「企業の田んぼ」初の田植え 世界遺産大斎原そばで3団体、和歌山・田辺市

大鳥居前に広がる田んぼで田植えをする関係者(5日、和歌山県田辺市本宮町で)

 和歌山県田辺市本宮町の世界遺産、熊野本宮大社の旧社地・大斎原(おおゆのはら)周辺に広がる田んぼで5日、米作りの取り組みに参画した三つの企業・団体による初の田植えがあった。耕作者の高齢化に伴い、田んぼの維持が課題となる中で始まったプロジェクト。参加者は「この景観を守りたい」と意気込んでいた。

 大鳥居がそびえる大斎原の周辺には約3万5千平方メートルの田んぼが広がり、熊野本宮を代表する風景として親しまれている。

 現在は7組が米作りに取り組んでいる。そのうちの一組で「山里舎(やまざとしゃ)」として活動している金哲弘さん(44)=本宮町伏拝=が昨年度から、個人や企業・団体に参加を募る「大斎原の景観を守るプロジェクト」をスタートさせた。その一環の「企業の田んぼ」では、企業が面積に応じて費用を支払えば折々に農作業を体験でき、収穫した米も全てもらえる。普段の管理は山里舎が行う。

 企業・団体が米作りに参画するのは本年度が初めて。大阪市で「モスバーガー十三店」を経営するライフカンパニーと、田辺市中辺路町で新しい小中学校の開校を目指している「うつほの杜学園設立準備会」、紀南で観光推進などに取り組む「ヤタガラスプロジェクツ」が、計1700平方メートルの田んぼで取り組む。

 5日の田植えには関係者約50人が参加。本宮大社も協力しておはらいをするなどした上で田んぼの中に入り、手作業で苗を植えた。ライフカンパニーの稲葉幸彦代表取締役(66)は「熊野本宮が大好きで、月に1回はお参りに来ている。世界遺産の景観を守りたいという思いで参加した」と笑顔を見せた。

 田植えにも参加した本宮大社の九鬼家隆宮司(67)は「訪れた方から、大鳥居の前に水田が広がるこの風景を見るとふるさとに帰ってきたようでほっとすると言われており、田んぼはなくてはならない存在。今年の世界遺産登録20周年を機に、この取り組みが景観を守っていく一端を担ってくれれば」と期待を込めた。

 金さんは「参画してくれてすごく励みになるし、うれしい。皆さんと力を合わせて続けていければ。プロジェクトをしっかりとした形にして、田んぼを託してくれやすいようしていきたい」と話した。

 収穫作業は8月下旬を見込んでいる。

 山里舎では個人参加やサポーターも募集中。問い合わせは金さん(090.9691.9548)へ。

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