子どもの五月病 学校へ行きたがらなくなったら、どうすべき? 専門家がすすめる対処法とは

心配な子どもの五月病(写真はイメージ)【写真:写真AC】

新しい環境で張り詰めていた緊張が、ゆるむことから起こるといわれる「五月病」。新社会人や大学進学時など大人に多い印象ですが、入学時やクラス替えといった環境の変化で、子どもも同じような状況になる可能性があるといいます。もし我が子にそういったことが起きたら、親はどうすればいいのでしょうか。元国際線の客室乗務員で、現在はコミュニケーションインストラクターとして活躍し、親子関係についてのアドバイスに定評のある瀬川文子さんに、2回にわたってお話を聞きました。前編は「五月病や不登校の兆しが見えたとき」の対処法についてです。

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五月病を防ぐには「一日のリズムを整えておく」

五月病は「病」の字がついていますが、医療用語ではありません。主に新入生や新社会人が新しい環境に適応できず、気持ちが落ち込むなど、心身の不調を覚えることの総称といわれています。時期も5月に限らず、極度の緊張からの解放後に起きやすいそう。

子どもであっても、新しいクラスといった環境のほか、学年が上がり勉強に難しさを感じるなどで緊張状態が続いていた可能性があります。ゴールデンウィークは、そうした緊張から解放されるタイミング。一般的にも知られている五月病ですが、実際に我が子がそうした状況になると、親は戸惑いや焦りを感じてしまいそうです。

そうしたことが起きるのを防ぐには、一日のルーティンを変えないようにするのも、ひとつの方法だと瀬川さんは話します。

「小さい子どもの場合、生活リズムの乱れによって、学校へ行くのを嫌がることもあります。連休中にはダラダラできたのに、また朝早く起こされて時間に追われる。とくに小学校に入ったばかりの新1年生は、休みの日にもできるだけ一日のリズムを変えないよう、整えておくことも大切です」

「必ず原因がある」と考えて対処 深刻なサインを見逃さないよう注意も

さらに瀬川さんは「まず、行きたがらないのには、何か必ず原因があると考えてほしい」といいます。学校へ行きたがらない状況に焦ってしまうと「行きなさい!」と命令するほか、「行かなきゃダメでしょ!」と非難する、励ますつもりで「勉強に遅れてしまう」と脅してしまうことも。闇雲に行かせようとするのは、良くない対応だと指摘します。

「本当は行きたくない理由があっても、責められると心の内を言えなくなってしまいます。とくに小さい子は、自分の気持ちをうまく言語化できないことも多いです。まずは“行きたくない”という気持ちを受け止めて、『久しぶりに学校へ行くのが不安なのかな?』など、なぜ行きたくないと感じるのかを汲み取り、確認しながら原因を言語化してあげることが大事。

ただ『なんで? どうして?』と、詰問や尋問のように聞き出そうとすると、ますます言えなくなってしまいます。一緒に考える姿勢で、しっかり話を聞くようにしましょう」

原因がはっきりすれば、励ます言葉も変わってきます。もし深刻な理由があった際は、子どもの心と体を守るため、ひとまず休ませるといった決断もあるかもしれません。正しい判断をするためにも、“なぜ行きたくないのか”を知るのは、重要なポイントといえそうです。

「子どもは『親に心配をかけたくない』と、深刻な場合ほど原因を明かせないことも。とくに、いじめなどのケースでは、そうした傾向が強いと感じます。知られたくない、でも気づいてほしい……と葛藤を抱えがちです。そうした場合は、態度に出ることが多い。わかりやすく元気がないだけでなく、妙にはしゃぐなどがサインである場合もあります。そういった変化を見逃さないことも大切ですね」

無理強いして学校へ行かせると、その後長引くことも(写真はイメージ)【写真:写真AC】

共感はしても、同調・同意しすぎるとマイナスが

子どもに寄り添い、話を聞いて解きほぐすなか、「共感はしていいのですが、同調や同意は、良くない考えを植えつけてしまう可能性があります」と瀬川さん。共感と同調は、似ているようで違うと指摘します。

一般的に相手の話をよく聞くため、共感を示すのは効果的といわれ、実践している人も多いでしょう。相手が言うことを理解し、考えを共有するなかで、同意や同調する場合も少なくありません。

「行きたくないと思う、つらい気持ちに理解を示し、『つらいんだね』と相手が主語になる形で共感するのはいいです。ただ、同意や同調をしすぎると、子どもが勘違いしてしまうことも。

わかりやすくNGワードで言うと、『行きたくないよね』のように主語が“私”にも受け取られる言い方は控えたほうがいいですね。より具体的には『そうだよね。休みのあとって、学校行きたくないよね。お母さんもそう思う』といった形で同調すると、子どもは“それでいいんだ。お母さんも、そうだって言った”と思ってしまいます」

子どもの気持ちに寄り添うあまり、つい言ってしまいそうな言葉かもしれません。“行かなくていいんだ”と思わせてしまわないよう、注意したいところです。

そのほか、やってはいけないこととして「おだてや無理強いをして学校へ行かせると、その後、ひどくなって行けなくなってしまうケースもあります」と瀬川さん。メンタルの不調を“心の風邪”とたとえるように、無理をさせることによって重症化する可能性を考えるべきだといいます。

次回は、子どもを休ませると決めたとき、親はどう接すればいいのかについて、引き続き瀬川さんにアドバイスしていただきます。

瀬川 文子(せがわ・ふみこ)
コミュニケーション・インストラクター。日本航空客室乗務員として14年間国際線勤務後、子育てをしながら米国のコミュニケーション訓練のプログラムの指導員をはじめ多くの資格を取得。コミュニケーションの大切さを講演、研修、著作で伝えることをライフワークとして活躍している。テレビや雑誌のインタビューに加え、主な著書に「聞く、話すあなたの心、わたしの気もち」(元就出版社)、「職場に活かすベストコミュニケーション」(日本規格協会)、「ママがおこるとかなしいの」(金の星社)ほか多数。

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