かつての愛車マツダ・サバンナをリメイクし“マッド・マイク”が10年ぶりにD1GPへカムバック

10年ぶりにD1GP復帰のマッド・マイク。かつての愛車を再入手&魔改造を施しドリフト競技の頂点に挑む

 2024年のD1GP開幕戦、奥伊吹ラウンド。そのパドックにはおよそ国内最高峰のドリフトコンペティションには似合わない、ワゴンボディの青い車両が異彩を放っていた。

 それが、1971年に発売されたロータリー車のマツダ・サバンナ(輸出名:RX3)だ。クーペとセダンのラインアップに加えて翌年に登場したワゴンタイプを使用し、エンジンは10Aや12AではなくNA4ローターの“26B”と呼ぶべきモンスターエンジンを載せて生まれ変わっていた。

■ドリフト選手として世界各地のトップカテゴリーで活躍

 長年レッドブルがサポートするドリフト選手、“マッド・マイク”ことマイケル・ウィディット。彼にとってドリフトとは「ほかと違うクルマで観客を魅了するチャレンジ」である。

 ドリフト競技を始める前はモトクロスやFMXなど、エクストリームスポーツで活躍していたマイケルは、それらと同様に乗り物を使った自己表現の手段として10代の頃にドリフトを始めている。

「ほかの誰とも違う事をしたり、難しいとされる事に挑戦するのが大好きなんだ」と語る彼が、一般的にドリフト向きとされる日本製のFRスポーツカーではなく、ロータリー車の中でも古いRX3……。それもワゴンボディを選んだのは、ドリフトというパフォーマンスにおけるチャレンジのためだったことは言うまでもない。

 この愛車でドリフトを学んだマイケルは、さらなる挑戦として競技ドリフトの大会に参戦するため、そしてより戦闘力の高いRX-7(FD3S)を入手するための資金作りとして惜しみつつもRX3を手放している。

 その後はレッドブル・ワールドドリフト選手権や2007年のアメリカのフォーミュラ・ドリフトでも活躍し、2013年にはD1GPにも参戦。ここ数年の日本でのドリフト活動はフォーミュラ・ドリフト・ジャパン(FDJ)を主戦場として、2018年はシリーズチャンピオンに輝き世界的知名度を獲得しているのだ。

ルーフににはティーンエイジャーの頃、地元のバーンナウト大会(オーストラリアやニュージーランドでは人気のパフォーマンス競技)で優勝したときの写真が

■D1GP復帰のために20年前の愛車をリメイク

 そんな彼が今年D1GPにカムバックを果たした。その理由のひとつは「新しいチャレンジがしたかったから」。

 背景にはかつての愛車RX3(その個体そのもの)を再入手する幸運があった。売り払った当時の数倍の費用がかかったものの、ドリフトで成功した自分にとって原点と呼べるこのクルマと共に戦う事が現在のモチベーションになったのだ。

 だが、RX3のリヤサスペンションは板バネ(リーフスプリング)のホーシング式であり、おおよそドリフト競技のベース車両としては不向きな形式な事は若い頃から痛感していた。そのため、車両の改造規定がFDJより緩やかなD1GPを選んだのだ。

 前後サスペンション形式は大きく変更され、現在のドリフト競技車両には定番のシーケンシャルドグミッションやクイックチェンジデフなども搭載。さらにエンジンはノーマル(前期型:10A/後期型:12A)とは大きく異なる13B×2の26B相当の4ローターであり、NAながら約500馬力を発揮する。

「マシンが完成した当初は、重ステのままでもAE86(トヨタ・スプリンタートレノ/カローラレビン)のように乗れるだろう……。そう軽く考えていたけれど、パワーや足回り、タイヤ性能も昔とは大きく違っていた。だからシェイクダウンの1回だけでこれは難しいぞって思った」と、車両製作を担当したトータルカープロデュースマジックの川戸氏によりパワステポンプを追加された。

 開幕戦となるD1GP奥伊吹ラウンド木曜日の練習走行は実質2度目の走行であり、その翌々日はD1GP本番が差し迫っている状況なのだ。

あえてターボ化せずNAを選択した理由を問うと「NAロータリーのサウンドが大好きだから!」と即答
製作担当のTCPマジック川戸氏がラジエターの冷却効率を上げるために純正グリルの肉抜きを提案。「貴重な純正グリルなのに……」とマイケルは渋々承諾したという
外装はD1参戦に向けて開発されたロケットバニーのフルエアロを纏う。だが過激なリヤウイングは車両規定に抵触したため、練習日に規定値内に収めるように激しい角度に改修された

■初心に戻りつつ攻めの姿勢を貫く練習日

 しかし、さすが世界のトップドリフターの一角であるマッド・マイク。すぐに暴れ馬を手なづけ、本番さながらの攻めた走りで壁際に迫るアウトラインをしっかりトレースしていく。

 走行前には「この仕様で走るのは初めてだけど、20年前に散々ドリフトを練習したクルマなんだから今日も大丈夫なんじゃないかな!?」とジョークを飛ばしていた余裕通りに、本番に向けて手応えを掴んだ練習走行となっただろう。

 D1奥伊吹ラウンドは5月11日(土)に第1戦、5月12日(日)に第2戦のダブル開催となる。復帰戦で、マッド・マイクはどんな走りを披露してくれるのだろうか?

 入場券・指定席券は完売となっている奥伊吹でのD1GP開幕戦。D1公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/user/d1gpwebsite/videos)では、ライブ配信が行われる予定だ。

開幕戦へ向け練習走行を行う”マッド・マイク”

投稿 かつての愛車マツダ・サバンナをリメイクし“マッド・マイク”が10年ぶりにD1GPへカムバックautosport web に最初に表示されました。

© 株式会社三栄