アップル、iPadの広告で謝罪 ピアノや本など押しつぶす映像に批判噴出

米アップルがiPadの広告に、楽器や本などがプレス機で押しつぶされる映像を使ったところ、批判の声が沸き起こった。これを受け、同社は9日、謝罪した。

問題となった映像は、最新のiPadにいかに創造性が凝縮されているかを示すのが狙いだったとされる。

しかし、英俳優ヒュー・グラント氏、米俳優ジャスティン・ベイトマン氏など有名人から、広告での破壊行為を嫌悪する反応が相次いだ。

アップルは、マーケティング誌「アド・エイジ」に声明を発表。今回の広告はクリエイターらを力づけ、たたえることを意図したが、その目的を果たさなかったとした。

同社のマーケティング・コミュニケーション担当のトア・ミレン副社長は、「私たちの目標は、iPadを通じてユーザーが自らを表現し、アイデアを実現する無数の方法をたたえることだ。このビデオは的外れで、申し訳なく思っている」と声明でわびた。

最新のiPadをめぐっては、同社のティム・クック社長がX(旧ツイッター)に、「これが創造するために使われるあらゆるものを想像してほしい」と

。これに対しては、

といった批判が出ている。

さまざまな批判

今回の広告は、テレビを見る、音楽を聴く、ゲームをするなど、最新のiPadでできることを示そうとしたものだった。同時に、非常に薄型であることも強調している。

楽器がプレス機で押しつぶされるという

は、別のものが10年近く前から出回っている。今回の広告はそのテーマを取り入れた。

ただアップルは、自らの評判まで押しつぶしてしまった。今回の広告に対しては、テクノロジーが創造性を促進するより阻害していることを示している、との批判が噴き出している。

俳優のグラント氏は、「人類の経験の破壊。シリコンヴァレーより」と

。映画業界における人工知能(AI)の使用を強く批判しているベイトマン氏は、「芸術を押しつぶしている」と

英ソングライターのクリスピン・ハント氏は、楽器を破壊する行為は本を燃やす焚書(ふんしょ)を連想させるとした。

クック氏のXへの投稿には、

など、特に否定的なコメントが寄せられている。

批判的な意見は日本からのものが目立っており、「敬意に欠ける」との

もあった。日本の民話では道具には「付喪神(つくもがみ)」が宿るとされるており、それが背景にあるとの

もある。

「道具を壊すという行為は、私たち日本人にとっては傲慢(ごうまん)であり不快だ」と

する人や、ミュージシャンらは「命よりも」楽器を大切にしているとコメントする人もいた。

今回の映像については、アップルの1984年の最も有名な広告と比較して論じる人もいる。ジョージ・オーウェルの小説「1984」を意識したその広告では、ディストピア的な未来に反撃するアスリートが描かれている。

は、今回の広告は1984年のものとは「ほぼまったく正反対」だと指摘。別の

は、アップルが「1984年に反旗を翻した、顔のない文化破壊勢力になってしまった」ことを、今回の広告は示しているとした。

(英語記事 Apple apologises after piano crushing ad backlash

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