「ブランド茶」支える「お茶摘みさん」確保ピンチ 高品質の鍵、新芽の手摘み

宇治市が「お茶摘みさん」の確保に向けて作成した動画。手摘みの技術を紹介している

 京都府宇治市は特産の宇治茶の収穫を担う「お茶摘みさん」の確保に本腰を入れ始めた。市内の茶畑では新芽を手摘みするのが伝統だが、高齢化で人材の不足が懸念されている。茶農家とのマッチングを行う「お茶摘みバンク」やPR動画などを通して担い手を掘り起こし、ブランドの根幹となる手摘み技術の継承につなげる。

 同市産の宇治茶は主に抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)と玉露で、うまみを含んだ茶葉に成長させるため新芽の時期に日光をさえぎる覆いを施した「覆下茶園」で栽培されている。収穫では高品質なお茶にするため、一番茶を一葉ずつ手摘みするのが特徴だ。

 全国有数の茶どころを支える上で、手摘みを行うアルバイトのお茶摘みさんの存在は欠かせない。例年、茶農家でつくる市茶生産組合は、新茶収穫の最盛期を前に共通の募集チラシを新聞折り込みなどで配布し、農家ごとで個別に希望者を受け入れている。

 市の調査によると昨年、市内で600人を超える人がお茶摘みさんとして働いたという。近年は担い手の高齢化が進み、将来的な確保難が予測されていることから、市はてこ入れに乗り出すことにした。

 今年の新茶シーズン(5月初旬から約1カ月間)に向け、希望者と茶農家を仲介する人材登録制度・お茶摘みバンクの運用を実施。希望者を把握し、人材を有効活用するのが狙いといい、100人の登録を目指した。

 PR動画も作成した。茶農家やお茶摘みさんの思いなどを紹介する動画(約6分)と、手摘みの技術を伝える動画(約2分20秒)で、市公式ユーチューブチャンネルに掲載している。バンクへの登録を促すほか、学校教育や外国人観光客への発信にも活用し、宇治茶への関心を高めた。

 このほか、3月にはお茶摘みさんのモチベーションを高めることを目的に、勤続年数が通算30年以上の熟練者40人に初めて感謝状を贈った。

 松村淳子市長は「手摘みは茶作りの重要な役割を担っている。多くの人に宇治市の茶を守っていただきたい」と話している。

「お茶摘みバンク」への登録を呼びかけるチラシ

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