤敦樹のゴールだった。