2024年4月の「負債1,000万円未満」倒産 40件 3カ月ぶりに前年同月を上回り、40件台が続く

2024年4月「負債1,000万円未満」倒産状況

2024年4月の負債1,000万円未満の企業倒産は40件(前年同月比21.2%増)で、3カ月ぶりに前年同月を上回った。2024年は2月(32件)を除く3カ月で40件台に乗せ、物価高や人件費の上昇などコストアップが小・零細企業に大きな資金負担を招いている。
1-4月累計は163件(前年同期比6.5%増)に達し、2020年同期(191件)に次ぐ水準になっている。

産業別は、最多がサービス業他の21件(前年同月比75.0%増)。負債1,000万円未満倒産の5割以上(構成比52.5%)を占めた。次いで、建設業5件(前年同月比37.5%減)、小売業(同33.3%増)と情報通信業(同100.0%増)の各4件と続く。
原因別は、販売不振が22件(同21.4%減)で、半数以上(構成比55.0%)を占めた。
資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が37件(前年同月比23.3%増)と、9割超(構成比92.5%)に達した。
形態別は、破産が39件(前年同月比30.0%増、構成比97.5%)、取引停止処分が1件(前年同月2件)で、消滅型の破産が圧倒的に多い。

負債1,000万円未満で倒産した企業は、零細事業者で人材制約も大きく、経営再建や事業再生への取り組みが難しいのが実情だ。また、金融機関も信用保証協会付き貸出しに依存しているため、支援が企業に行き届いていない可能性もある。また、コロナ関連支援で過剰債務に陥り、負債1,000万円以上にカウントされているケースも少なくない。過剰債務の企業は新たな資金調達が難しく、ゼロゼロ融資の返済、物価高や人件費の上昇などで資金繰りがひっ迫しやすくなっている。金融機関は事業再生に軸足を移すが、小・零細企業に寄り添った対応が求められる。

※本調査は、2024年4月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


2024年4月の倒産40件、3カ月ぶりに前年同月を上回る

2024年4月の負債1,000万円未満の倒産は40件(前年同月比21.2%増)で、4月としては2年ぶりに前年同月を上回った。
コロナ禍当初は、経済活動が縮小し、事業規模に関係なく急激に業績が悪化した。そのため、経営体力がぜい弱な小・零細企業の倒産は、2020年6月94件、同7月83件と急増した。その後は、コロナ関連の資金繰り支援策に支えられ、月平均件数は2021年39件、2022年34件と、企業倒産は抑制された。
2023年は支援効果の希薄化と、ウクライナ情勢や円安による物価高、人手不足による人件費の上昇などで、2023年の平均件数は41件と増勢に転じた。今後も物価高や人件費上昇が収まる状況にはなく、資金余力が乏しい小・零細企業の倒産は緩やかな増勢をたどるとみられる。

【産業別】10産業のうち、4産業が前年同月を上回る

産業別は、10産業のうち、4産業が前年同月を上回った。
最多が、サービス業他の21件(前年同月比75.0%増)で、2年ぶりに前年同月を上回った。構成比は52.5%(前年同月36.3%)で、半数以上を占めた。
また、製造業3件(前年同月比50.0%増)と小売業4件(同33.3%増)が2年連続、情報通信業が4件(同100.0%増)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
一方、建設業は5件(同37.5%減)で2年連続、卸売業が2件(同33.3%減)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。不動産(前年同月2件)は、4年ぶりにゼロだった。
このほか、運輸業が前年同月と同件数の1件。また、農・林・漁・鉱業は2年連続、金融・保険業は2019年以降、4月では発生していない。

業種別では、受託開発ソフトウェア業3件(前年同月2件)、デザイン業と酒場,ビヤホール、理容業、エステティック業、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所
が各2件、土木工事業とタイル工事業、一般電気工事業、冷凍水産食品製造業、製缶板金業、アプリケーション・サービス・コンテンツ・プロバイダ、菓子・パン類卸売業、鉄スクラップ卸売業、野菜小売業、菓子小売業、化粧品小売業、社会保険労務士事務所、バー,キャバレー,ナイトクラブ、配達飲食サービス業、訪問介護事業、産業廃棄物収集運搬業が各1件などで、前年同月を上回った。

【形態別】消滅型の破産が9割超

形態別は、破産が39件(前年同月比30.0%増)で、2年ぶりに前年同月を上回った。構成比は97.5%(前年同月90.9%)で、6.6ポイント上昇した。
負債1,000万円未満は、小・零細企業がほとんど。そうした企業では、資金的な余力が乏しいだけでなく、人的リソースの確保もできず、経営再建や事業再生のために取り組むことが難しい。そのため、業績回復が見込めず事業継続が困難となった場合、債務整理のために破産を選択するケースが多い。

【原因別】販売不振が半数以上

原因別は、最多が「販売不振」の22件(前年同月比21.4%減)で、2年連続で前年同月を下回った。構成比は55.0%(前年同月84.8%)だった。また、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は、前年同月と同件数の1件だった。
「不況型倒産」(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は23件(前年同月比20.6%減)で、2年連続で前年同月を下回った。構成比は57.5%(前年同月87.8%)で、4月では2010年以降の15年間では2016年(53.8%)に次いで2番目の低さとなった。
このほか、「事業上の失敗」6件(前年同月ゼロ)と「他社倒産の余波」5件(前年同月比400.0%増)で4年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
小・零細企業は、一度、業績不振に陥ると、その状況から抜け出すことが難しい。さらに、資金繰りにも余裕がなく、経営再建や事業転換に取り組むことができず、倒産に至るケースが少なくない。

【資本金別】1千万円未満が9割

資本金別は、1千万円未満が37件(前年同月比23.3%増)で、2年ぶりに前年同月を上回った。構成比は92.5%(前年同月90.9%)で、1.6ポイント上昇した。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が16件(前年同月比14.2%増)、「個人企業他」が14件(同27.2%増)、「1百万円未満」が5件(同66.6%増)、「5百万円以上1千万円未満」が2件(±0.0%)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」は前年同月と同件数の3件。また、「5千万円以上1億円未満」が2018年以降、「1億円以上」が2012年以降、それぞれ4月では発生がない。

© 株式会社東京商工リサーチ