一時はサッカースタジアムの候補地にも…住吉町15番街区、結局何になる? 新体育館駐車場かMICEか、方針定まらず宙ぶらりん

住吉町15番街区と周辺の駐車場

 鹿児島港本港区エリアの県有地、住吉町15番街区(約2万4800平方メートル)の再開発が宙に浮いている。県がドルフィンポート(DP)跡地に計画する新総合体育館(スポーツ・コンベンションセンター)の駐車場となる予定だが、国際会議や展示会など「MICE(マイス)」施設整備の可能性も出てきたためだ。方針が決まる時期は見えない。

 県は2022年3月に策定した新体育館の基本構想で、住吉町に一般500台、バス50台分を確保するとした。事業費約3億円を見込む。当時は鹿児島市のサッカースタジアム構想の候補地でもあり、スタジアムを整備する場合は本港区に6カ所ある県営駐車場(計884台分)の立体化などを検討するとしていた。

 一方、MICEは本港区の再開発を議論するために県が22年12月に設置した検討委員会で持ち上がった。

 委員会で鹿児島商工会議所の岩崎芳太郎会頭が「千~1500人の会議とパーティーができる施設」など具体例を挙げてMICEを提言。他の委員からも「県外から人を呼ぶために必要」との意見があった。今年3月に策定した本港区再開発の指針となるエリアコンセプトプランで住吉町は「コンベンション機能などを核とした交流・観光拠点エリア」とされ、MICEが例示施設に位置付けられた。

 同時期に、県は新体育館事業で導入する民間資金を活用した社会資本整備(PFI)手法の対象から住吉町を外した。PFIは建設から維持管理まで19年間にわたる包括発注のため、「(駐車場以外の)有効な提案があった場合、新たな利用を図れなくなる」との判断からだ。

 ただ、これで本港区にはコンベンション機能を持つ施設が二つ整備される可能性が浮上することになった。MICEは、研修旅行や国際会議、展示会・見本市などの総称。国際会議やコンサート、見本市にも利用するとしている新体育館と機能が重複する。

 駐車場とMICEのどちらを住吉町に整備するか。県は「現時点ではあくまで駐車場」と強調。商議所の案については「事業主体や財源が示されておらず、正式な提案ではない」とする。新たな案が出たとしても、県がエリアコンセプトプランで掲げる「365日にぎわう観光拠点」につながるか、県議会で理解を得ることが前提との考えだ。

 塩田康一知事は4月の定例会見で、新体育館のコンベンション機能について「コンサートや見本市に使えるようにする」と説明。商議所案については「バンケット(祝宴・宴会)付きの会議などをする施設で、中身が違う」との認識を示した。コンベンション施設が二つできるのか問われ、「必要性がしっかりあれば可能性はある」と回答。住吉町の再開発方針の決定時期は「はっきりしていない。これからの議論」と述べるにとどめた。

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