増える「通信制高校」卒業資格取得サポート校も

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多様な生徒の受け皿として通信制高校の新設が相次いでいる。また、通信制高校に通う生徒を支援するためのサポート校も同様に増えている。別途費用がかかるが、3年間で卒業できるよう支援する学びの場だ。通信制高校とサポート校の違いなどをまとめた。

文部科学省によると、高等学校通信制課程は全日制課程や定時制課程とは異なり、通信手段を主体とし、生徒が自宅などで個別に自学自習することとして、添削指導・面接指導・試験の方法により教育を実施している。通信制高校は一定時間の対面によるスクーリングが義務づけられていて、インターネットやテレビを使った授業やリポート指導を活用している学校もあり、単位を修得すれば全日制や定時制高校と同じように高校卒業資格を取れる。

文部科学省が2023年11月に公表した「これからの通信制高等学校の在り方について」によると、近年、不登校児童生徒数は義務教育段階を中心に大幅に増加し、2021年度(令和3年度)時点、小中高で合わせて約30万人と過去最多になった。高等学校では通信制に在籍する生徒数も近年大幅に増加しており、通信制が多様な背景を有する生徒の受け皿になっている状況だ。2023年度(令和5年度)の速報値では、通信制課程の公立高校は78校、私立高校は210校の計288校となり、生徒数は約26万5,000人と過去最多となっている。公私別でみると、私立通信制の生徒数が大きく増加し、2000年(平成12年)からの約20年間で、私立の生徒数は約3倍に増加している。

通信制高校

KADOKAWA・ドワンゴが創るネットと通信制高校の制度を活用した「N高等学校」「S高等学校」の生徒数は、両校合わせて2万7,712人(2023年12月末時点)と通信制私立高校の1割以上を占める。高校卒業資格取得のためにさまざまなサポート体制を設けているのが特徴だ。ネットの高校では、ネットコース・通学コース・オンライン通学コース・通学プログラミングコースの4つのコースがあり、ライフスタイルや目的に合わせて、コースやキャンパスの登校日数が選択できる。オンライン通学コースでは、ネットで仲間と集いグループワークを実施。学習の不明点は月~金曜日の時間内にメンターやTA(Teaching Assistant)がいる「ネット学習室」で質問でき、ネットコースの生徒も、メンターとICTツールで連絡が取れるだけでなく、三者面談などもあるという。専門のカウンセラーが生徒の心身の健康や、ライフイベントと学習を両立させるなどの支援を行っている。また、「クラーク記念国際高等学校」は、仲間と共に学ぶ週5日通学を基本に、学びの多様性に対応した通学・学習スタイルを設定。自分のライフスタイルの変化に合わせて、通学スタイルの変更も可能となっている。全国にキャンパスを設置するほか、スポーツ、eスポーツ、国際教育、宇宙教育などにも力を入れている。

サポート校で卒業支援

年々生徒数が増えている通信制高校だが、課題があるのも実情だ。学習の基本は、「自学自習」のため、自身で学習計画を立て、日々の勉強やレポートに取り組む必要がある。そのため、卒業に何年もかかったり、卒業自体を諦めてしまったりすることも少なくない。そこで、通信制高校に在籍する生徒が高校を卒業できるよう学習を支援するのがサポート校だ。3年間で卒業ができるよう単位取得・進級などに必要とされる勉強や精神面での支援を行う。サポート校は学校教育法では「高校」と定められていないため、高校卒業の資格を得ることはできない。あくまでも卒業をサポートする場となる。サポート校を利用する場合、通信制高校の学費にプラスしてサポート校の費用が必要となる。サポート校は、通信制高校を運営する学校法人が設置しているほか、塾や予備校を運営する民間法人が運営している。

サポート校

「家庭教師のトライ」から生まれた通信制サポート校「トライ式高等学院」。全国に123か所キャンパスを設置しており、キャンパスに通って仲間と学校生活を送る「キャンパス通学型」、自宅で授業を受ける「自宅型」から学習スタイルを選択することもできる。参加自由な部活動や体育祭、ハワイ留学のほか、生徒同士が交流する機会となるイベントを実施している。連携通信制高校は、鹿島学園高等学校、日本航空高等学校、高松中央高等学校、ルネサンス高等学校、鹿島朝日高等学校。

また、学研ホールディングスは2024年4月、グループ会社である創造学園が、通信制高校や大学を運営する創志学園と連携し、兵庫県の神戸市北区、明石市、加古川市に通信制サポート校「Gakken高等学院」を開校した。

学費やサポート内容確認を

公立の通信制高校の場合は1単位あたりの学費が決まっており、基本的には自分で単位を取得するための学習計画を立てて卒業を目指す。私立の通信制高校の場合は、1単位ごとの学費と、それに加えて通信制高校独自のサポート費用がかかる場合がある。サポート校については、連携校の単位取得にかかる学費(1単位あたり)と、サポート校のサポート費用がかかる。サポート校によっては、サポート校の学費の中に通信制高校の学費が含まれる場合もある。トライ式高等学院は、通信制高校の学費が学校により異なるため、予算やサポートしてもらいたい内容に適した学校選びが必要になり、入学前にしっかり確認したうえで進路を決めるようアドバイスしている。

文部科学省は、通信制課程に望ましい在り方として、多様な課題を抱える生徒が多く在籍していることを踏まえれば、生徒を自立した学習者として社会に送り出すために、必要な支援体制を整えていくとともに、少ない登校回数で、生徒が人間関係を築きながら、自分のよさや可能性を認識し、多様な人々と協働する機会を充実させていくことが重要としている。

田中志実

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