猫の蓄膿症こと「副鼻腔炎」治療法は? 点鼻薬とともに“こより作戦”が重要【ワンニャンのSOS】

鼻が詰まるにゃー

【ワンニャンのSOS】#61

子猫が猫カゼ(猫ウイルス性鼻気管炎=FVR=か猫カリシウイルス感染症=FCV)にかかると、ぐったりしたり、目ヤニや鼻水がひどくなったりして受診されることがあります。

猫カゼの治療にはインターキャットがとても効果的ですが、飼い主さんの自己判断で再診をしないと、二次的な細菌感染を起こし、副鼻腔炎になることが少なくありません。

その細菌が副鼻腔に停滞すると、慢性副鼻腔炎になるネコちゃんもよくいます。そう、蓄膿症です。ヒトも黄色っぽい鼻水や鼻づまり、鼻声に悩まされることがあり、ヒトでも猫でもありふれた病気です。

猫の場合、若ければ治療は物理的に細菌や膿を除去します。麻酔してこめかみの辺りにドリルで穴を開け、管を通して丁寧に洗浄を繰り返すのです。毎日、あるいは1日おきくらいで7~10日程度。きちんと繰り返せば、感染部位はキレイになり、細菌も膿もなくなり、穴も自然にふさがります。

ただ、この治療法を飼い主さんに説明すると、かわいそうと言われることがほとんど。あまり行わなくなりました。

では、どうやって治すか。前述したインターキャットの点鼻と人工的にくしゃみを起こして、細菌と膿の排出を促すのです。その排出に役立つ秘策が、こよりです。

インターキャットの注射液を抗生物質の点眼薬に混ぜて、慢性副鼻腔炎の点眼、点鼻用に処方します。飼い主さんは自宅でネコちゃんに点鼻薬を滴下。そうすると、鼻水が流れ落ちやすくなるので、そのタイミングでこよりで鼻道をつついて刺激すると、くしゃみが出やすくなるのです。

■人工的にくしゃみを誘発させる

くしゃみは、ヒトにたとえるなら鼻をかむような行為。猫はそれができないので、こよりで人工的にくしゃみを誘発させ、副鼻腔にたまっている膿を排出します。鼻づまりがひどいときは、来院していただき、これを繰り返します。

調子がよければ、飼い主さんが自宅で繰り返すと、より治りが早くなります。鼻の通りがよくなったところで、仕上げにインターキャットの点鼻薬を滴下するとなおベター。微量でも粘膜から吸収されたインターフェロンが免疫力を高めることが期待できます。

こより作戦は裏技ですが、膿をうまく排出することができれば、厄介な慢性副鼻腔炎も管理しやすく、治すことができます。

私は、このこより作戦を師匠に習いました。昔の獣医師は、獣医学的な手技や治療法、薬などが十分に開発されていない中、試行錯誤しながら最善策を見いだしていたのです。

慢性副鼻腔炎のネコちゃんを飼っている飼い主さんは、かかりつけの獣医さんにインターキャットを混ぜた点鼻薬を聞いてみるとよいでしょう。

(カーター動物病院・片岡重明院長)

© 株式会社日刊現代