愛妻の思い継ぎ、みそ造り 那須の高久さん 移住者たちに交流の場を提供し25年

みそ造りの作業に励む参加者ら

 【那須】寺子乙の不動産会社「タカク地所」社長の高久重広(たかくしげひろ)さん(78)はこのほど、移住者や地域の住民を対象にしたみそ造り体験会を同所の自宅敷地で行った。今回は25年にわたり、イベントの中心的役割を務めてきた妻タケ子(こ)さんが病気で亡くなってから初めての開催。高久さんは「今後もできる限り続けていきたい」と愛妻の思いを継いでいく意志を示した。

 高久さん夫妻が「移住者の人たちの交流の場をつくりたい」と、みそ造り体験会を始めたのは1999年。社交的なタケ子さんは、その他にもそば打ちや枝豆収穫体験など年に5回ほどの交流会を企画。各イベントの当日には、欠かさず朝早くから赤飯や煮物を準備して訪れた人たちに手作りの料理を振る舞った。昨年4月の体験会当時、タケ子さんは体調を崩していたが、お弁当を作って訪れた人たちに提供したという。「体は苦しかったと思うが、周りには明るく接していた」と高久さんは振り返る。

 体験会には、高久さんと昔から交流のある寺子丙のみそ店「こうじや天然味噌(みそ) 日野屋」が協力。約60人の参加者たちは会話を楽しみながら、手際よく大豆とこうじを混ぜる作業などを行い、約800キロのみそを造った。

 東京都内と町内の2拠点居住をしている無職吉田政夫(よしだまさお)さん(71)は「タケ子さんがいつも中心にいて、明るい交流の場を作ってくれていた。これからも残してほしい」と願った。高久さんは「女房は『自分が亡くなった後もイベントを続けてほしい』という気持ちがあったと思う。その気持ちに応えたい」とほほ笑んだ。

高久重広社長

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