「今年はまだ何も成し遂げていない」明秀日立の守護神はPK2連続セーブにも笑顔なし

明秀日立GK1重松陽(写真=会田健司)

 明秀日立GK1重松陽(3年)がPK戦で2本のシュートストップをみせ、チームを関東大会出場に導いた。しかし、2連続セーブ後も守護神の表情は険しいままだった。

 令和6年度関東高校サッカー大会茨城予選の準決勝が5月8日にト伝ノ郷運動公園で行われ、明秀日立がPK戦の末に東洋大牛久を下し決勝に進出。2年ぶりの関東大会出場権も獲得した。

【フォトギャラリー】明秀日立 vs 東洋大牛久

 1-1で迎えた延長後半2分。明秀日立は東洋大牛久にCKからオウンゴールで勝ち越しゴールを許した。その後、なんとか同点に追いつき、PK戦では重松が相手の2本目と3本目をストップ。チームの勝利に貢献した。

 「CKで失点したところも自分のミスだったので、それを取り返さないと、という気持ちだったので、喜べなかった」

 重松はCKのシーンでニアサイドで手を伸ばしたが、ボールを処理できず、それが2失点目に繋がったことを悔やんでいた。

 重松は昨年、全国制覇を果たしたインターハイで2年生ながらに1回戦から決勝までの6試合にフル出場。選手権でも全国の舞台を経験した。それだけに1回のミスの重さというものを誰よりも痛感していたのだろう。

 

重松が悔やんだ2失点目のシーン(写真=会田健司)

 そして「去年と比べたら今年はまだ何も成し遂げていない」とストイックさを感じさせるコメントを残した重松。

 さらに「県内では相手が向かってくるのを感じる。向かってこられても強さや上手さを見せられないとダメだよね、と伊藤コーチからも言われていますし、新チームになってからはそれを突き詰めて練習しているので、そこはまだまだ強くならないといけないし、上手さのところでも茨城県内でもっともっと突出していかないと、というのを今日の試合をやってまた感じました」と続けた。

 明秀日立は昨年のインターハイで全国制覇を成し遂げたことで、今春は新チームが青森山田などの強豪が集まるサニックス杯に出場。ヴィッセル神戸U-18も同居したグループリーグを1位で突破すると、順位決定1回戦では大津に0-4と大敗を喫したが、3位決定戦では市立船橋を破り、3位という上々の結果も残した。

 「サニックスではプレミアレベルのチームもいて、ヴィッセル神戸や大津とやってみて、高校年代トップのサッカーの質というものを肌で感じられた。それを収穫できて、体験できたのは良かったですし、それを糧にその基準で練習をやっています。個人としてもあのレベルのプレーを出来るようにならないといけない。あの時の向かっていく気持ちで県内でもやらないと、またチャンピオンにはなれないなと思います」

意地のPKストップを見せるGK1重松陽(写真=会田健司)

 向かってくる相手を全ての面で凌駕する。県内ではそれぐらいの意識でやらないといけない。そう意識している重松にとって、この勝利を手放しで喜べないのも頷ける。

 「まだ決勝があるのでそこで勝って、関東大会でも関東の強豪チームとやって、そこで課題が見つかると思うので、それをインターハイで改善して、2連覇を達成したい」

 明秀日立のストイックな守護神は本気でインターハイ全国大会2連覇を狙っている。

 (文・写真=会田健司)

© サッカードットコム株式会社