アップル、クリエイターらから批判の嵐。『Crush!』CM動画について謝罪「的を外していた」

Image:Apple

アップルが新型iPadの発表と同時に公開したCM動画『Crush!』について批判がわき起こったことに対して謝罪、「的を外していた」と述べた。

アップルのマーケティング担当副社長であるTor Myhren氏は、動画の内容について「クリエイティビティはアップルのDNAであり、世界中のクリエイターに力を与える製品をデザインすることはわれわれにとって非常に重要なことだ」「われわれの目標はiPadを通じて人々が自らを表現し、アイデアを実現するあらゆる方法を常に称賛することだ。その点この動画は的を外していた」とマーケティング関連情報サイトのAd Ageに語った。

問題の動画は、楽器やレコード盤、音楽プレーヤー、画材カメラ、ゲームなど、アートに関する物品が台の上に山積みにされており、何やら楽しそうだと思いきや、上からプレス機の上半が降りてきて、アート用具やクリエイター用の道具をメリメリと押しつぶし、鋼鉄の塊が上に戻ると、そこにはiPad Proが生まれている…といった内容だった。

ただ、本来アーティストやクリエイターが思い入れを持って接する品物を無残に破壊する様子は無粋で不快感を覚える人も多く、公開直後から批判のコメントが方々で見受けられた。

英国の俳優ヒュー・グラントはCEOのティム・クック氏がこの動画を紹介したX(旧Twitter)への投稿に、「シリコンバレーがお送りする、人々の経験の破壊」と皮肉を込めて返信。

Huluのドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』などを手がけた映画監督のリード・モラーノは「ティム・クック、もっと空気を読まないと。このクソ(みたいな広告)は本当にトチ狂ってる」と指摘している。

この広告に込められたアイデアはおそらく、テレビや映画、音楽鑑賞からゲームをしたり、本を読んだり、写真を撮ったり、絵を描いたり、映像を作ったり、その他その他多くのクリエイティブな行動が、洗練された非常に薄いデバイスひとつあれば可能になると、宣伝するつもりだったと思われる。

しかし、アーティストやクリエイターが、それらの道具に抱く愛着・注ぐ愛情の厚さは、アップルのマーケティング部門には理解できていなかったようだ。

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