実は人間味にあふれてる…「愛鳥週間」に読みたい! 愛鳥家が勧める“鳥の魅力が伝わる漫画”

まんがタイムKRコミックス『しあわせ鳥見んぐ』第1巻(芳文社)

毎年5月10日から16日は「愛鳥週間」だ。野鳥の保護や、野鳥をとりまく自然の保護について考える1週間として、日本鳥類保護連盟によって設けられた。この期間に学校の課外活動などで巣箱の設置や野鳥観察を体験し、鳥を好きになった人もいるのではないか。

かく言う筆者も、幼少期から鳥に魅了され、現在はともに暮らすインコたちに仕える下僕である。そんな愛鳥家の端くれとして、鳥の魅力が伝わる漫画をいくつか紹介する。

■“最速の生き物”ハヤブサがカッコよすぎる!

最初に、荒木飛呂彦さんの『ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース』(集英社)。本作は鳥がメインの漫画ではないが、作中に登場するスタンド使いのハヤブサ「ペット・ショップ」を見れば、ハヤブサがいかにハイスペックな鳥か分かるだろう。

モノローグでも紹介されたとおり、数キロ先の小動物も確認できる目を持つハヤブサは、最高降下速度時速300キロ以上(実験上では約400キロ)で獲物を捕らえる。狩りの様子は花鳥園のバードショーなどでも見ることができるので、機会があればぜひ生で見てみてほしい。自然下ではないので最高時速は出せていないだろうが、それでも一瞬にして視界から消える驚きの速さだ。

そして、急降下・急上昇で獲物を追う自由自在な飛翔能力も圧巻だ。作中では自動車の下を瞬息で通り抜けるシーンがあったが、実際に地上すれすれまで下りてきてサッと舞い上がる姿を見ると、あのシーンにも納得がいく。

またペット・ショップ同様、野生のハヤブサも知能が高く、2005年にカナダのマギル大学のルイ・ルフェーブル氏によっておこなわれた鳥類の知能測定によると、ハヤブサ属とカラス属が最も高い得点を記録したという。地上最速にして鳥類最高の頭脳、カッコよすぎる。

■“人間味あふれる人情家”もまさに鳥の魅力なんです!

『ジョジョ』のペット・ショップは、冷酷さや残虐さ、執念深さが強調されていたが、反対に涙もろく人情家で、人間味あふれる鳥のキャラクターがいる。『男おいどん』(講談社)をはじめ、松本零士さんの数々の作品に登場する「トリさん」だ。

松本さんの下宿の近所で飼われていたおしゃべりなオウムと、カラスをモデルにしたというトリさんは、鳥という生き物の性格をよく表しているように思う。“人情家”というのを意外に思う人が多いかもしれないが、鳥にも思いやりや共感能力があることは複数の研究で明らかになっているし、実際に鳥と暮らしているとよく分かることだ。さすがにトリさんのように涙を流しはしないが、少なくとも犬並みには、こちらの顔色を窺ったり気持ちに寄り添ったりしてくれる。

鳥というと“冷たくて何を考えているのか分からない”と思われがちだが、実は鳥好きからすると、トリさんのような“人間味あふれる人情家”のほうがしっくり来るのだ。

■鳥と暮らすって、こういうことです!

続いて、鳥がメインの漫画。

「愛鳥週間」は野鳥のためのものだが、“コンパニオン・アニマル”として人間と暮らす鳥も多い。そんな鳥たちと“鳥沼”にハマった人間たちの生態を描いた漫画が、空廼カイリさんの『鳥ジャンキーズ』(マッグガーデン)だ。

カバー折り返しには「鳥の匂いはクセになる、鳥飼い・鳥好きの間では常識でも、知らない人にはなかなか伝わらない歯がゆさから生まれたこの作品」とあり、これだけでも鳥好きはそわそわすることだろう。

本作には、鳥に詳しい人なら誰でもクスッとなる“あるある”や、鳥との暮らしから得られる喜びと癒しがふんだんに込められている。同時に、大変なことや我慢しなければならないことも分かりやすく描かれているため、鳥との暮らしに興味がある人にはぜひ読んでもらいたい作品だ。

■新しい趣味にバードウォッチングはいかが?

最後に、少しでも鳥に興味があり、なおかつ新しい趣味を探しているという人には、わらびもちきなこさんの『しあわせ鳥見んぐ』(芳文社)をお勧めしたい。鳥見、つまりバードウォッチングを題材に、女子大生たちの交流をゆるく描いた作品だ。作品の舞台は東北だが、都市部でも見られる野鳥は多いため、住む場所を問わずどこでも楽しめる趣味かと思う。

本作では、身近な鳥の特徴や習性の紹介をはじめ、基本的な鳥の観察方法や識別方法までしっかりと描かれている。また、渡り鳥を見るために少し遠出をするワクワク感や、その先で鳥たちが見せてくれる美しい風景など、モチベーションを上げる要素も十分だ。バードウォッチングの入門書としては最高の作品ではないだろうか。

そして愛鳥家としては、観察する側の視点だけでなく、人間という外敵から見つめられる鳥側の視点に立ったエピソードが描かれているのも嬉しい。人と鳥、互いに近いところにいるからこそ、良い距離感を維持していきたいものだ。

私たちの身近な存在である鳥、それなのにあまり知られていない魅力。「愛鳥週間」を機に、ゴミをあさるカラスでも、そこらへんを歩いているドバトでも、ちょっと目を向けてみてほしい。実はあなたが思う以上に面白い生き物かもしれない。

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