ポルシェ、ベッテルをル・マンで起用しない理由を説明「この物語は終わったわけではない」

 ポルシェのLMDhファクトリーディレクター、ウルス・クラトルは、ポルシェ963のテストを行った元F1世界王者のセバスチャン・ベッテルを今年のル・マン24時間レースのドライバーとして起用しないと決定したことについて、その背景を説明した。クラトルは、「状況はまったく適切ではなかった」と語っている。

 ベッテルは3月にスペインのモーターランド・アラゴンで963のテストに参加したにもかかわらず、5月6日の最終エントリーリスト発表により、ル・マンにおけるポルシェの4号車ラインナップに含まれないことが確認された。

 ポルシェはそのテストを受けて、アラゴンで118周の走行を行ったベッテルを、ル・マンでの3台目のドライバーとして真剣に検討していることを示唆していた。

 しかし最終的には、これまで4号車に指名された唯一のドライバーだったマシュー・ジャミネに、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権におけるポルシェのレギュラーであるニック・タンディとフェリペ・ナッセのふたりが加わることが決定した。

 クラトルはベッテルが最終的にドライバーに選ばれなかった理由を説明し、この36歳の選手にとってさらなるテストの機会がなかったことが一因であるとほのめかしている。

「我々は話し合いをしたが、いくつかの理由で今年のル・マンについてはうまくまとまらなかった。それだけのことだ」とクラトルはWEC世界耐久選手権第3戦が行われているスパで記者団に語った。

「それは部分的には、準備する方法についての問題であったが、うまくいかなかった。(ベッテルがル・マンまでに)クルマに乗れる時間は限られていただろうし、テスト規制によりそれ以上できることはあまりなかった」

「テスト規制を非難しているわけではないが、我々が置かれている状況では、たとえば過去のようにここ(スパ)に3台目のクルマをエントリーするようなことはできない。その状況は、まったく正しくものではなかったのだ」

 将来的にベッテルが再びポルシェの計画に登場する可能性があるかとの質問に対し、クラトルは次のように答えた。

「この物語は終わったわけではないが、どのように続くのかも決まっていない」

 クラトルは、ベッテルが963をドライブする予定は現時点ではないと明言し、「それは我々が望んでいないわけでも、彼が望んでいないわけでもない。単に話し合いがなされていないからだ」と付け加えている。

モーターランド・アラゴンでのテストで、ポルシェ963のステアリングを握るセバスチャン・ベッテル

■「簡単でもあり、難しくもあった」4号車のラインアップ決定

 クラトルはまた、ジャミネ/タンディ/ナッセという、2023年のル・マンにおける75号車ポルシェのラインアップを今年の4号車に再導入する決定について、「簡単」であると同時に「難しい」ものであったとも述べた。

「難しい」部分は、ポルシェIMSAのフルタイマー4名のうち誰を起用しないかを決めることであり、ル・マンでのリザーブドライバーにはデイン・キャメロンが指名されたと彼は説明した。キャメロンは2023年のポルシェのWECフルタイムドライバーの一員であり、一方でマット・キャンベルがル・マンでのリザーブを務めていた。

「簡単なのは、アメリカのIMSAチームで、我々には最高のドライバーが4人いるということ。彼らをル・マンに連れてくるのは簡単なことだ」とクラトルは語った。

「これらの選手たちを擁するあのクルマは、ピットレーン全体で最高のドライバーラインアップのひとつとなるだろう。

「簡単ではないのは、誰が運転しないのかを決めることだ。なぜなら、我々には(WECとIMSAの両シリーズに)10人のドライバーがいるが、ル・マンで必要なのは9人だけだからだ」

「誰が運転しないのかを発表しなければならないが、10人全員が経験を持っており、ル・マンで素晴らしいパフォーマンスを発揮する可能性がある。それが難しい部分だった」

「しかし結局のところ、我々はこの決定に対してノーベル賞を期待しているわけではない。フェリペはデイトナウイナーであり、タンディは(2015年の)ル・マンウイナーであることを、忘れないでほしい」

2024年のル・マン24時間で4号車ポルシェ963をドライブするマシュー・ジャミネとニック・タンディ

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